ご相談の内容
会社に籍を置いたまま、本人だけが海外に出張している社員がいる、という会社の経理担当の方からのご相談です。給与はこれまでどおり国内の口座に振り込んでおり、社員は配偶者や子どもを扶養しています。この社員の年末調整は日本にいた時と同じでよいのか、源泉徴収票はどう渡すのか、本人は何をすればよいのか、住民税はどこに納めるのかを知りたい、という内容でした。
- 当初から1年未満の予定の出張なら、社員は居住者のままで、年末調整は日本にいた時と同じ
- 申告書類は電子データや郵送で受け取り、源泉徴収票は郵送または本人の承諾を得て電子交付できる
- 住民票と生活の本拠が日本にあれば、住民税は住民票のある市区町村で課税され、給与天引きも継続
回答
まず「1年未満の予定か」を確認する
居住者(日本に住所がある人)か非居住者かは、所得税法施行令第15条と所得税基本通達3-3により、国外での勤務が1年以上と見込まれるかどうかで判定します。辞令上の予定期間を確認しましょう。
| 当初の予定 | 区分 | 年末調整 |
|---|---|---|
| 1年未満の出張 | 居住者のまま | 日本にいた時と同じように行う |
| 1年以上の海外勤務 | 出国の翌日から非居住者 | 出国時に行う(所得税基本通達190-1)。出国後の給与は扱いが大きく変わる |
1年未満の出張であれば、配偶者に関する控除も従来どおり適用できます。
年末調整の進め方
- 申告書類:扶養控除等申告書や保険料控除申告書などは、本人から電子データまたは郵送で提出を受ければ足ります。
- 年少の子ども:扶養控除の対象にならない年齢の子どもも、住民税の計算に使うため、申告書への記載が必要です。
- 源泉徴収票:海外の滞在先や日本の家族宛てに郵送する方法があります。本人の承諾があれば、電子交付も可能です(所得税法第226条第4項)。
社員本人がすること
本人に必要な対応は、主に申告書類の提出です。あわせて、出張先の国で課税される可能性がないかを確認しておくとよいでしょう。
- 租税条約の短期滞在者免税(一般に滞在183日以下などが要件)に当たれば、現地では課税されません。
- 現地で課税された場合は、日本で確定申告をすれば、外国税額控除(二重課税を調整する仕組み)を受けられることがあります(所得税法第95条)。
住民税の課税地
住民税は、1月1日(賦課期日)時点の住所地の市区町村が課税します(地方税法第39条、第318条)。出張で住民票が日本にあり、生活の本拠も日本であれば、住民票のある市区町村で課税され、特別徴収(給与天引き)も従来どおり続きます。
注意したいポイント
- 判定の基準は、出張という呼び方ではなく国外で勤務する予定の期間です。「出張」と呼んでいても、当初から1年以上の予定であれば扱いが変わるため、辞令の内容を確認してください。
- 1年以上の海外勤務で転出し、1月1日に国内に住所がない場合は、その翌年度の住民税は課税されません。
- 短期滞在者免税は「183日以下」だけが要件ではありません。滞在先の国との租税条約の内容を確認しましょう。
海外に赴任した場合の家族の扶養控除は、夫が海外赴任中の年末調整、扶養控除申告書の家族欄は空欄で大丈夫?で解説しています。非居住者になるときの全体像は、海外移住と税金|非居住者になる前に確認すべき所得税・出国税・不動産所得・相続税をご覧ください。
まとめ
- 当初から1年未満の予定の出張なら居住者のままで、年末調整は国内にいた時と同じ
- 書類は電子データや郵送でやり取りでき、本人の主な対応は申告書類の提出と現地課税の確認
- 住民票と生活の本拠が日本にあれば、住民税と給与天引きも従来どおり
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
