ご相談の内容
会社員として働きながら、SNSを使ったアフィリエイトや動画制作をしている方からのご相談です。前年に有料のSNS運用講座を受けて発信を始め、アフィリエイトの報酬はわずか数百円でした。その後9か月近く活動を休み、今年の夏に再開準備を始めて、投稿やアフィリエイト、企業からの案件に取り組んでいます。開業届を出すにあたり、開業日を本格的に再開した今年とすることは妥当か、前年の講座代などを開業費にできるかを知りたいという内容でした。
- 前年が試行段階で、その後長く休止していた経緯からすれば、本格的に再開した時期を開業日とするのは合理的
- 再開準備のための講座代やツール代は開業費にしやすいが、試行期間(前年)の講座代や月額利用料は対象外と判断される可能性が高い
- 青色申告は申請期限に注意。開業費は任意償却で、翌年以降に経費化することもできる
回答
開業日は「継続的に営み始めた時期」で判断
開業日について、法令上の明確な定めはありません。事業として継続的・反復的に営み始めた時期で判断します。
前年の報酬はごくわずかで、その後9か月近く活動を休止していました。この場合、前年の報酬は雑所得(事業に至らない副収入)とし、本格的に再開した今年の時期を開業日とすることは十分に説明がつきます。
なお、前年は給与以外の所得が20万円以下のため所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途必要です。
開業費になるもの・ならないもの
開業費とは、「事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」をいいます(所得税法施行令第7条第1項第2号、所得税基本通達2-7)。判断の基準は、その支出が開業後の事業のためのものかどうかです。
| 支出 | 扱い |
|---|---|
| 再開準備期間の講座代・ツール利用料 | 開業費に該当しやすい |
| 試行期間(前年)の講座代・月額利用料 | 前年の雑所得の必要経費と見られやすい |
| 開業後も使い続ける撮影用品・ツール | 開業費ではなく、資産または消耗品 |
前年の講座代や月額利用料は、収入のあった前年の活動のための費用と見られやすく、その場合は前年分の雑所得の必要経費として扱います。ただし、前年の講座が前年の活動とは区別でき、開業後の事業のための知識習得だったと説明できるのであれば、開業費とする余地もあります。
撮影用品やツールのうち開業後も使い続けるものは、事業に使い始めた時点で資産または消耗品として扱います。10万円以上のものは減価償却(数年に分けて経費化)します。私的に使う分がある場合は、按分が必要です。
青色申告と開業費の償却
青色申告承認申請書の提出期限は、適用を受けたい年の3月15日までです(所得税法第144条)。翌年分から青色申告にする場合は、翌年3月15日が期限です。
開業費は任意償却(所得税法施行令第137条第3項)で、償却する年と金額を自由に選べます。開業した年(白色申告)には償却せず、青色申告に切り替えた翌年以降に償却することも可能です。
注意したいポイント
- その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内に申請すれば、開業した年から青色申告を受けられます(所得税法第144条)。この期限を過ぎていれば、翌年3月15日までの申請で翌年分からの適用になります。
- 開業費とする支出は、領収書や講座の内容が分かる資料を残し、開業後の事業との関係を説明できるようにしておきましょう。
- 試行期間の費用を前年の雑所得の経費とする場合は、前年分の住民税の申告に反映させます。
開業届や青色申告など、副業を事業として始めるときの手続きは、作家デビューが決まったら、税金は何から始める?でも解説しています。副業の所得が増えてきたときの判断は個人事業主の法人化のタイミングと目安もご覧ください。
まとめ
- 開業日は継続的に営み始めた時期で判断。試行と休止の後なら、本格再開の時期とするのは合理的
- 再開準備の費用は開業費にしやすく、試行期間の費用はその年の雑所得の経費と見られやすい
- 青色申告の申請期限を確認し、開業費は任意償却で翌年以降に経費化することもできる
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
