融資・資金調達

セーフティネット保証とは|4号と5号の違い、認定要件・保証割合・別枠の使い方と銀行の見え方

売上が急に落ちた。取引先が倒れた。地震や豪雨で店や工場が止まった。そんなとき、中小企業の資金繰りを支える公的な仕組みがセーフティネット保証です。信用保証協会が、一般の保証とは別枠で融資を保証してくれる制度で、なかでも利用が多いのが4号と5号です。

ただ、「4号と5号の違いがよく分からない」「認定を受ければ必ず借りられると思っていた」「別枠だからと多めに借りたら、翌年の決算で銀行の評価が下がった」という声も少なくありません。この記事では、セーフティネット保証の4号と5号の違いを、要件・保証割合・手続きの流れで整理したうえで、借りたあとの決算書と銀行の見え方まで、税理士・公認会計士の立場から解説します。

この記事の結論
  • セーフティネット保証は、売上減少などの「外からの要因」で資金繰りに支障が出た中小企業向けの保証で、一般の保証とは別枠で最大2億8,000万円(普通保証2億円・無担保保証8,000万円)
  • 4号は、国が指定した地域での突発的な災害が原因で、売上高等が前年同期比20%以上減少する見込みの事業者。保証割合は100%
  • 5号は、国が指定した業況の悪い業種で、最近3か月の売上高等が前年同期比5%以上減少しているなどの事業者。保証割合は80%(金融機関も2割のリスクを負う)
  • 市区町村の認定は「入口の確認」にすぎない。融資の可否は、金融機関と保証協会が返済能力を見て判断する
  • 別枠でも借入金は増える。債務償還年数と返済計画を先に確認し、必要な金額だけを借りるのが、次の融資につながる使い方

セーフティネット保証とは?一般の保証との違い

セーフティネット保証(経営安定関連保証)は、中小企業信用保険法にもとづく制度です。取引先の倒産、自然災害、業界全体の不況など、自社の努力だけではどうにもならない外部の要因で資金繰りに支障が出ている中小企業に、信用保証協会が通常とは別の枠で保証をつけます。

一般の保証付き融資(いわゆる「保証協会付き融資」)との大きな違いは次の3点です。

  1. 別枠がある:一般の保証の限度額(普通保証2億円・無担保保証8,000万円)とは別に、同じ額の枠が使える
  2. 市区町村長の認定が必要:対象者であることを、本店(個人事業主は主たる事業所)のある市区町村で認定してもらう
  3. 号ごとに保証割合が違う:100%保証の号と、80%保証(責任共有制度の対象)の号がある

保証協会付き融資そのものの仕組みや、使い続けたときの落とし穴については、保証協会付き融資の落とし穴|プロパー融資との違いで詳しく解説しています。

1号から8号までの全体像

セーフティネット保証には1号から8号まであります。それぞれ「どんな外部要因か」で分かれています。

号対象となる主な場面保証割合
1号大型倒産した取引先と取引があり、資金繰りに支障が出ている100%
2号取引先のリストラ(生産縮小・店舗閉鎖など)の影響を受けている100%
3号特定地域での突発的な事故等の影響を受けている100%
4号指定地域での突発的な災害(自然災害等)の影響を受けている100%
5号全国的に業況が悪化している指定業種に属している80%
6号取引していた金融機関が破綻した100%
7号取引金融機関の経営合理化で、貸出しが抑えられている80%
8号取引金融機関から、整理回収機構(RCC)に貸付債権が譲渡された80%

※保証割合は東京信用保証協会の制度案内の記載にもとづく整理です。実際に使う際は、利用する信用保証協会で最新の内容を確認してください。

このうち、実際に相談が多いのが4号(災害)と5号(業種の不況)です。

4号と5号の違い|要件・保証割合を比較

4号:指定地域の突発的な災害

4号は、地震・豪雨・台風などの突発的な災害が起きたとき、国(経済産業大臣)が地域と期間を指定して発動されます。2026年にも、令和8年熊本地震について4号の指定が告示されています(令和8年8月5日告示。横浜市のセーフティネット保証4号の案内ページで確認)。

自治体の案内では、主な要件は次のとおりです。

  • 指定を受けた地域で事業を行っている中小企業者であること(事業実態の確認方法などは自治体の案内で確認)
  • 災害の発生に起因して、最近1か月の売上高等が前年同月比20%以上減少し、かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期比20%以上減少することが見込まれること

