株式交換は、既存の会社が、別の会社の株式をすべて取得して100%子会社にする方法です(会社法767条)。子会社になる会社の株主は、持っていた株式の代わりに、親会社の株式などを受け取ります。オーナーが複数の会社を別々に持っている場合に、そのうち1社を親にして兄弟会社を親子会社に整理するときによく使われます。
この記事では、株式交換の流れと手続き、税金、どの会社を親にするかの考え方、銀行への説明を整理します。新しくHDを作る方法は株式移転でHDを作るをご覧ください。
- 株式交換は既存の会社を親にする。会社を増やさずにグループ化できる
- 手続きは株式交換契約と、両社の株主総会の特別決議。簡易・略式の手続きで総会を省ける場合もある
- 親会社の株式だけを交付すれば、要件を満たして株主に課税なし(所得税法57条の4)
- 親会社は、①会社規模が大きい、②株価が低い、③株式等保有特定会社になりにくい会社を選ぶのが基本
- 親会社の資本金・資本準備金の増え方は均等割に影響する。取引先・金融機関への説明も忘れない
株式交換の流れ
株式交換の効力は、株式交換契約で定めた効力発生日に生じ、その日に親会社は子会社の株式をすべて取得します(会社法769条1項)。株式移転のように設立登記の日に効力が生じるのとは違い、日付を決めて実行できるのが特長です。子会社の資産・負債・契約・従業員・許認可は子会社に残ります。
会社法の手続き
| 手続き | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 株式交換契約 | 対価(親会社株式の数など)、親会社の資本金・準備金、効力発生日などを定める | 会社法768条 |
| 子会社の株主総会 | 効力発生日の前日までに特別決議で承認 | 会社法783条、309条2項12号 |
| 親会社の株主総会 | 同上。対価が親会社の純資産の5分の1以下なら省略できる(簡易株式交換) | 会社法795条、796条2項 |
| 略式株式交換 | 一方が他方の議決権の90%以上を持つ特別支配会社なら、支配される側の総会を省略できる | 会社法784条1項、796条1項 |
| 反対株主の買取請求 | 総会に先立って反対を通知し、総会でも反対した株主などは買取りを請求できる | 会社法785条、797条 |
| 債権者保護手続 | 対価が親会社株式だけなら原則不要。金銭などを交付するときは親会社で必要 | 会社法799条1項3号 |
オーナー一族だけが株主の会社なら、両社で株主総会を開き、株式交換契約を承認すれば手続きの中心は終わります。株券を発行している子会社は、効力発生日の1か月前までに株券提出の公告と通知が必要です(会社法219条)。
無対価株式交換
親会社と子会社の株主が同じで、持ち株の割合も同じ場合、株式を交付しなくても株主の利害が変わらないため、対価を交付しない無対価株式交換が使われることがあります。新株の発行が不要になりますが、税務上の適格の判定や、親会社の資本金等の額の計算に影響するため、株主構成に合わせて事前に確認します。
税金
株式交換が税制適格(法人税法2条12号の17)に当たるかは、親会社株式以外の資産(金銭など)を交付しないこと、株式交換後も完全支配関係(または支配関係)が続く見込みであることなどで判定します。株主が親会社の株式だけを受け取れば、株主に譲渡所得の課税はなく、取得価額は旧株式から引き継ぎます(所得税法57条の4)。
親会社が受け入れる子会社株式の取得価額は、子会社の株主が50人未満なら旧株主の取得価額の合計、50人以上なら子会社の簿価純資産をもとに計算します(法人税法施行令119条1項10号)。また、株式交換では増加する株主資本を資本金・資本準備金に計上するのが原則で、その額が大きいと、法人住民税の均等割の区分が上がることがあります。均等割の区分は、税務上の資本金等の額と、会計上の資本金と資本準備金の合計額を比べて判定する仕組みのため、資本準備金をその他資本剰余金に振り替えるかどうかも含めて検討します。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るどの会社を親にするか
株式交換の要は、どの会社を親にするかです。オーナーが直接持つのは親会社の株式だけになるため、親会社の評価の仕方が、将来の相続・贈与の株価を左右します。
| 判断のポイント | 理由 |
|---|---|
| 会社規模の区分が大きい会社を親に | 大会社・中会社ほど類似業種比準価額の割合が高く、子会社の価値の影響を受けにくい |
| 株価(1株当たりの評価)が低い会社を親に | 親会社の評価がそのままオーナーの株式の評価になる |
| 株式等保有特定会社になりにくい会社を親に | 総資産が厚く、子会社株式の割合が50%未満に収まれば、類似業種比準価額を使える |
| 高収益・高評価の会社を子に | 子会社の利益は親会社の類似業種比準価額に直接は反映されない |
類似業種比準価額は、評価する会社自身の配当・利益・純資産で計算するため、子会社の利益の伸びは親会社の類似業種比準価額には直接表れません。純資産価額では子会社株式を評価して加えますが、株式交換後に増えた含み益からは法人税額等相当額(2026年4月1日以後の相続・贈与は38%)を控除できます(財産評価基本通達186-2)。
一方で、親会社が株式等保有特定会社に当たると原則として純資産価額で評価されるため、この効果は小さくなります(財産評価基本通達189)。親会社の総資産に占める子会社株式の割合がどうなるかを、株式交換の前に必ず試算します。
ただし、株価だけで親会社を選ぶのは本末転倒です。どちらの会社がグループの意思決定を担うのか、社員の気持ちとして受け入れられるか、取引先や金融機関から見て自然かも同じくらい大切です。株価対策だけを目的とした組織再編は、行為計算否認や総則6項のリスクがある点にも注意してください(総則6項と自社株評価)。
共同株式移転という選択肢
「本業の会社の下に別の会社を置くと、社員が子会社扱いされたと感じる」という心配がある場合は、両社の上に新しいHDを置く共同株式移転も選択肢です。両社は兄弟会社として対等のまま、オーナーはHDの株式を持つ形になります。
銀行・取引先への説明
株式交換では、子会社の株主がオーナーから親会社に変わります。子会社の借入契約や主要な取引契約に、株主の変更を通知・承諾事項とする条項がないかを確認し、効力発生日より前に説明します。グループで見たときの借入・純資産・債務償還年数がどう見えるかも、あわせて示しておくと安心です。銀行のグループの見方はグループ会社を銀行はどう見るか、不動産会社の株式交換は株式交換で不動産会社をホールディングス化するもご覧ください。
まとめ
- 株式交換は既存の会社を親にして、別の会社を100%子会社にする方法
- 手続きは株式交換契約と両社の株主総会。簡易・略式・無対価の手続きもある
- 親会社株式だけを交付すれば要件を満たして株主に課税なし
- 親会社は会社規模・株価・株式等保有特定会社の判定で選ぶ。経営上の自然さも大切
- 資本金・資本準備金の増え方は均等割に影響する
クレフティの事業承継・M&A支援では、親会社の選び方から株価の試算、手続き、金融機関への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。
