信用保証協会の保証付き融資を受けると、融資の実行と同時に信用保証料が差し引かれることがよくあります。「この保証料は経費になるのか」「払った年に全部経費にしてよいのか」と迷う方は少なくありません。
結論からいうと、信用保証料は経費になります。ただし、一括で前払いした保証料を、払った年に全額経費にできるとは限りません。保証料は保証期間の全体に対する対価なので、期間に応じて按分し、まだ来ていない期間の分は「前払費用」として資産に計上するのが原則です。この記事では、信用保証料の経費計上と前払費用の按分、仕訳の例、繰上返済で戻ってくる保証料の処理、そして銀行から見たときのポイントを整理します。
- 信用保証料は、お金を借りるためのコストなので経費(損金・必要経費)になる
- 一括前払いした保証料は、保証期間で按分し、未経過分は前払費用・長期前払費用として資産に計上する
- 信用保証料を一時に損金にした申告に対し、前払費用に当たるとして更正処分を適法とした裁判例がある(名古屋高裁金沢支部 平成17年1月12日判決)
- 繰上返済で保証料が返戻されたら、残っている前払費用を取り崩し、差額をその期の費用にする
- 信用保証料は消費税の非課税取引。銀行は、金利と保証料を合わせた実質の借入コストで返済力を見ている
信用保証料とは:金利とは別にかかる「保証の対価」
信用保証協会の保証付き融資では、借り手は金融機関に払う利息とは別に、保証協会に信用保証料を払います。万一返済できなくなったとき、保証協会が金融機関に代わりに返済(代位弁済)してくれる、その保証を受ける対価です。保証付き融資そのものの仕組みは保証協会付き融資とプロパー融資の違いで詳しく解説しています。
保証料の率は、会社の財務内容などに応じて区分されています。責任共有制度の対象となる保証では、年0.45%から1.90%の9つの区分があり、決算書の内容が良いほど低い料率が適用されます(審査の流れは信用保証協会の審査のポイントを参照)。
保証料は、融資の実行時に一括で前払いするのが一般的です。多くの場合、金融機関が融資金から保証料を差し引いて入金するため、通帳には借入額より少ない金額が入ります。ここで最初の間違いが起きやすいので注意してください。借入金は契約した金額で計上し、差し引かれた保証料は別に計上します。入金額だけで借入金を記帳すると、借入金の残高が返済予定表と合わなくなります。
返済方法によっては、保証料を分割で払う方法が選べる場合もあります。分割払いでは、払うたびにその期間に対応する保証料を経費にすればよいので、処理は単純です。悩ましいのは、一括で前払いした場合です。
一括で払った保証料は、保証期間で按分する
税務の考え方:前払費用に当たる
一括で払った信用保証料は、数年分の保証をまとめて先に買ったものです。そのため、当期に対応する分だけを当期の経費にし、翌期以降の分は前払費用として繰り延べるのが原則です。
この点は裁判でも争われています。信用保証料を払った事業年度に一括で損金に算入した法人に対し、税務署が保証期間に応じて按分すべきとして更正処分をした事案で、名古屋高等裁判所金沢支部は、信用保証料は保証金額と保証期間に応じて算出され、期限前に完済すれば返戻される性質があることなどから、一定期間の継続的な役務の提供に対する対価であり、法人税法上の前払費用に当たると判断し、更正処分を適法としました(名古屋高裁金沢支部 平成17年1月12日判決 平成16年(行コ)第2号)。
なお、支払った日から1年以内に提供を受ける役務の前払いについては、一定の要件のもとで支払時の損金算入を認める「短期前払費用」の取扱い(法人税基本通達2-2-14)があります。しかし、保証期間が1年を超える信用保証料の一括払いは、この取扱いの対象にはなりません。
法人と個人で考え方は同じ
個人事業主や、不動産所得のある個人の方も考え方は同じです。事業や不動産賃貸のための借入れにかかる信用保証料は必要経費になりますが、一括で払った場合は、その年に対応する分だけをその年の必要経費にします。
| 項目 | 法人 | 個人(事業所得・不動産所得) |
|---|---|---|
| 経費になるか | 損金になる | 業務用の借入れなら必要経費になる |
| 一括前払いの場合 | 保証期間で按分。未経過分は前払費用・長期前払費用 | 同じく、その年に対応する分だけ必要経費 |
| 分割払いの場合 | 期間に対応する分をその都度損金 | 期間に対応する分をその都度必要経費 |
| 繰上返済で返戻されたとき | 前払費用を取り崩し、差額を損金 | 未経過分を精算し、差額を必要経費 |