保証割合は100%です。金融機関は自らのリスクをほとんど負わないため、災害直後の資金需要に対応しやすい制度といえます。

5号:全国的に業況が悪化している指定業種

5号は、国が「全国的に業況が悪化している」と指定した業種に属する中小企業が対象です。指定業種は定期的に見直されるため、自社の業種が対象かどうかは、申込みの時点の中小企業庁の業種リスト(日本標準産業分類の細分類で指定)で確認する必要があります。

要件は、指定業種に属する事業を行っていることに加えて、次のどれかに当てはまることです(広島市の案内による整理)。

類型要件
売上減少最近3か月間の売上高等が、前年同期比で5%以上減少
原油等の高騰製品等原価の20%以上を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているのに、製品等の価格に転嫁できていない
利益率の低下最近3か月間の月平均の売上高営業利益率が、前年同期比で20%以上低下

保証割合は80%です。2018年(平成30年)4月から、5号は責任共有制度の対象になりました。融資額の2割は金融機関がリスクを負うため、4号に比べると金融機関の審査は「自行の融資」に近い目線になります。

4号と5号の比較表

項目4号5号
きっかけ指定地域での突発的な災害指定業種の全国的な業況悪化
対象の決まり方地域と期間を国が指定業種を国が指定(定期的に見直し)
売上の要件前年同期比20%以上の減少(見込みを含む)最近3か月で前年同期比5%以上の減少など
保証割合100%80%
金融機関のリスクほぼなし融資額の2割
限度額一般保証とは別枠で最大2億8,000万円(4号・5号などセーフティネット保証で共通の枠)同左

なお、売上の比較方法には、業歴が短い場合などの特例が設けられていることがあります。自社の数字がどう判定されるかは、認定申請先の市区町村の案内で確認してください。

認定から融資実行までの流れ

セーフティネット保証は、いきなり保証協会に申し込むのではなく、市区町村の認定を先に受けます。

  1. 金融機関に相談:売上の落ち込みと資金需要を説明し、セーフティネット保証の利用を相談する
  2. 市区町村で認定を受ける:認定申請書に、売上高等の確認表、売上台帳などの資料、登記事項証明書(個人事業主は確定申告書の写し)を添えて申請する。金融機関が代理で申請できる自治体も多い
  3. 保証の申込み:認定書を添えて、金融機関経由で信用保証協会に保証を申し込む
  4. 審査・実行:金融機関と保証協会が審査し、承諾されれば融資が実行される
認定書には30日の有効期間がある

認定書の有効期間は、認定の日から30日間です(横浜市・熊本市などの案内)。この期間内に保証の申込みをしないと、認定を取り直すことになります。認定を先に取ってから金融機関を探すのではなく、金融機関と段取りを決めてから認定を取るのが実務の順番です。

ここで誤解が多いのが、「認定を受ければ融資は通る」という思い込みです。認定は、あくまでセーフティネット保証の対象者であることの確認です。融資の可否は、金融機関と保証協会が、返済能力・資金使途・既存の借入れの状況などを見て判断します。保証協会がどこを見ているかは、信用保証協会の審査で見られるポイントで整理しています。

また、借りたお金の使い道は、経営の安定に必要な事業資金です。売上減少をきっかけにした保証で、不動産の購入資金のような別の目的の資金をまかなうことはできません。

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別枠を使ったあと、銀行は決算書をどう見るか

ここからが、クレフティとしてお伝えしたい部分です。セーフティネット保証は「別枠」なので、つい多めに借りたくなります。しかし、別枠かどうかは保証協会の枠の話であって、決算書の上では借入金がそのまま増えます。

債務償還年数が伸びる

銀行が返済能力を見るときによく使う指標が、債務償還年数です。著書のモデルでは次の式を使います。

債務償還年数 =(借入金 − 現預金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)

10年以内なら健全、20年を超えると厳しい、というのが目安です。売上が落ちている局面では分母(キャッシュフロー)が小さくなっているので、借入金を増やすと、この年数は一気に伸びます。

たとえば、借入金から現預金を引いた額が6,000万円、年間のキャッシュフローが600万円の会社なら、債務償還年数は10年です。ここでセーフティネット保証で3,000万円を借りても、借りたお金が現預金として残っている間は、分子は変わりません。ところが、そのお金を赤字の補てんで使い切り、キャッシュフローが400万円に落ちると、(6,000万円+3,000万円)÷400万円=22.5年になります。借りたこと自体ではなく、借りたお金が何に変わったかを、翌期の決算書で銀行は見ています。

「据置期間が終わったあと」を先に描く

セーフティネット保証付きの融資には、元金の返済を一定期間止める据置期間を設けられることがあります。目先の資金繰りは楽になりますが、据置が終わると返済が一気に始まります。2020年以降の新型コロナ関連の融資でも、据置明けの返済で資金繰りが苦しくなった会社が多くありました。

