農林水産・エネルギー

ガソリンスタンド・燃料小売業の動向と経営のポイント|SSは2.6万カ所に、暫定税率の廃止、4割が営業赤字、油外収益と地下タンク、軽油引取税と消費税、承継の届出

ガソリンスタンド(サービスステーション、SS)は、ガソリンや軽油、灯油を地域に届ける業界です。自家用車だけでなく、トラックや建設機械、農業機械への給油、冬の灯油配送、災害時の燃料供給まで担う、地域の生活と産業のインフラです。その多くを中小企業が運営しています。

この記事では、ガソリンスタンドの経営の動向を資源エネルギー庁の資料で整理したうえで、決算書の特徴、銀行が融資で見るポイント、軽油引取税と消費税・簡易課税などの税務、品確法の承継届出と事業承継までを、税理士・公認会計士の立場から解説します。

この記事の結論
  • 全国のSSは2025年度末に2万6,412カ所(前年度末から597減)。ピークだった1994年度末の約6万カ所から半分以下に
  • ガソリンの暫定税率は2025年12月31日、軽油引取税の暫定税率は2026年4月1日に廃止された
  • SS事業者の97.3%が中小企業で、約7割は1カ所だけを運営。2023年度決算では営業赤字が42.1%、粗利の約8割を燃料油に頼る
  • 銀行は販売数量と油外収益、地下タンクなどの設備更新の計画を見る。燃料に頼らない収益の育て方が説明の中心
  • 軽油引取税は、特別徴収義務者かどうかで消費税の扱いが変わる。承継では品確法の承継届出を忘れずに

ガソリンスタンドの今:数は減り続け、地域の「最後の砦」に

指標数字時点
給油所(SS)数2万6,412カ所(前年度末から597減、2.26%減)2025年度末(2026年3月31日、登録ベース)
揮発油販売業者数1万1,832事業者(同281減)同
SS数のピーク約6万カ所1994年度末
ガソリンの国内需要6,147万kl(2004年度)から約27%減2022年度
ガソリン乗用車の平均燃費13.5km/L(2004年度)→24.6km/L2021年度
SSが3カ所以下の市町村(SS過疎地)381市町村(前年度から9増)2024年度末

出典:資源エネルギー庁「令和7年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました」(2026年8月24日)、同「新たな地域燃料流通に関する研究会 中間とりまとめ」(2026年8月)

SSが減っている理由として、資源エネルギー庁は、自由化に伴う競争、燃費の向上による需要の減少、そして経営者の高齢化と後継者不足を挙げています。最寄りのSSまで道路距離で15km以上あるエリアを抱える市町村も291あり、国は過疎地で特に維持が必要なSSを「地域インフラSS」として選び、自治体と計画を作ったうえで設備や人手不足対策を支援する方向を示しています。

一方で、SSは災害時の燃料供給の拠点でもあります。自家発電設備を備えて緊急車両などへ優先的に給油する「中核SS」は1,562カ所、住民が給油できる「住民拠点SS」は1万4,215カ所が整備されています(2025年度末時点)。

暫定税率の廃止

2025年12月の租税特別措置法の改正で、揮発油税と地方揮発油税の暫定税率が廃止され、2025年12月31日から1キロリットルあたり5万3,800円が2万8,700円になりました(国税庁「揮発油税等の特例税率の廃止について」)。軽油引取税も2026年4月1日から1キロリットルあたり3万2,100円が1万5,000円になっています(香川県「令和8年4月1日からの軽油引取税の税率について」、愛知県の案内)。

店頭価格が下がれば消費者にはプラスですが、SSにとっては税額の分だけ売上高が減っても、それだけで1リットルあたりの粗利が増えるわけではないことに注意が必要です。売上高が減ると、売上高に対する利益率は見かけ上よくなり、カード決済の手数料など売上に比例する費用はやや軽くなります。決算書を前の期と比べるときは、税率の変更による売上高の減少分を分けて説明できるようにしておきましょう。

SSの収益構造と決算書の特徴

資源エネルギー庁の資料(石油協会「石油製品販売業経営実態調査」2023年度決算ベース)によると、SSの経営は次のような状況です。

指標数字
中小企業の割合97.3%(1カ所だけを運営する事業者は約7割)
粗利額の内訳燃料油が約8割(レギュラー34.9%、軽油22.6%、灯油10.7%ほか)、油外が約2割
営業損益赤字が42.1%、黒字が57.9%
SS過疎地のSSが挙げる経営課題燃料油の販売量減少80.3%、従業員の確保62.8%(2024年度の国の委託調査)

出典:資源エネルギー庁「新たな地域燃料流通に関する研究会 中間とりまとめ」(2026年8月)

