中古車は、新車に比べて手の届きやすい価格で買え、地域の足を支える大切な商品です。店頭やネットで買う人は多く、店舗数の多さもあって競争は厳しい業界です。ここ数年は仕入価格の高騰と在庫の確保の難しさが重なり、規模の小さな販売店の経営に影響が出ています。
中古車販売業の経営は、1台ごとの粗利を、どれだけ速く回すかで決まります。この記事では、日本自動車販売協会連合会(自販連)や日本政策金融公庫の統計で業界の今を整理したうえで、決算書の特徴、銀行が融資で見るポイント、税務の論点、事業承継・M&Aまでを、税理士・公認会計士の立場から解説します。
- 中古車登録台数は2025年に363万2,179台(前年比99.2%)で3年ぶりの減少、2026年1〜9月も272万3,534台(同99.2%)。一方、輸出抹消登録は130万3,712台(同105.7%)と増えている
- 東京商工リサーチの調査では、2025年の中古車販売の倒産は101件で過去10年の最多。資本金1千万円未満が88.1%を占める
- 小規模な中古車販売業の売上高経常利益率の中央値は0.6%、自己資本比率の中央値は5.0%。粗利は確保できていても、在庫の回転が鈍ると利益も資金も残らない
- 銀行は、在庫の実在性と回転、長期在庫の評価、前受金の管理、支払総額表示の遵守を見る
- 税務では、古物商特例の帳簿の記載、未経過自動車税とリサイクル預託金の区分、下取りの両建てが実務の要点。古物商の許可は合併でも承継できない
中古車販売業の今:台数は横ばい、仕入は高い
登録台数と輸出の動き
| 指標 | 2025年(年計) | 2026年1〜9月累計 |
|---|---|---|
| 中古車登録台数(軽自動車を除く) | 3,632,179台(前年比99.2%) | 2,723,534台(前年同期比99.2%) |
| うち乗用車 | 3,159,563台(98.8%) | 2,367,684台(99.0%) |
| うち貨物車 | 378,672台(101.0%) | 286,045台(101.1%) |
| 輸出抹消登録台数 | − | 1,303,712台(105.7%) |
出典:自販連「中古車車種別登録台数(年計)」2026年1月、自販連「2026年 中古車車種別月別登録台数」「2026年9月度中古車登録台数」2026年10月13日
自販連の統計は、新規登録・移転登録・変更登録を合算したナンバーベースの数字です。小売の販売台数そのものではなく、軽自動車も含みませんが、市場の大きさと方向を見る目安になります。2021年以降の登録台数は350万〜370万台で推移しており、横ばいに近い動きです。
国内の流通量が伸びない一方で、輸出向けの抹消登録は2026年1〜9月に前年を上回っています(9月単月は前年同月比84.2%と減少)。海外の需要が強い時期には、国内の販売店はオークションで海外向けの買い手とも競り合うことになります。
倒産は過去10年で最多
東京商工リサーチの調査では、2025年の中古車販売の倒産は101件(前年比29.4%増)で、2016年以降の10年間で最も多くなりました。資本金1千万円未満が88.1%を占め、休廃業・解散も128件(同48.8%増)に増えています。背景として、仕入価格の上昇と在庫不足、水道光熱費や人件費の上昇、金利の上昇による借入負担が挙げられています(東京商工リサーチ、2026年1月20日)。
また、2025年1〜9月の倒産の分析では、代金を受け取りながら車を引き渡せないまま破綻する例にも触れられています(東京商工リサーチ、2025年10月20日)。お客さまの信頼に直結する問題です。
支払総額表示と価格の透明化
2023年10月から、自動車公正取引協議会の規約にもとづき、中古車の価格は「支払総額」の表示が必要になりました。これは業界の自主ルールですが、消費者庁の認定を受けたもので、規約の運用は厳格です。ポイントは次のとおりです(自動車公正取引協議会「支払総額」FAQ)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支払総額 | 車両価格と諸費用(保険料、税金、登録に伴う費用)の合計 |
| 車両価格に含むもの | 販売店の利益、仕入・商品化の費用(陸送費、洗車・クリーニング費用など)、整備付きの場合の整備費用 |
| 諸費用に含められないもの | 納車費用、ETCセットアップ費用、オプション、下取車の諸手続代行費用 |
| 不当な価格表示の例 | 表示した総額で買えない、整備や保証の購入を販売の条件にする |
