ご相談の内容
法人を設立した方からの、開業費の処理についてのご相談です。開業費は全額を費用にできると聞いたものの、繰延資産に当たるのか、減価償却のように全額を償却する形になるのか、別表にも載せる必要があるのかが分からない、という内容でした。
- 法人の開業費は税務上の繰延資産に当たる
- ただし任意償却が認められ、支出した事業年度に全額を損金にできる(損金経理が前提)
- 償却額の明細は別表十六(六)に記載する
回答
開業費は繰延資産に当たる
繰延資産とは、支出の効果が将来に及ぶため、資産として繰り延べる費用のことです。開業費は、法人税法施行令第14条第1項第2号で「法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」として繰延資産に定められています。開業前の広告宣伝費や市場調査費などが該当します。
任意償却で、償却する時期と金額を選べる
償却限度額は、法人税法施行令第64条第1項第1号により、開業費の帳簿価額(まだ償却していない残高)とされています。これが任意償却(償却額を自由に決められる仕組み)です。開業費が100万円の場合を例にすると、次のような処理ができます。
| 処理の方法 | 初年度の償却額 | 翌期へ繰り越す残高 |
|---|---|---|
| 初年度に全額を償却する | 100万円 | 0円 |
| 一部だけ償却する | 30万円 | 70万円 |
| 初年度は償却しない | 0円 | 100万円 |
一部だけ償却した場合の残りは、翌期以降の好きな年度に償却できます。利益が出ていない年度は償却せず、利益が出た年度にまとめて償却することも可能です。
なお、繰延資産の場合は「減価償却」ではなく「償却」と呼びますが、費用化する仕組みは似ています。
別表十六(六)への記載が必要
繰延資産の償却額を損金とする場合、法人税法施行令第67条により、償却額の計算に関する明細書の添付が求められています。記載するのは別表十六(六)「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」です。
支出時に資産計上せず全額を費用として処理した場合も、償却費として損金経理したものとして扱われ、明細書への記載が必要とされています(法人税基本通達8-3-2)。
創立費との違い
法人の設立前に支出した設立費用は創立費となり、開業費とは区分されますが、同じく任意償却の対象です。
| 区分 | 支出の内容 | 税務上の償却 |
|---|---|---|
| 開業費 | 設立後、事業を開始するまでの開業準備の費用 | 任意償却 |
| 創立費 | 法人の設立前に支出した設立費用 | 任意償却 |
注意したいポイント
- どの処理でも、決算で償却費として費用計上(損金経理)していることが前提です。
- 創立費について、会計上は支出時に費用処理するのが原則で、資産計上した場合は5年以内に償却する扱いとされています(企業会計基準委員会 実務対応報告第19号)。税務上の任意償却とあわせて確認しましょう。
- 開業前に役員が個人で立て替えた費用も、法人の開業費として計上できます。領収書などの証拠書類を保管しておきましょう。
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スタートアップ・ベンチャー支援を見るまとめ
- 法人の開業費は繰延資産だが、任意償却により支出した事業年度に全額を損金にできる
- 一部だけ償却し、残りを翌期以降に償却することもできる。いずれも損金経理が前提
- 全額を費用処理した場合も別表十六(六)への記載が必要
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
