法人化・税務

飲食料品の消費税1%、インボイスの書き方は?|「軽減税率対象」の表示のままでよい理由と、飲食店・小売店・卸売業が今から準備すること

税のしるべ(2026年10月26日号)が、飲食料品の消費税率の引下げに伴うインボイスの記載事項について、国税庁がQ&Aで考え方を示したことを取り上げました。結論は、取引内容の欄は「軽減税率の対象品目である旨」の表示のままでよいというものです。

政府は、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品にかかる消費税率を8%から1%に下げる法案を、2026年10月9日に閣議決定して国会に提出し、10月20日に衆議院で審議が始まったと報じられています。この記事では、国税庁のQ&A(令和8年9月)をもとに、インボイスと請求書の書き方、そして飲食店・小売店・卸売業の資金繰りに関わる特例を整理します。

この記事の結論
  • 法案が成立すれば、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率は1%(国0.78%・地方0.22%相当)になる。対象の範囲は、今の軽減税率8%の対象と同じ(国税庁Q&A)
  • インボイスや帳簿で変わるのは適用税率と消費税額だけ。「軽減税率の対象品目である旨」を書いていれば、「1%対象」と書き直す必要はない
  • 4月1日をまたぐ請求書は、3月分と4月分を分けるか、1枚の中で区分する。請求・会計システムの税率の設定と、締め日の扱いを早めに確認したい
  • 中間申告・簡易課税・課税事業者の選択には届出や申告の特例が設けられる予定。飲食店は仕入れの税率が下がる分、納める消費税が増えやすいので、資金繰りにも注意

報道と国税庁のQ&Aで示された内容

項目内容
引下げの期間2027年(令和9年)4月1日から2029年(令和11年)3月31日までの2年間
税率飲食料品の譲渡と保税地域からの引取りに1%(消費税0.78%・地方消費税0.22%相当)
対象の範囲2027年3月31日以前に軽減税率8%の対象である飲食料品と同じ。酒類・外食・ケータリングは対象外(10%)。週2回以上発行の定期購読の新聞は対象外で8%
インボイスの記載事項適用税率は1%、消費税額等は1%で計算した金額。それ以外の記載事項に変更はない。「軽減税率の対象品目である旨」を書けば「税率1%の対象品目である旨」を新たに書く必要はない
4月1日をまたぐ請求3月分と4月分で請求書を分けるか、1枚の請求書の中で区分する例を提示
法案の状況2026年10月9日閣議決定・国会提出、10月20日に衆議院で審議入り(報道)。Q&Aは法案が可決・成立した場合の内容

出典:税のしるべ 2026年10月26日号、国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(令和8年9月)問1-1、1-2、2-1、2-2。

インボイスと請求書:何を変え、何を変えなくてよいか

記載事項の「型」は変わらない

インボイス(適格請求書)の記載事項は、登録番号、取引年月日、取引内容(軽減税率の対象品目である旨)、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等、交付を受ける事業者の名称、の6つです。国税庁のQ&Aでは、このうち変わるのは適用税率(8%→1%)と、その税率で計算した消費税額だけとされています。

軽減税率の対象品目に「※」や「*」を付けて「※は軽減税率対象」と書いている今の様式は、そのまま使えます。帳簿の記載事項も同じで、仕訳の摘要に「軽減税率対象」と分かるようにしていれば足ります。

締め日が4月1日をまたぐ請求書

月の途中で締める会社は注意が必要です。たとえば15日締めの場合、2027年4月分(3月16日〜4月15日)の請求書には、3月までの8%の取引と、4月以後の1%の取引が混ざります。Q&Aでは次の2つの方法が例示されています。

方法内容向いている会社
請求書を分ける3月16日〜31日分(8%・10%)と、4月1日〜15日分(1%・10%)を別々に発行システムで期間を区切って発行しやすい会社
1枚の中で区分する3月分と4月分の小計を分け、最後に1%・8%・10%の税率ごとの合計と消費税額を書く取引先の支払い処理を1枚にまとめたい会社

どちらの場合も、税率ごとの合計と消費税額が読み取れることが大切です。受け取る側も、売り手のインボイスに書かれた税率と税額で仕入税額控除を計算します(Q&A問1-4)。

税率の判定でよくある場面

  • 売上の計上日と実際の販売日がずれる場合:たとえば深夜1時締めのスーパーが、4月1日0〜1時の売上を3月31日分として計上しているときは、その時間帯の販売に8%を適用して差し支えないとされています(問1-3)
  • 3月以前に売った商品が4月以後に返品された場合:返品の消費税は8%で計算します(問1-5)
  • 定期便や通信販売:2027年1月1日より前に結んだ定期供給契約や、1月1日より前に販売条件を示した通信販売で、一定の要件を満たすものは、4月1日以後の引渡しでも8%のままです(問1-6)。お中元のカタログ販売や、代金先払いの定期便などが典型例です
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中間申告・簡易課税・課税事業者の選択の特例

