国税庁が令和8年10月に公表した資料で、令和7年度の法人税の申告所得金額が118兆9,000億円となり、過去最高を更新したことが分かりました。税のしるべ電子版(2026年10月30日)も、前年度から16.2%増え、6年連続の増加だと伝えています。
景気のよい数字に見えますが、同じ資料をよく読むと、黒字で申告した法人は全体の37.3%です。この記事では、国税庁の公表資料をもとに法人税の申告事績の読み方を整理し、増益の会社が翌期に直面する資金繰りと、銀行の見え方を解説します。
- 令和7年度の法人税の申告所得は118兆9,000億円(16.2%増)、申告税額は21兆9,962億円(17.5%増)。どちらも過去最高で、6年連続の増加(国税庁)
- 一方、黒字申告の割合は37.3%。前年度より0.8ポイント上がったものの、6割強の申告は黒字ではない
- 総額を押し上げたのは大きな企業グループが中心とみられる。グループ通算制度の申告だけで40.6兆円あり、全体の増加額の半分近くを占める
- 増益の会社は、確定申告の納税のあとに中間申告の納付が続く。納税資金を資金繰り表に先に織り込む
- 銀行が見るのは世の中の平均ではなく、自社の利益の続き方と、納税後に残る純資産
国税庁の資料で示された内容
国税庁の「令和7事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」の主な数字は、次のとおりです。対象は、令和7年4月1日から令和8年3月31日までに終わった事業年度の申告で、令和8年7月31日までに申告されたものを、令和8年8月末現在でまとめています。
| 項目 | 令和7年度 | 前年度との比較 |
|---|---|---|
| 申告件数 | 327万件 | 1.5%増 |
| 申告所得金額 | 118兆9,000億円 | 16兆5,619億円増(16.2%増) |
| 申告税額 | 21兆9,962億円 | 3兆2,823億円増(17.5%増) |
| 黒字申告の件数 | 122万件 | 3.8%増 |
| 黒字申告の割合 | 37.3% | 0.8ポイント上昇 |
| 黒字申告1件あたりの所得 | 9,745万円 | 11.9%増 |
| 申告欠損金額 | 17兆1,046億円 | 2.2%減 |
| 赤字申告1件あたりの欠損 | 836万円 | 2.3%減 |
| 法人税のe-Tax利用率 | 91.8% | 前年度は89.1% |
| ALL e-Tax率 | 70.3% | 前年度は67.7% |
出典:国税庁「令和7事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」(令和8年10月)。報道:税のしるべ電子版「法人税の申告所得が16.2%増の118兆9000億円、6年連続増加で過去最高を更新」(2026年10月30日)。
資料によると、申告所得金額と申告税額は総額だけでなく、前年度からの増加額も過去最高でした。
「過去最高」と「黒字37.3%」をどう読むか
総額は大きな企業グループの影響が大きい
資料には、グループ通算制度を使う法人の申告の数字も載っています。
| グループ通算制度の申告 | 令和7年度 | 前年度 |
|---|---|---|
| 申告件数 | 1万9,922件 | 1万9,457件 |
| 申告所得金額 | 40兆5,746億円 | 32兆6,885億円 |
| 黒字申告の割合 | 57.3% | 56.0% |
| 黒字申告1件あたりの所得 | 35億5,500万円 | 30億100万円 |
全体の申告327万件に対して、この約2万件の申告所得は40兆円を超えます。全体の数字に含まれているものとして単純に計算すると、申告所得の約34%、前年度からの増加額の約48%にあたります。
「黒字1件あたり9,745万円」という平均も、こうした大きな会社に引き上げられています。中小企業の経営者が、この金額や16.2%という伸びを自社の物差しにする必要はありません。
申告所得は「決算書の利益」とは違う
もう一つの注意点は、ここでいう所得が税務上の金額だということです。決算書の利益に税務上の調整を加え、繰越欠損金を差し引いたあとの金額が申告所得になります。そのため、決算書が黒字でも、繰越欠損金を使って所得が0になれば、税務上は黒字の所得として表れません。
つまり「6割強の申告が黒字ではない」といっても、そのすべてが本業の赤字というわけではありません。それでも、税金を納める水準の所得を出している法人が4割に届かないという事実は、融資の場面では意味を持ちます。
源泉所得税の数字に見える金利の動き
同じ資料には源泉所得税等の実績もあります。合計は23兆8,314億円で、前事務年度より17.1%増えました。
| 所得の種類 | 令和7事務年度の税額 | 前事務年度比 |
|---|---|---|
| 給与所得 | 14兆2,558億円 | 15.3%増 |
| 配当所得 | 4兆974億円 | 26.1%増 |
| 利子所得等 | 8,590億円 | 60.1%増 |
| 退職所得 | 3,838億円 | 13.2%増 |
目を引くのは利子所得等の60.1%増です。資料に理由は書かれていませんが、預金金利の上昇が背景にあるとみられます。給与所得の税額は前事務年度に減っていたため、定額減税の反動も含んでいる可能性があり、賃上げの効果だけとは言い切れません。
法人が受け取る預金利息からも所得税は源泉徴収され、法人税の申告で精算します。手元資金の置き場所を見直している会社は、受取利息の源泉徴収分の処理も確認しておきましょう(預金獲得競争と預貸率)。
増益の翌期に起きること
ここからは、税理士・公認会計士として、また自らも融資を受けて事業を続けてきた立場からの考えです。
