卸売・小売

食品スーパー・食品小売業の動向と経営のポイント|薄い利益率、人件費と電気代、2027年の食料品消費税1%を、銀行が見る決算書から

食品スーパーや地域の食品小売店は、毎日の暮らしを支える身近な事業です。物価の上昇で売上は伸びていますが、仕入値、パート・アルバイトの時給、冷蔵・冷凍設備の電気代が同時に上がり、利益はむしろ薄くなっているのが現場の実感ではないでしょうか。さらに2027年4月からは、食料品の消費税率を2年間1%に下げる案が示されています。

この記事では、食品スーパーの経営を公的な統計と業界団体の白書で整理したうえで、決算書の特徴、銀行が融資で見るポイント、ポイント・在庫・消費税など税務の論点、そして事業承継までを、税理士・公認会計士の立場から解説します。

この記事の結論
  • スーパーの販売額は2025年に16兆8,101億円(前年比4.7%増)。伸びの多くは食品の値上がりによるもの
  • 業界団体の白書では、2024年度の営業利益率は全体で1.38%、売上30億円未満では0.18%。30億円未満の企業の45.7%が赤字
  • 規模が小さいほど人件費の比率(労働分配率)が高く、30億円未満では52.09%。値上げより先に、人件費と電気代が利益を削っている
  • 銀行は、店舗ごとの損益、改装・設備更新の計画、買掛金を差し引いた「本当の手元資金」を見る
  • 2027年4月からの食料品の消費税率1%(案)で、納める消費税は大きく減り、還付になる会社も。中間申告と値札の準備が必要

食品スーパーの今:売上は伸びても、利益は伸びない

指標数字出典・時点
スーパーの販売額16兆8,101億円(前年比4.7%増)経済産業省「商業動態統計」(2025年の1年間)
小売業全体の販売額157兆5,120億円(前年比1.4%増)同上
スーパー業界の営業収益の伸び前年比104.4%(食品のインフレ率104.3%とほぼ同じ)「2026年版スーパーマーケット白書」(2024年度決算)
赤字企業の割合全体23.9%(314社中75社)、売上30億円未満は45.7%同上

出典:経済産業省「商業動態統計速報 2025年12月分」(2026年1月30日公表)、全国スーパーマーケット協会ほか「2026年版スーパーマーケット白書」(2026年3月公表。決算データは帝国データバンクの企業データをもとに集計)

スーパーの販売額は、小売業全体の伸びを大きく上回りました。ただ、白書によると、2024年度の営業収益の伸びは食品の値上がり率とほぼ同じで、数量が増えたというより、単価が上がった分だけ売上が増えたと読めます。営業利益の伸びは101.5%にとどまり、利益率は前年を下回りました。

白書に収められた業界団体の調査(2025年11月実施)では、ほぼすべての企業がコスト上昇の影響を受けていると答えています。特に多いのが、最低賃金の引上げに伴う人件費の上昇と、冷蔵・冷凍設備を多く使う業態ならではの電気代の上昇です。2026年度の最低賃金は全国加重平均で1,177円(前年度比56円増)となり(厚生労働省)、パート・アルバイトの比率が高いスーパーには、毎年の固定費の上昇として効いてきます。新規出店や改装を見送る動きがあることも、白書は伝えています。

収益構造と決算書の特徴

規模による利益率の差がはっきりしている

売上規模売上高総利益率営業利益率経常利益率労働分配率損益分岐点比率自己資本比率
全体26.46%1.38%1.81%47.64%95.05%43.86%
30億円未満26.18%0.18%0.96%52.09%99.46%36.72%
30億〜100億円26.08%0.71%1.19%51.43%97.38%40.22%
1,000億円以上27.00%3.09%3.29%37.30%88.94%52.78%

出典:「2026年版スーパーマーケット白書」資料編(2024年度決算、帝国データバンクの企業データ。労働分配率は人件費÷売上総利益)

粗利益率(売上高総利益率)は、規模にかかわらず26〜27%でほとんど差がありません。差がつくのは、その粗利から人件費をどれだけ払っているかです。売上30億円未満の会社では、粗利の半分以上が人件費に回り、損益分岐点比率は99%台です。売上が1%落ちれば赤字になるほど余裕がない計算です。

裏を返せば、地域の中小スーパーの打ち手は、値上げだけでなく、人時生産性(1人1時間あたりの粗利)を上げることにあります。白書では、自動発注、セルフレジ、デジタル化による省力化や、PB商品・品ぞろえの見直しで粗利率を改善する取組みが紹介されています。中小規模の会社ほど、総菜や鮮魚の加工など「地域で選ばれる理由」を粗利に結びつけられるかが鍵になります。

運転資金はかからない、設備にはお金がかかる

食品スーパーの決算書には、ほかの業種と違う特徴があります。

  • 売掛金がほとんどない:売上は現金やキャッシュレスで、数日以内に入金される
  • 在庫の回転が速い:生鮮品や日配品は数日で売り切る
  • 買掛金は後払い:仕入代金は月末締め翌月払いなどが多い