ここからは、税理士・公認会計士として、また多くの会社の資金繰りと融資を見てきた立場からの考えです。

インボイスの様式以上に、お金の流れに関わるのが、法案に盛り込まれた特例です。国税庁のQ&Aでは、次の特例が示されています(いずれも法案が成立した場合)。

特例内容関係が深い事業者
中間申告の特例2027年4月1日以後に始まる中間申告の対象期間について、直前の課税期間の飲食料品に1%が適用されたとして計算した税額で、仮決算による中間申告ができる(終了時は8%で計算し直す特例も)飲食料品の小売・卸売など、売上税額が減る事業者
簡易課税の計算の特例飲食料品の売上(1%)に係る売上税額と同額を仕入税額とする。2割特例・3割特例でも同じ簡易課税の飲食料品の販売業者
簡易課税をやめる届出の特例2027年4月1日を含む課税期間中に不適用届出書を出せば、その期間から一般課税にできる。2年継続の要件も外れる還付を受けたい飲食料品の販売業者
課税事業者を選ぶ届出の特例2027年4月1日を含む課税期間中に選択届出書を出せば、その期間から課税事業者になれる還付を受けたい免税事業者

届出の特例を使う場合は、届出書の「参考事項」欄に「飲食料品特例」と書くとされています。課税事業者を選ぶと原則2年間は免税事業者に戻れないことや、高額特定資産を買ったときの3年間の縛りなど、今の制度のルールはそのまま残る点に注意が必要です。

中間申告が過大になる会社

飲食料品の販売が中心の会社は、2027年4月以後、売上にかかる消費税が大きく減ります。一方、今の制度のまま中間申告をすると、8%の前期の実績をもとに中間納付額が計算されるため、実際の税額より多く中間納付することになりがちです。Q&Aでは、前期に1%を当てはめて計算し直した税額で仮決算の中間申告ができる特例が示されています。

中間申告を見直して予定納税を減らし、資金繰りに余裕が生まれた例は、不動産会社でもあります(事務所のお客さまの事例)。中間申告の仕組みは、消費税の中間申告と資金繰りで解説しています。

飲食店は「納める消費税が増える」ことに注意

逆の動きになるのが、店内飲食(10%)が中心の飲食店です。売上は10%のまま、食材の仕入れが1%になるため、仕入税額控除が減り、納める消費税が増えやすくなります。仕入先が税率の下がった分だけ値下げすれば、仕入れの支払いは減りますが、その分を納税のために取っておかないと、申告の時期に資金が足りなくなります。

銀行は、決算書と試算表で消費税の未払金の増え方や、納税の遅れがないかも見ています。納税資金を別の口座に分けておく、月次の試算表で未払消費税を確認する、といった備えをおすすめします。飲食業の動向については、飲食業(飲食店)の動向と経営のポイントもご覧ください。

今から準備しておきたいこと

やることいつまでに
請求・レジ・会計システムに1%の税率を設定できるか、ベンダーに確認早めに(改修の支援策は2027年1月から申請受付と報じられている)
締め日が4月1日をまたぐ請求書の様式を決め、取引先に伝える2027年3月まで
定期便・通信販売の契約や販売条件の表示が、経過措置の対象になるかを確認2027年1月1日の前
中間申告の特例・簡易課税の特例を使うかの試算2027年4月を含む課税期間が始まる前
飲食店は、納税資金の積み立てと資金繰り表の見直し2027年4月から

今後も注意して見ていきたいこと

  • 国会での審議と成立の時期:成立には参議院での賛成が必要で、財源や給付の対象をめぐる議論が焦点と報じられています
  • 国税庁Q&Aの改訂:Q&Aは、寄せられた質問を踏まえて問の追加や改訂を行う予定とされています
  • 総額表示の特例の運用:2027年2月1日から5月31日までの間、一定の条件のもとで8%または1%での総額表示が認められる予定です。値札の切り替えの段取りに関わります
  • 価格の転嫁:仕入先・取引先が税率の差をどう価格に反映するか

まとめ

  • 法案が成立すれば、2027年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率は1%になる。対象の範囲は今の軽減税率の対象と同じ
  • インボイスで変わるのは適用税率と消費税額だけ。「軽減税率の対象品目である旨」の表示のままでよく、「1%対象」と書き直す必要はない
  • 4月1日をまたぐ請求書は、分けて発行するか、1枚の中で3月分と4月分を区分する。システムの税率設定を早めに確認したい
  • 中間申告・簡易課税・課税事業者の選択には特例が設けられる予定。飲食料品の販売業者は中間納付が過大になりやすく、飲食店は納める消費税が増えやすい

インボイスの受け取り側の注意点はインボイスを受け取る側の注意点、簡易課税の選び方は消費税の簡易課税は選ぶべき?で解説しています。税率の引下げに合わせた資金繰りの見直しや、融資を受ける前の決算書の確認をしたい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

税率が1%になったら、インボイスに「1%対象」と書き直す必要がありますか?
国税庁のQ&Aによれば、必要ありません。税率1%の対象の飲食料品は軽減税率の対象品目なので、これまでどおり「軽減税率の対象品目である旨」を記載していれば、「税率1%の対象品目である旨」を新たに書く必要はないとされています。変わるのは、適用税率(1%)と、その税率で計算した消費税額です。
3月16日〜4月15日のように、締め日が4月1日をまたぐ請求書はどうすればいいですか?
国税庁のQ&Aでは、3月までの取引(8%)と4月以後の取引(1%)で請求書を分けて発行する方法と、1枚の請求書の中で3月分と4月分を区分し、税率ごとの合計と消費税額を書く方法の2つの例が示されています。どちらでも、税率ごとに区分した対価の額と消費税額が分かるようにしておくことが大切です。
この引下げはもう決まったのですか?
2026年10月時点では、法案が国会に提出され、審議されている段階です。国税庁のQ&Aも、法案が可決・成立した場合の内容として公表されています。成立の状況と、Q&Aの改訂を確認しながら準備を進めてください。

※本記事は2026年10月27日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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