| 措置 | 初回から厳重警告、悪質な場合は違約金・事業者名の公表 |
経営への影響は小さくありません。諸費用の名目で利益を確保する形は取れなくなり、車両価格の中で利益を説明する必要があります。あわせて、2026年3月31日で環境性能割が廃止されたため、諸費用の見積りの計算式や帳票が更新されているかも確認しておきましょう。
収益構造と決算書の特徴
小規模な中古車販売業の数字
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)の「中古自動車小売業」(305社)を見ます。
| 指標 | 平均 | 中央値 | 黒字かつ自己資本プラスの企業の平均 |
|---|---|---|---|
| 売上高総利益率 | 25.4% | 23.5% | 24.4% |
| 売上高経常利益率 | ▲0.4% | 0.6% | 2.1% |
| 売上高経常利益率(償却前) | 1.0% | 1.4% | 3.2% |
| 人件費対売上高比率 | 10.8% | 9.3% | 9.1% |
| 商品回転期間 | 1.5か月 | 1.1か月 | 1.6か月 |
| 受取勘定回転期間 | 0.4か月 | 0.3か月 | 0.4か月 |
| 支払勘定回転期間 | 0.3か月 | 0.1か月 | 0.3か月 |
| 借入金回転期間 | 5.0か月 | 4.0か月 | 3.8か月 |
| 自己資本比率 | ▲9.0% | 5.0% | 17.5% |
| 損益分岐点比率 | 106.4% | 99.7% | 98.1% |
| 従業者1人あたり売上高 | 5,659万円 | 4,145万円 | 7,089万円 |
出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)卸売・小売業 業種別(2026年8月公表)
読み取れることは3つあります。第一に、粗利率には大きな差がないことです。黒字かつ自己資本プラスの企業の総利益率は、全体の平均より低いくらいです。差がついているのは、1人あたりの売上、つまり回転と生産性です。第二に、買掛の信用がほとんどないことです。支払勘定の回転期間は0.3か月で、仕入れてすぐに支払う一方、売れるまでの在庫は自前で持つことになります。第三に、損益分岐点の余裕が小さいことです。中央値でほぼ100%ですから、販売台数が少し落ちただけで赤字になります。
売上の中身で決算書の形が変わる
| 売上の種類 | 利益の特徴 | 資金の動き | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 小売(店頭・ネット) | 1台の粗利が大きい | ローン会社・現金の入金は早い | 展示が長引くと値下げが必要になる |
| 業者向け(オークション出品など) | 粗利は薄い | 回収が早い | 在庫処分で赤字になりやすい |
| 車検・整備・板金 | 工賃中心で粗利が残りやすい | 部品の立替がある | 認証の要件、人の確保 |
| 保証・コーティングなどの付帯 | 粗利が高い | 販売と同時に入金 | 購入を販売の条件にしない |
| 輸出 | 為替と相場に左右される | 決済条件次第 | 消費税の免税書類(後述) |
小売の粗利だけに頼らず、整備や保険、買取の接点を持つ店は、台数の波に強くなります。整備を内製する場合の論点は自動車整備業の動向も参考にしてください。
銀行は中古車販売店のどこを見るか
在庫の実在性と回転
銀行が最初に見るのは、貸借対照表の商品(在庫)です。中古車は1台ごとに価格が違い、時間とともに値下がりします。決算書の在庫が多いほど利益は大きく見えますが、次のような説明ができないと、銀行は在庫の評価を割り引いて見ます。
- 車台番号ごとの在庫一覧(仕入日、仕入先、仕入価格、展示日数、整備費)があるか
- 展示が長期化した車の台数と、相場との差を把握しているか
- 在庫一覧の合計と決算書の商品の金額が一致するか
- 実際に車が店舗や保管場所にあるか。委託販売の車が混じっていないか
運転資金の考え方
公庫の平均値で、在庫1.5か月に売掛0.4か月を足し、買掛0.3か月を引くと、必要な運転資金は月商の約1.6か月分が目安になります。月商1,000万円の店なら約1,600万円です。この水準の短期の借入は、在庫が売れれば返済できるため、銀行は「正常な運転資金」として見ることができます。
問題は、在庫の回転が鈍った分です。展示が伸びると借入が膨らみ、金利の負担も増えます。短期の資金は短期継続融資や当座貸越で手当てし、在庫の増加と借入の増加が釣り合っているかを毎月確かめましょう。金利上昇の影響は金利上昇と中小企業の借入で解説しています。