このため、売上が続く限り、仕入代金を払う前にお金が入ってくる構造です。運転資金の借入れはあまり必要ない一方、冷蔵ケース、空調、POSレジ、店舗の改装といった設備資金が定期的に必要になります。決算書で見るべきなのは、預金残高の大きさよりも、「買掛金を払ったあとに残るお金」と「次の設備更新に必要なお金」です。

銀行は食品スーパーのどこを見るか

店舗ごとの損益と、設備更新の計画

銀行がまず確認するのは、店舗別の損益です。全社では黒字でも、赤字の店舗を抱えていると、閉店の費用や設備の減損が将来の負担になります。既存店の売上の推移、競合店の出店状況、商圏の人口の変化も質問されやすい項目です。

設備資金を借りるときは、改装や冷蔵設備の更新で、売上や電気代がどう変わるかを数字で示すことが大切です。たとえば、省エネ型の冷蔵ケースへの更新で電気代がいくら下がるのか、改装で総菜売場を広げて粗利がいくら増えるのか、を事業計画に落とし込みます。計画の作り方は銀行に通る事業計画書で解説しています。

債務償還年数と「見かけの手元資金」

著書のモデルでは、債務償還年数=(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)で、10年以内が健全、20年超は厳しいと見られます。スーパーは減価償却費が大きいため、償却前の利益で返済力を見てもらえる一方、決算日の預金に買掛金の支払原資が含まれている点に注意が必要です。決算日が月末で、仕入代金の支払いが翌月なら、預金は一時的に膨らんで見えます。

銀行もこの点はよく分かっています。だからこそ、月次の資金繰り表で、支払い後の資金の動きを説明できる会社は評価されます。資金繰り表の作り方も参考にしてください。

担保・保証と、店舗の名義

中小のスーパーでは、店舗の土地や建物を社長個人が所有し、会社が借りている例が少なくありません。この場合、銀行は社長個人の不動産を担保に取ることが多く、承継のときに担保と保証の扱いが論点になります。

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食品スーパー特有の税務・会計の論点

2027年4月からの食料品の消費税率1%(案)

国税庁は、2026年9月15日に閣議決定された大綱にもとづき、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を1%に下げる内容を公表しています。対象は今の軽減税率(8%)と同じ範囲で、酒類や日用品は10%のままです。2026年10月時点では法案の審議中で、成立した場合の内容です。

一般課税のスーパーでは、食品の売上にかかる税額が大きく減る一方、家賃・電気代・日用品の仕入れなどは10%のままなので、納める消費税が大きく減り、還付になる会社もあります。次は、説明のための計算例です(税抜金額、地方消費税を含む税率で計算)。

項目現在(8%)引下げ後(1%)
食品の売上9億円にかかる税額7,200万円900万円
日用品の売上1億円にかかる税額(10%)1,000万円1,000万円
食品の仕入6.5億円にかかる税額▲5,200万円▲650万円
日用品の仕入・経費1.75億円にかかる税額(10%)▲1,750万円▲1,750万円
納める消費税(▲は還付)1,250万円▲500万円

出典:国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)をもとに作成

注意したいのは次の3点です。

  • 中間納付が過大になる:前期(8%の時期)の実績で中間納付額を計算すると、実際の税額より多く払うことになります。法案には、前期に1%を当てはめて計算した税額で仮決算の中間申告ができる特例が入っています。中間申告で資金繰りを守る考え方は中間申告で予定納税を見直すで解説しています
  • 値札と総額表示:値札の貼り替えが間に合わない事情がある場合、2027年2月1日から5月31日までは、実際の支払額と誤認させない掲示などを条件に、8%または1%での総額表示が認められる特例が示されています
  • 簡易課税の会社:小規模な食品小売店で簡易課税を選んでいる場合、飲食料品の売上の税額と同額を仕入税額とする計算の特例があります。還付を受けたい場合は、一般課税に戻る届出の特例も設けられます

インボイスや請求書の書き方、届出の特例は飲食料品の消費税1%とインボイスで詳しく整理しています。

自社ポイントの扱い

自社発行のポイントを不特定多数のお客さまに付与している場合、発行年度ごとの管理、1ポイントから使えること、会社の都合で一方的に失効させないことが規約で明らかなことなど、要件をすべて満たせば、継続適用を条件に、付与したポイントを将来の売上の前受けとして扱えます(国税庁 法人税基本通達2-1-1の7)。他社が運営する共通ポイントは対象外です。ポイント制度を変えるときは、規約の書き方で税務の扱いが変わる点に注意します。

在庫の評価とロス

期末の在庫は、棚卸資産として計上します。品目が多いスーパーでは、売価の合計に原価率を掛けて在庫の金額を求める売価還元法を選ぶ会社もあります。評価方法を届け出ていない場合は、最終仕入原価法で評価します(国税庁「棚卸資産の評価方法の届出」)。

生鮮品の廃棄や値引きによるロスは、日々の売上と粗利に直接響きます。廃棄の記録を部門ごとに残しておくことは、税務の証拠になるだけでなく、銀行に粗利率の変化を説明するときの材料にもなります。