決算書には、業界特有の次のような特徴が表れます。

  • 売上高は大きいが、粗利率は低い:売上高には揮発油税などの税金が含まれ、価格以外の差別化がしにくいため、他の小売業と比べても営業利益率が低い傾向があります
  • 在庫は燃料:タンクにある燃料の在庫は、仕入価格の変動で粗利が振れる原因になります。在庫の評価方法を決め、毎月の棚卸を正確に行うことが大切です
  • 固定資産は土地・地下タンク・計量器・キャノピー:土地を自社で持つ事業者も多く、含み益や担保の価値が財務の支えになっていることがあります
  • 人件費とカード手数料:人手不足でセルフ化が進む一方、24時間営業や配送を続けるための人件費は重くなりがちです

銀行はガソリンスタンドのどこを見るか

返済能力:燃料の数量と、油外の伸び

著書のモデルでは、債務償還年数=(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)で、10年以内が健全、20年超は厳しいと見られます。需要が年々減る業界なので、銀行は過去の利益だけでなく、数年後も今の返済を続けられるかを見ます。油種ごとの販売数量と1リットルあたりの粗利、洗車・整備・車検・物販・灯油配送などの油外の粗利を、数年分の推移で示せるようにしておきましょう。審査の全体像は銀行融資の審査で見られるポイントで解説しています。

運転資金:仕入れの支払と掛売りの回収

法人や運送会社への掛売り、カード決済の入金までの期間と、元売・特約店への仕入代金の支払の時期のずれが、運転資金の需要になります。価格が上がる局面では同じ数量でも必要な資金が増えるため、仕入価格の変動を織り込んだ資金繰り表があると説明しやすくなります(運転資金の融資の考え方)。燃料価格の急変で売上が落ち込んだときは、セーフティネット保証の対象になることもあります(セーフティネット保証の使い方)。

設備資金:地下タンク、計量器、セルフ化、多角化

地下タンクの入換えや漏えいを防ぐ設備は、巨額の費用がかかる一方で、安全規制への対応であり直接の収益にはつながりにくい、と国の資料でも指摘されています。老朽化に悩む設備として、計量器、地下タンク、ローリーがよく挙げられます。銀行には、更新の時期・費用・資金の手当てをまとめた設備計画を示すとよいでしょう。セルフ化やPOS、EV充電器、整備工場や洗車設備への投資は、それによって何がどれだけ増えるのかをセットで説明します。2026年2月には消防庁の省令が改正され、AIを使った給油の許可が一定の条件のもとで使えるようになりました。省人化の投資の選択肢として検討する価値があります。

業界特有のリスクとして見られる点

  • 需要の構造的な減少:燃費の向上、人口減少、電動車の普及
  • 価格競争:近隣の大型店との価格差と、仕入れの条件
  • 設備と環境:地下タンクの老朽化と、閉鎖するときのタンク撤去や土壌の調査・対策の費用
  • 人材:危険物を扱う資格を持つ従業員と、後継者の確保
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ガソリンスタンド特有の税務・会計の論点

揮発油税は消費税の課税標準に含まれる、軽油引取税は条件次第

消費税の課税標準には、揮発油税・地方揮発油税、石油石炭税などが含まれます。メーカーなどが納める税金で、販売価格の一部を構成しているからです。

これに対して軽油引取税は、利用者が納税義務者となる税金です。特別徴収義務者である特約店等が販売する場合(その委託を受けてSSが販売する場合を含む)は、税額を請求書等で明らかにし、預り金などで区分すれば課税標準に含まれません。しかし、特別徴収義務者に当たらないSSが販売する場合は、販売価格から軽油引取税を控除できません(国税庁 タックスアンサーNo.6313)。仕入れの形態によって扱いが変わるため、レシートや請求書の表示と経理の方法を確認しておきましょう。

簡易課税の事業区分が混在する

簡易課税制度では、一般の消費者への燃料の販売は第2種事業(小売業、80%)、仕入れた燃料を形を変えずに運送会社などの事業者に販売するのは第1種事業(卸売業、90%)、洗車や整備などのサービスは第5種事業(50%)になります(国税庁 タックスアンサーNo.6505)。売上を事業ごとに区分していないと、区分していない部分には最も低いみなし仕入率が適用されます。POSの売上区分を、事業区分に合わせて集計できるようにしておくことが大切です。

設備の修繕と更新

地下タンクのライニング(内面の補修)や計量器の交換、キャノピーの補修などは、修繕費になるか資本的支出として資産に計上するかの判断が必要です。金額が大きく、決算書の利益に影響するため、工事の内容が分かる見積書や契約書を残しておきましょう(修繕費と資本的支出の考え方)。

