ご相談の内容
法人で所有している土地建物の売却を検討している方からのご相談です。決算月に買主が見つかった場合、売却の仕訳を翌期の期首月に計上するには、引渡し日を期首月にすればよいのか。そもそも、どのタイミングで仕訳を立てればよいのかを知りたいという内容でした。
- 土地建物の売却は、原則として「引渡しの日」の期に計上する。契約日の期に計上することも認められる
- 引渡しを翌期首に行うなら、引渡し基準では翌期首に計上し、決算月の手付金は前受金にする
- 引渡し日は実態で判断される。翌期首に計上したいなら、残代金の決済や登記申請も翌期首に合わせる
回答
原則は「引渡しの日」
資産の販売や譲渡の収益は、原則として目的物の引渡しの日の属する事業年度に計上します(法人税法第22条の2第1項)。固定資産の譲渡についても、法人税基本通達2-1-14で引渡しの日が原則とされています。
ただし、土地・建物などは、契約の効力発生日(通常は売買契約の締結日)の属する事業年度に計上することも認められています。
採る基準による違い
| 基準 | 決算月に契約・翌期首に引渡しの場合 |
|---|---|
| 引渡し基準 | 決算月の手付金は前受金(代金の先払い分)として処理し、売却は翌期の引渡し日に計上 |
| 契約効力発生日基準 | 決算月の契約日の期に売却を計上 |
「引渡しの日」は実態で決まる
引渡しの日は、契約書などの書類上の日付で決まるものではなく、実態で判断されます。鍵の受渡し、残代金の決済、所有権移転登記の時期などを総合的に見ます。
引渡し日が明らかでない場合は、次のいずれか早い日を引渡し日とすることができます(法人税基本通達2-1-2)。
- 代金のおおむね50%以上を受け取った日
- 所有権移転登記の申請をした日
そのため、期首月に計上したいのであれば、残代金の決済や登記申請も期首月に合わせることが重要です。決算月に代金の大半を受け取ると、引渡しが決算月にあったと判断される可能性があります。
期首月の仕訳
期首月の仕訳では、売却代金を受け取る側の勘定と、土地・建物の帳簿価額との差額を固定資産売却益(または売却損)として計上します。建物の減価償却費は、期首から売却日までの期間分を月割で計上するのが一般的です。
消費税の計上時期
消費税についても、土地建物の譲渡は引渡し日または契約効力発生日のいずれかで認識できるとされています(消費税法基本通達9-1-13)。土地部分は非課税、建物部分は課税となります。
注意したいポイント
- どちらの基準を採る場合も、利益の状況に合わせて恣意的に使い分けないことが大切です。契約内容と実態に沿って処理しましょう。
- 「引渡し日だけ翌期にずらす」という形式的な調整では、代金の受領や登記の時期から決算月の譲渡と判断されることがあります。
- 建物部分の消費税は課税売上になるため、土地と建物の代金の区分もあわせて確認しておきましょう。
売却のタイミングと決算期の関係は物件の売却タイミングと決算期、建物部分の消費税は建物を売ったときの消費税で詳しく解説しています。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見るまとめ
- 法人の土地建物の売却は、原則引渡し日の期に計上し、契約日の期に計上することも認められる
- 引渡し日は書類ではなく、残代金の決済・登記申請・鍵の受渡しなどの実態で判断される
- 期首月に計上したいなら決済と登記も期首月に合わせ、基準を恣意的に使い分けない
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