設備投資と少額減価償却資産の特例

中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、2026年4月1日以後に取得する資産から40万円未満が対象になり、年間合計300万円が上限です(国税庁タックスアンサーNo.5408)。小型の冷蔵ショーケースや計量器の更新に使えますが、費用を一度に計上すれば、銀行から見た利益も減ります。融資を予定している期は、どちらが得かを顧問税理士と相談しましょう。

事業承継・M&A:店舗と許認可、パートの雇用をどう引き継ぐか

区分2023年2024年2025年
小売業の後継者不在率57.9%56.8%55.2%
うち飲食料品小売52.2%51.0%48.9%
うち各種商品小売47.6%44.4%41.2%
全業種53.9%52.1%50.1%

出典:帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月公表)

飲食料品小売の後継者不在率は改善が続いていますが、まだ半数近くの会社で後継者が決まっていません。地域のスーパーは、閉店すると買い物に困る住民が出ることもあり、同業の地域スーパーへの譲渡や、従業員への承継も選択肢になります。

食品スーパーの承継で論点になりやすいのは次の点です。

  • 店舗の土地・建物の名義:社長個人の所有なら、会社への賃貸を続けるのか、会社に移すのかを決める。相続のときに後継者以外の相続人と分け方でもめないよう、遺言なども含めて準備する
  • 賃借店舗の契約:家主との契約に、経営者や株主が変わったときの条項がないかを確認する
  • 許認可:酒類の販売業免許や食品の営業許可などは、株式の譲渡か事業の譲渡かといった承継の方法によって必要な手続が違う。事前に所管の役所に確認する
  • パート・アルバイトの雇用:店舗の運営は地元のパートさんに支えられている。承継の前後で雇用条件をどう保つかを、早めに計画する

許認可の引継ぎはM&Aでの許認可の引継ぎ、承継の進め方は事業承継のロードマップで解説しています。

経営者が今やっておきたいこと

  • 店舗ごとの損益と、人時生産性(1人1時間あたりの粗利)を毎月確認している
  • 最低賃金の引上げと電気代の上昇を織り込んだ、来期の損益の見通しがある
  • 冷蔵設備・空調・改装の更新時期と金額を一覧にし、設備資金の相談を早めに始めている
  • 月次の資金繰り表で、買掛金を払ったあとの手元資金を把握している
  • 2027年4月からの消費税率1%(案)について、レジ・値札の対応と、中間申告・納税額の試算を始めている
  • 自社ポイントの規約と会計処理が合っているかを確認している
  • 店舗の不動産の名義、許認可、パートの雇用を含めた承継の計画がある

ほかの業界は、卸売業や食品製造業でも解説しています。

まとめ

  • スーパーの販売額は2025年に16兆8,101億円と伸びたが、多くは食品の値上がりによるもの
  • 売上30億円未満のスーパーは、営業利益率0.18%、赤字企業45.7%。人件費が粗利の半分を超える
  • 運転資金はかからないが、設備資金が定期的に必要。銀行は店舗別の損益と、買掛金を払ったあとの手元資金を見る
  • 2027年4月からの食料品の消費税率1%(案)で、納税額は大きく減り、還付になる会社も。中間申告と値札の準備を
  • 後継者不在率は飲食料品小売で48.9%。店舗の名義・許認可・雇用の引継ぎを早めに計画する

設備資金や運転資金の相談、決算書の見せ方、地域スーパーの承継について相談したい方は、融資・資金調達のサポートや事業承継・M&Aのサポートをご覧ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

2027年4月から食料品の消費税が1%になると、スーパーの納税額はどうなりますか?
国税庁が公表している案では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、酒類を除く飲食料品の税率が8%から1%に下がります。食品の売上にかかる税額が大きく減る一方、店舗の家賃、電気代、日用品の仕入れなどは10%のままのため、一般課税のスーパーでは納める消費税が大きく減り、場合によっては還付になります。前期の実績で計算する中間納付が過大になりやすいため、仮決算による中間申告の特例を使うかを試算しておきましょう。2026年10月時点では法案の審議中で、成立した場合の内容です。
食品スーパーは、なぜ現預金が多いのに銀行から慎重に見られることがあるのですか?
スーパーは現金やキャッシュレスで売上がすぐに入る一方、仕入代金は後払いのため、手元に買掛金の支払いに充てるお金が一時的にたまる構造です。銀行は預金の残高だけでなく、買掛金との差額、店舗ごとの損益、改装や設備更新の予定を見て、本当に自由に使えるお金がどれだけあるかを判断します。
お客さまに付与する自社ポイントは、売上から差し引けますか?
法人税では、不特定多数に付与する自社発行のポイントについて、発行年度ごとの管理や、1ポイントから使えることなどの要件をすべて満たす場合、継続適用を条件に、付与した分を将来の売上の前受けとして扱うことが認められています(法人税基本通達2-1-1の7)。要件を満たさない場合は、ポイントが使われたときに値引きとして処理します。他社が運営する共通ポイントは対象外です。

※本記事は2026年10月28日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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