ご相談の内容
事業年度が始まった2か月目の支払分から、役員報酬の金額を変更してもよいか、というご相談です。たとえば9月に事業年度が始まる会社が、9月支払分は従来の金額のまま、10月支払分から新しい金額にしても問題ないのかを知りたい、という内容でした。
- 事業年度開始から3か月以内に改定を決議し、変更後は期末まで毎月同じ金額なら、2か月目の支払分からの変更で問題ない
- 改定前の支払分と改定後の支払分は、いずれも定期同額給与として損金に算入できる
- 決議は変更後の最初の支払日より前に行い、議事録を残す
回答
改定の前後でそれぞれ同額ならよい
定期同額給与(毎月一定額を支給する役員報酬)は、法人税法第34条第1項第1号により損金算入が認められます。法人税法施行令第69条第1項第1号イでは、事業年度開始の日から3か月を経過する日まで(9月開始であれば11月末まで)に行われた改定(通常改定)について、次の扱いを定めています。
- 改定前の各支給時期の支給額が同額であること
- 改定後の各支給時期の支給額が同額であること
この2つを満たせば、事業年度の途中で金額が変わっていても定期同額給与に当たります(国税庁タックスアンサーNo.5211参照)。
例で確認
9月に事業年度が始まり、8月が期末の会社で、月額50万円を60万円に増額する場合です。
| 支払月 | 支給額 | 判定 |
|---|---|---|
| 9月 | 50万円(改定前) | 定期同額給与 |
| 10月〜翌年8月 | 60万円(改定後、毎月同額) | 定期同額給与 |
10月の支払日より前に決議していれば、「9月分が旧金額、10月分以降が新金額」という形になり、この取扱いに当てはまります。
「10月支払分は9月分の後払い」でも判定は同じ
10月支払分が「9月分の報酬の後払い」なのか「10月分の報酬」なのかによって、判定は変わりません。あくまで支給日の時点で同額かどうかで判断します。
注意したいポイント
- 決議は支払日より前に。 改定の決議(株主総会決議など)は、10月の支払日より前に行い、議事録を残しておくことをお勧めします。判定は支給時期で行うため、10月支払分は改定後の金額で支給されている必要があります。
- さかのぼりの差額は損金不算入。 決議が10月の支払日より後になり、さかのぼって増額した差額をまとめて支払う場合、その差額部分は定期同額給与に当たらず、損金不算入となる取扱いが国税庁「役員給与に関するQ&A」で示されています。上の例なら、10月に50万円を支払った後で決議し、差額の10万円をまとめて支払うようなケースです。
- 3か月を過ぎた決議は通常改定に当たらない。 9月開始の会社で決議が12月以降になると、通常改定に当たりません。業績悪化改定事由(経営状況の著しい悪化による減額)などに該当しない限り、増額部分などが損金不算入となるおそれがあります。
- 申告期限の延長の特例を受けている場合。 定時株主総会が3か月を過ぎた時期に開かれるときは、継続して毎年その時期に行う改定であれば、通常改定と認められる取扱いがあります。
役員報酬の金額そのものの決め方は、役員報酬の決め方|法人税・所得税・社会保険料のバランスと、融資への影響で解説しています。賞与を支給する場合の手続きは、事前確定届出給与の職務執行開始日と届出期限は?株主総会前に決議した場合をご覧ください。
まとめ
- 事業年度開始から3か月以内の決議で、改定の前後がそれぞれ同額なら、2か月目の支払分からの変更で問題ない
- 決議は変更後の最初の支払日より前に行い、議事録を残す。さかのぼりの差額は損金不算入
- 判定はあくまで支給日の時点で行い、3か月を過ぎた決議は通常改定に当たらない
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