債務償還年数で見ると
著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」で計算し、10年以内を健全の目安としています。公庫の「黒字かつ自己資本プラス」の平均を使って、年商1.2億円の店を仮に計算すると、借入金は3,800万円(月商の3.8か月分)、償却前の経常利益は384万円(3.2%)で、現預金と税金を考えなければ約10年です。平均の企業(償却前1.0%、借入金5.0か月)では、同じ計算で約42年になります。
ただし、前述のとおり、在庫に見合う短期の借入は実態としては返済の心配が小さいものです。在庫の裏付けがある借入と、赤字の補填に使った借入を分けて説明できるかどうかで、銀行の評価は大きく変わります。
業界固有のリスク
- 表示規約・法令の遵守:支払総額の違反や走行距離・修復歴の不実表示は、信用と集客を同時に失う
- 前受金の管理:お客さまから受け取った代金を別の仕入に回していないか。前受金が増えて在庫が増えない状態は要注意
- 自社ローン:回収に時間がかかる売掛金が積み上がり、延滞の管理が必要になる
- 相場の下落:高値で仕入れた在庫が値下がりしたときの損失を、期中で把握できているか
- 社長と店舗の関係:社長個人の土地を展示場にしている場合の賃料、社長からの借入金の扱い
- 税金・社会保険料の滞納:審査で最も厳しく見られる点の一つ
審査の全体像は銀行融資の審査で見られるポイントで解説しています。
中古車販売業特有の税務・会計の論点
消費者からの買取りと古物商特例
インボイス制度のもとでも、古物商の許可を受けた事業者が、適格請求書発行事業者以外の者から販売用の古物を買い受けた場合は、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められます(古物商等特例。国税庁 インボイスQ&A 問106)。
帳簿には、通常の記載事項に加えて、特例に該当する旨(「古物商特例」など)と、古物台帳の記載の対象となる取引では相手方の住所を書きます(同 問110)。古物営業法上、対価の総額が1万円以上の取引では、取引年月日、品目と数量、特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、確認の方法を帳簿に記載します。
| 仕入先 | 控除に必要なもの |
|---|---|
| 消費者、免税事業者 | 古物商特例の記載をした帳簿 |
| 適格請求書発行事業者 | 適格請求書の保存(特例の対象外) |
| 免税購入品と知りながらの仕入 | 特例の有無にかかわらず控除できない |
個人事業の方が登録事業者である場合もあるため、買取時に登録の有無を確認する手順を決めておくことが大切です。
未経過自動車税とリサイクル預託金
国税庁の質疑応答事例では、車両価格と区分して表示した場合でも、取扱いは次のとおりとされています(国税庁「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」)。
| 項目 | 取扱い |
|---|---|
| 未経過自動車税相当額 | 中古車の譲渡の対価の一部(課税) |
| リサイクル預託金相当額 | 預託金という金銭債権の譲渡で、車両の対価に含まれない(非課税) |
「税金だから非課税」と一律に処理すると誤りになります。販売管理システムの設定を確認しておきましょう。お客さまが本来納める税金や登録の手数料を預かって支払う部分は、そのように受け取ったことが明らかであれば課税売上に含まれません(消費税法基本通達10-1-4の注)。一方、登録の代行手数料は販売店の売上です。
下取りは両建てで処理する
新しい車の販売と同時に下取りをしても、販売額から下取額を差し引いた金額を売上にすることはできません。販売は総額で売上、下取りは課税仕入れとして処理します(消費税法基本通達10-1-17)。差額だけを記帳すると、売上と消費税の両方が過少になります。決算書の売上規模も実態より小さく見えるため、銀行への説明の面でも不利です。
売上の時期と在庫の評価
車の販売の売上は、原則として引渡しの日の事業年度に計上します。引渡しの日は、取引の内容に照らして合理的な日のうち、会社が継続して使っている日によります(法人税基本通達2-1-2)。納車日か登録日かを決めて毎期同じ基準で処理し、期末をまたぐ車は入金ではなく引渡しで判断します。
