ご相談の内容
会社員として給与を受け取りながら国内FX取引を行い、その年の確定利益が100万円ほど出ている方からのご相談です。年の途中で10万円未満(税込)のスマートフォンを新品で買い、年末まではFX専用端末として使い、翌年からはFX取引と私用で兼用する予定とのこと。購入費用をその年の必要経費に全額計上できるか、翌年からの私用が影響するか、FX専用であることをどう示せばよいか、を知りたいという内容でした。
- その年に実際にFX専用として使い始めたなら、10万円未満のスマホは全額をその年の必要経費にできると考えられる
- ただし翌年からの私用兼用が購入時点で決まっているため、家事兼用と見られる余地がある。使用割合分だけ経費にするほうが保守的
- 証明方法は法令で決まっていない。領収書やスクリーンショットなどの記録を残す
回答
国内FXの利益と必要経費
国内FXの利益は、申告分離課税(他の所得と分けて税額を計算する方式)の「先物取引に係る雑所得等」になります(租税特別措置法第41条の14、国税庁タックスアンサーNo.1521)。取引に必要な支出は必要経費として差し引けます(所得税法第37条)。
10万円未満のスマホは全額をその年の経費にできる
スマートフォンは本来、数年かけて経費にする減価償却資産です。ただし、取得価額が10万円未満のものは少額減価償却資産として、業務に使い始めた年に全額を必要経費にできます(所得税法施行令第138条)。
10万円未満かどうかの判定は、消費税の課税事業者でない個人であれば税込金額で行います。
翌年から私用と兼用する場合
| 論点 | 考え方 |
|---|---|
| 私用を始めたときの調整 | 過去の経費計上を取り消すような調整規定は、通常ない |
| 翌年以降の端末代 | 経費化済みのため、追加で経費にはできない |
| 当初から兼用と見られる場合 | 業務使用割合分のみを経費にするのが保守的な処理 |
家事関連費(仕事と私生活の両方に関わる支出)は、業務に必要な部分が明らかな場合に限って経費になります(所得税法第45条第1項第1号、所得税法施行令第96条)。購入時点で翌年からの兼用が決まっていて、使用期間の大半が兼用になるという実態を重く見ると、当初から兼用資産として業務使用割合分だけを経費にするほうが保守的です。この点は判断が分かれ得ます。
通信料の扱い
新たに回線を契約する場合、FX専用で使う年の通信料は全額、兼用を始めた年以降は使用割合で按分(割合に応じて分けること)するのが目安です。
FX専用であることの示し方
法令上決まった証明方法はなく、事実関係を総合的に見て判断されます。次のような記録を保存しておくとよいでしょう。
- 購入時の領収書
- 回線を別に契約する場合は、その契約書
- FX関連以外のアプリを入れていないことがわかる画面のスクリーンショット
- FX会社のログイン履歴(端末情報が表示される場合)
注意したいポイント
- 全額を経費にできるのは、その年に実際に業務で使い始めた場合です。買っただけで使い始めていなければ、その年の経費にはなりません。
- 兼用を始めた後は、業務使用割合の根拠となる記録(利用時間の目安など)も残しておきましょう。
- 「先物取引に係る雑所得等」は申告分離課税のため、損失が出ても給与など他の所得とは相殺できません。
少額の資産をいつ経費にするかは、少額減価償却資産・一括償却資産の解説、仕事と私用の按分は自宅兼事務所の家事按分でも整理しています。
まとめ
- FX専用で使い始めた10万円未満のスマホは、使い始めた年に全額を必要経費にできると考えられる
- 翌年からの兼用が決まっているなら、当初から使用割合分のみ経費にするほうが保守的
- 領収書・スクリーンショット・ログイン履歴などで、FX専用で使っていた事実を記録しておく
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