事業承継・M&A:品確法の届出、資格者、元売との契約

SSの経営者の高齢化と後継者不足は、SSが減る大きな理由の一つです。国の資料でも、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターが、SSの承継の相談から承継先の紹介、条件のすり合わせまでを支えた事例が紹介されています。

承継の方法を選ぶときは、次の点を確認しましょう。

確認すること内容
揮発油販売業の登録品確法の登録制。相続・合併・会社分割・事業の全部の譲渡で地位を承継したときは承継の届出が必要(怠ると過料)
事業の全部の譲渡の意味土地・建物を含め、揮発油販売業に必要なあらゆる権利義務を移す場合。施設だけの譲渡は含まない
品質の確保品質管理者の選任と、原則10日に1回の品質分析の体制
人材危険物を扱う資格を持つ従業員が引き続き働けるか
取引先元売・特約店との契約、法人の掛売り先、自治体との災害時の協定
名義SSの土地・建物・タンクが創業家の個人名義になっていないか

出典:資源エネルギー庁「石油製品の品質確保について」、各地方経済産業局の品確法の手続案内

会社の株式を譲り渡す方法なら、登録を受けた会社そのものは変わりませんが、代表者など登録の内容に変更があれば変更の手続が必要になります。事業の譲渡では、土地や設備、契約を一つずつ移すことになり、税金の負担も異なります(事業譲渡と株式譲渡の違い、M&Aでの許認可の引継ぎ)。SSの土地を経営者個人が持っている場合は、事業用不動産の承継もあわせて検討が必要です。

経営者が今やっておきたいこと

  • 油種ごとの販売数量と1リットルあたりの粗利を、数年分の推移で把握している
  • 暫定税率の廃止による売上高の変化を、数量・粗利と分けて説明できる
  • 油外(洗車・整備・車検・物販・灯油配送)の粗利を、部門別に集計している
  • 地下タンク・計量器・ローリーの更新時期と費用、資金の手当てを計画している
  • 軽油の仕入れの形態と、軽油引取税の消費税の扱いを確認している
  • POSの売上区分を、簡易課税の事業区分に合わせて集計できる
  • 危険物の資格を持つ従業員の確保と、後継者の候補を考えている
  • 承継の方法ごとに、品確法の届出、元売との契約、土地とタンクの名義を整理している

燃料を多く使う業界や、SSと関わりの深い業界の動向は、運送業、自動車整備業、太陽光発電事業でも解説しています。

まとめ

  • SSは2025年度末に2万6,412カ所。需要の減少と後継者不足で、ピークの半分以下に減った
  • ガソリンの暫定税率は2025年12月31日、軽油引取税の暫定税率は2026年4月1日に廃止。売上高は減っても粗利は変わらない
  • 事業者の97.3%が中小企業で、営業赤字が42.1%。粗利の約8割を燃料油に頼っている
  • 銀行は販売数量と油外収益、地下タンクなどの設備更新の計画を見る
  • 軽油引取税の消費税の扱いと、簡易課税の事業区分に注意。承継では品確法の承継届出、資格者、元売との契約、名義を確認する

設備の更新や運転資金の調達、決算書の見せ方、SSの承継について相談したい方は、融資・資金調達のサポートや事業承継・M&Aのサポートをご覧ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

ガソリンスタンドの決算書で、銀行は何を重視しますか?
販売数量と1リットルあたりの粗利の推移、粗利のうち燃料油と油外(洗車・整備・車検・物販など)の割合、人件費とクレジットカード手数料などの固定費、地下タンクや計量器の更新計画を見ます。資源エネルギー庁の資料では、SSの粗利の約8割を燃料油が占め、営業赤字の事業者が4割を超えています。燃料に頼らない収益をどれだけ育てているかが、返済能力の説明の中心になります。
ガソリンスタンドの消費税で、軽油引取税はどう扱いますか?
揮発油税は消費税の課税標準に含まれますが、軽油引取税は、特別徴収義務者である特約店等が販売する場合(その委託を受けたSSが販売する場合を含む)には、請求書等で区分すれば課税標準に含まれません。一方、特別徴収義務者に当たらないSSが販売する場合は、販売価格から軽油引取税を控除できません。自社がどちらに当たるかを確認しましょう。
ガソリンスタンドを子どもや他社に引き継ぐとき、どんな手続が必要ですか?
揮発油販売業は品確法の登録制で、相続、合併、会社分割、事業の全部の譲渡で地位を承継したときは承継の届出が必要です。届出を怠ると過料の対象になります。品質管理者の選任、危険物を扱う資格を持つ従業員の確保、元売との特約店契約、土地とタンクの名義もあわせて確認します。株式を譲り渡す方法なら登録を受けた会社は変わりませんが、代表者など登録の内容が変われば変更の手続が必要になることがあります。

※本記事は2026年11月8日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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