在庫の評価は、中古車のように1台ごとに管理する商品なら個別法が実態に合います。ただし、棚卸資産の評価方法の届出が必要です。届出をしていない場合に適用される方法も含めて、今の評価方法を確認しておきましょう。整備費を在庫の原価に含めるかどうかも、毎期の扱いをそろえます。代車や社用に使う車は販売用の在庫と分け、固定資産として管理します(耐用年数の考え方は中古車の耐用年数を参照)。
簡易課税の事業区分と輸出免税
簡易課税を使う場合、仕入れた車をそのまま販売するなら、事業者向けは第一種(みなし仕入率90%)、消費者向けは第二種(同80%)です。整備はサービス業として第五種(同50%)です(国税庁 タックスアンサーNo.6509)。区分は取引ごとに判定するため、小売・業者販売・整備を分けて記帳します。板金や塗装を加えて販売する車の区分は、作業の内容によって判断が必要です。
輸出は消費税が免税になりますが、輸出許可書などを7年間保存する必要があります。さらに、2026年10月1日以後は、現金などで代金を受け取る輸出、取引相手以外の者から振込を受ける輸出では、仕向国の税関が発行する輸入許可書など、輸入の事実を示す書類の保存も必要になりました(国税庁 タックスアンサーNo.6551)。バイヤーへの販売が多い店は、決済方法と書類の入手方法を見直しましょう。
事業承継・M&A:許可は会社につき、信用は人につく
東京商工リサーチの2025年1〜9月の調査では、中古車販売の倒産のうち後継者難によるものが10件ありました。整備工場を併設する店、地域の法人の車を任されている店は、買い手から見て価値があります。廃業を決める前に、譲渡の可能性も検討する価値があります。
| 承継の形 | 古物商の許可の扱い |
|---|---|
| 株式譲渡・親族内承継 | 会社が同じなので残る。役員の変更は届出 |
| 吸収合併 | 消滅会社の許可は承継できない。存続会社に許可がなければ、合併前に申請して許可を受ける |
| 新設分割 | 新会社は別法人のため承継できず、新規許可が必要(設立中の法人による申請が認められる) |
| 事業譲渡 | 買い手が許可を持たなければ、取得を前提に準備する |
| 個人事業の相続 | 許可は本人に与えられるもの。後継者が自分で取得する前提で準備する |
出典:警察庁「古物営業法等の解釈基準等について」2026年5月14日
他の許認可との比較は許認可はM&Aで引き継げるか、M&A全体の動きは中小企業M&Aの件数と最近の傾向にまとめています。営業所ごとに置く管理者には、古物営業の知識と経験が求められるため、管理者が承継後も残るかも確認しておきます。
承継の前に整理しておきたいのは、次の点です。
- 在庫の実在と時価。買い手は長期在庫を時価で評価する
- 古物台帳、買取時の本人確認の記録がそろっているか
- 前受金と、車を引き渡していない契約の一覧
- 自社ローンの売掛金の残高と延滞の状況
- 展示場や工場の土地の名義と賃貸借契約(事業用不動産の承継)
- 認証工場を併設する場合の整備主任者の体制
- 社長の個人保証の扱い(事業承継と経営者保証)
経営者が今やっておきたいこと
- 車台番号ごとに在庫一覧を作り、展示日数と粗利を毎月確認している
- 展示の日数に上限を決め、値下げと業者販売への切替えの基準がある
- 支払総額の表示と実際の請求が一致しているか、店舗で点検している
- 諸費用の見積りの帳票を、環境性能割の廃止後の内容に更新した
- 買取の帳簿に、古物商特例の記載と相手方の住所を入れている
- 未経過自動車税とリサイクル預託金を分けて処理している
- 下取りを売上と仕入の両建てで記帳している
- 前受金を分けて管理し、別の仕入に回していない
- 輸出の決済方法と、輸入許可書などの書類の入手方法を確認した
- 法人税・消費税・社会保険料の納付資金を毎月積み立て、滞納がない
資金の見通しは資金繰り表の作り方、借入の組み立ては運転資金の融資はいくらが目安?で解説しています。
まとめ
中古車販売業は、台数が横ばいのなかで仕入が高く、規模の小さな店ほど厳しい環境にあります。ただ、公庫の数字が示すとおり、成果を分けているのは粗利率より回転と生産性です。在庫を1台ずつ管理して回転を上げること、支払総額のルールのもとで車両価格に利益を織り込むこと、古物商特例や下取りの処理を正しく行って決算書の信頼性を上げることが、銀行の評価と事業の存続の両方を支えます。
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