全体の統計で本当に確認したいのは、自社が「増益した側」にいる場合の資金繰りです。利益が増えた会社は、決算のあとに現金が続けて出ていきます。
| 時期(3月決算の場合) | 起きること | 確認すること |
|---|---|---|
| 決算前(1〜3月) | 期末の利益の見込みが固まる | 法人税等と消費税の納税額を見積もる |
| 決算後2か月以内(5月末) | 確定申告と納付 | 納税資金が口座にあるか |
| 期首から8か月以内(11月末) | 中間申告と納付 | 前期の法人税額の半分を目安に準備する |
| 翌期以降 | 2027年3月期からは防衛特別法人税も対象 | 所得の水準により税額が生じるかを確認する |
たとえば資本金1億円以下の会社(特別な税額控除なし)で所得が4,000万円の場合、法人税だけで約862万円(800万円以下は15%、超える部分は23.2%)です。翌期の中間申告では、その半分の約431万円を法人税として納めます。ここに地方法人税、法人住民税、法人事業税、消費税の中間納付が重なります。
前期の法人税額が20万円を超える12か月決算の会社は中間申告が必要です。何もしないと前期実績にもとづく予定申告をしたものとみなされます(中間申告と予定納税の仕組み)。
特に注意したいのは、一時的な利益で増益になった会社です。不動産の売却益などで所得が膨らんだ翌期は、前期実績の予定申告だと、業績に対して重い前払いになることがあります。業績が前期より下がっていれば、仮決算による中間申告で納付を抑えられる場合があります。事務所でも、年商5〜10億円の不動産売買・賃貸業のお客さまで、中間申告の提案によって予定納税を減らし、資金繰りに余裕ができた例があります。ただし、年間の税額が変わるわけではありません。
銀行は「黒字37.3%」のなかの自社をどう見るか
黒字を続けることが差になる
銀行が見るのは、世の中の平均ではなく、自社の決算書です。黒字申告が4割に届かない環境では、黒字と納税を毎期続けていること自体が、借り手としての差になります。単年度の大きな利益より、3期続けて利益が出ているほうが説明しやすいのは、このためです(銀行に見せる前に決算書で確認すること)。
利益を圧縮すると、次の融資が遠くなる
利益が出ると、決算前に「税金を減らしたい」と考える経営者は少なくありません。ただ、税金を減らすためだけの支出は、現金も純資産も減らします。著書で紹介している標語「払った税金の2倍、会社は強くなる」は、税負担をおおむね3分の1とすると、税金を1払った会社には2の利益が残り、純資産が積み上がるという考え方です。
銀行が重視する債務償還年数も、納税を差し引いたあとの数字で見ます。
著書のモデルでは10年以内が健全の目安です。利益が増えれば納税も増えますが、分母はそれ以上に増えます。
申告の電子化で、銀行への説明の土台もそろう
ALL e-Tax率は70.3%まで上がりました。これは、主要な別表に加えて財務諸表などの添付書類までe-Taxで送った申告の割合です。国税庁は、CSV形式の財務諸表データを作りやすくする簡易作成ツールの開発・公開を予定しています。
銀行に決算書を出すときは、申告書一式と受信通知をそろえておくと、説明がスムーズです。添付する書類の範囲は顧問税理士と確認してください。
今確認しておきたいこと
| 項目 | 確認の内容 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 納税カレンダー | 確定申告、中間申告、消費税の納付月と金額を12か月の資金繰り表に入れる | すべての会社 |
| 着地見込み | 決算の2〜3か月前に、利益と納税額を見積もる | 増益の見込みがある会社 |
| 仮決算の検討 | 一時的な利益の翌期は、予定申告と仮決算の税額を比べる | 物件売却など単発の利益があった会社 |
| 納税資金の手当て | 自己資金で足りなければ、早めに銀行に相談する | 利益は出ているが現金が薄い会社 |
| 3期の推移 | 利益、純資産、債務償還年数を並べて確認する | 融資を受け続けたい会社 |
納税の期限が迫ってから資金が足りないと分かるのが、いちばん避けたい形です。増益は銀行に説明しやすい材料ですから、早めに決算の見込みと納税資金の話をしておくほうが、話は進みやすくなります(防衛特別法人税の仕組みと試算、融資の相談窓口)。
今後も注意して見ていきたいこと
- 年末の2027年度税制改正大綱:防衛特別法人税の税率引き上げや、法人税負担の議論がどう扱われるか
- 法人税等の調査事績の公表:前年度分は12月に公表されており、今年度分で調査の重点が示されるか
- 飲食料品の消費税率引下げの審議:消費税の納付額や資金繰りへの影響
- 金利の動き:預金の受取利息が増える一方で、借入の支払利息がそれ以上に増えていないか
- 簡易作成ツールの公開時期:財務諸表データの提出がどこまで楽になるか
統計の数字は、自社の決算を見直すきっかけとして使うのがよいと思います。「過去最高」の裏で、黒字申告は4割に届いていません。黒字を続け、納税し、残った利益を純資産として積み上げる会社は、銀行から見ても数少ない存在です。
まとめ
- 令和7年度の法人税の申告所得は118兆9,000億円、申告税額は21兆9,962億円で、どちらも過去最高。6年連続の増加
- 黒字申告の割合は37.3%で、6割強の申告は黒字ではない
- グループ通算制度の申告だけで40.6兆円あり、総額は大きな企業グループの影響が大きい
- 増益の会社は、確定申告のあとに中間申告の納付が続く。一時的な利益の翌期は仮決算も比べる
- 銀行が見るのは自社の利益の続き方と純資産。納税を前提に資金繰りを組み、早めに銀行と話をする
増益の期の納税計画や、銀行への説明の準備を確認したい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。