借りる前に、次の3点を数字で確認しておくことをおすすめします。

  • 据置明けの月々の返済額を、平常時のキャッシュフローで払えるか
  • 売上が回復しなかった場合に、何か月分の資金が持つか
  • 借りたあとの決算で、債務償還年数と自己資本比率がどう動くか

80%保証の5号は「自行の融資」に近い

5号は金融機関が2割のリスクを負うので、銀行の担当者は「この会社にプロパーで2割貸せるか」という目でも見ています。売上の落ち込みの理由と、回復の見通しを、試算表と資金繰り表で説明できるかどうかで、結果が変わります。

また、セーフティネット保証の別枠は、本当に苦しい局面のための枠です。平時の一般保証の枠も含めて使い切ってしまうと、次に何かあったときの手段がなくなります。保証付き融資を卒業してプロパー融資に移る道筋は、保証協会付き融資の落とし穴で解説した「3つのフェーズ」で考えるのが分かりやすいでしょう。

申込み前に準備しておきたい資料

セーフティネット保証は「売上がどれだけ落ちたか」を数字で示す制度です。資料の準備が遅れると、認定書の30日の期限にも響きます。

資料目的ポイント
月次の売上台帳(前年同期と当期)売上減少率の確認月ごとに締まっていないと比較できない。月次決算を習慣にしておく
直近の試算表業況と赤字の幅の説明決算から半年以上たっている場合は特に重要
資金繰り表(今後6〜12か月)必要額と返済の見通し据置明けの返済額まで入れる
直近2〜3期の決算書・税務申告書返済能力の審査役員貸付金・仮払金などは説明を用意
登記事項証明書・認定申請書市区町村の認定金融機関の代理申請を使える自治体もある

月次の数字が締まっていない会社は、ここでつまずきます。売上の比較は「最近1か月」「最近3か月」で行うので、毎月の試算表が翌月の早い時期に出ているかどうかが、そのまま申込みのスピードになります。自治体の制度融資と組み合わせる場合の考え方は、都道府県・市区町村の制度融資の使い方も参考にしてください。

まとめ

セーフティネット保証は、外部の要因で売上が落ちた中小企業にとって、資金繰りをつなぐ大切な制度です。

  • 4号は指定地域の突発的な災害で売上高等が前年同期比20%以上減少する見込みの事業者、5号は指定業種で最近3か月の売上高等が5%以上減少しているなどの事業者が対象
  • 保証割合は4号が100%、5号が80%。限度額は一般の保証とは別枠で最大2億8,000万円
  • 市区町村の認定書は30日で期限が切れる。金融機関と段取りを決めてから認定を取る
  • 別枠でも借入金は増える。債務償還年数・据置明けの返済・自己資本比率を先に試算し、必要な金額だけを借りる

税理士法人クレフティには、元地方銀行員の資金調達部長をはじめ、金融機関出身のメンバーが在籍しています。売上の落ち込みの説明資料づくりから、返済計画を織り込んだ資金繰り表の作成、金融機関との折衝まで、借りたあとの決算書まで見据えてお手伝いします。初回のご相談は無料です。

※この記事は2026年10月時点の公表情報にもとづいています。指定地域・指定業種・認定要件は変わることがあるため、利用の際は中小企業庁、各信用保証協会、認定申請先の市区町村の最新の案内をご確認ください。

よくある質問

セーフティネット保証の4号と5号は、何が違うのですか?
4号は、自然災害などの突発的な災害で国が指定した地域の事業者が対象で、売上高等が前年同期比20%以上減少する見込みであることなどが要件です。保証割合は融資額の100%です。5号は、全国的に業況が悪化している国の指定業種の事業者が対象で、最近3か月の売上高等が前年同期比5%以上減少していることなどが要件です。保証割合は80%で、金融機関も2割のリスクを負います。
セーフティネット保証を使うと、通常の保証枠は減りますか?
セーフティネット保証は、一般の保証とは別枠で、普通保証2億円・無担保保証8,000万円(合計2億8,000万円)までの保証が受けられます。ただし、別枠であっても借入金が増えることに変わりはなく、決算書上の債務償還年数や自己資本比率には影響します。返済計画とセットで、必要な金額だけを借りることが大切です。
市区町村の認定を受ければ、融資は必ず受けられますか?
いいえ。市区町村の認定は、セーフティネット保証の対象者であることの確認にすぎません。その後、金融機関と信用保証協会が、返済能力や資金使途などを審査します。認定書の有効期間は認定の日から30日間なので、認定を受ける前に金融機関と融資の段取りを相談しておくのが一般的です。

※本記事は2026年10月28日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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