| 消費税 | 非課税(仕入税額控除なし) | 非課税(仕入税額控除なし) |
個人の場合、自宅と事業の両方に使う借入れや、住宅ローンのように業務と関係のない借入れの保証料は、必要経費になりません。業務用の部分だけを区分してください。
仕訳の例:融資実行時と決算時
具体的な数字で見てみましょう。3月決算の会社が、10月1日に保証付きで融資を受け、保証期間5年(60か月)分の信用保証料60万円を一括で払った(融資金から差し引かれた)とします。按分は、保証期間の月数で均等に割る方法で計算します。
| 時点 | 借方 | 貸方 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 融資実行時(10月1日) | 普通預金 2,940万円/長期前払費用 60万円 | 長期借入金 3,000万円 | 借入金は契約額で計上する |
| 1期目の決算(3月31日) | 支払保証料 6万円 | 長期前払費用 6万円 | 10月〜3月の6か月分 |
| 1期目の決算(3月31日) | 前払費用 12万円 | 長期前払費用 12万円 | 翌期の12か月分を流動資産へ振り替える |
1期目の決算書では、当期の費用は6万円だけで、翌期分の12万円が「前払費用」(流動資産)、残りの42万円が「長期前払費用」(固定資産の「投資その他の資産」)として残ります。2期目以降は、毎期12万円ずつ費用になっていきます。
分割返済の融資では、借入残高が減るにつれて保証の対象額も減っていきます。そのため、残高に応じて按分する方法も考えられますが、実務では月数で均等に按分する方法が多く使われています。どちらの方法でも、毎期同じ方法を続けることが大切です。
元金の返済そのものは経費にならない一方、保証料や利息は経費になります。この違いは資金繰りの見通しに直結するので、借入金の返済は経費にならないもあわせてご覧ください。
繰上返済・借換えで保証料が戻るとき
保証期間の途中で融資を完済すると、保証協会の規定により、保証料の一部が返戻されることがあります。たとえば東京信用保証協会は、最終の約定期限前に完済した場合に保証料の一部を返戻することがあるとし、未経過の期間に応じた計算例を公表しています(計算方法や返戻されない場合の条件は協会ごとに異なります)。
会計上は、返戻を受けたときに、残っている前払費用・長期前払費用を取り崩します。上の例で、2年後に完済し、前払費用の残高が36万円、返戻された保証料が20万円だったとすると、次のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 20万円/支払保証料 16万円 | 前払費用・長期前払費用 36万円 |
返戻額が前払費用の残高より少ないのは、返戻の計算が協会の規定によって行われ、残高と一致しないためです。差額の16万円は、完済した期の費用になります。
借換えの場合は、新しい保証の保証料から古い保証の返戻保証料を差し引いて精算できることもあります。この場合も、古い保証の前払費用は取り崩し、新しい保証料は新しい保証期間で按分し直します。差し引きの金額だけを記帳すると、どちらの按分も狂ってしまうので、精算書の内訳ごとに記帳してください。借換えの進め方は借換え融資で解説しています。
なお、返済条件の変更(リスケ)で保証期間が延びる場合などは、追加の保証料がかかったり、保証の内容が変わったりすることがあり、処理の判断が分かれます。保証協会から届く書類をもとに、顧問税理士と確認してください。
消費税と会計ソフトの設定
信用の保証料は、消費税の非課税取引です(消費税法基本通達6-3-1)。保証料には消費税がかからず、仕入税額控除の対象にもなりません。
会計ソフトでは、次の点を確認しておきましょう。
- 支払保証料・前払費用の税区分を「非課税仕入」(または対象外)にする。「課税仕入」のままだと、消費税の申告で仕入税額控除が過大になる
- 保証協会からの返戻保証料も、課税売上にしない
- 融資実行時の差引入金は、借入金・保証料・利息などに分けて入力する
銀行は保証料をどう見ているか
保証料は「実質の借入コスト」
借り手から見ると、保証付き融資のコストは金利だけではありません。金利が年1.5%でも、保証料率が年1.0%なら、実質のコストは年2.5%程度になります。損益計算書では、支払保証料は支払利息と並んで、営業外費用として表示するのが一般的です(どの区分にするかは、会社の会計方針と取引の実態に沿って決めます)。
銀行も、利息と保証料を合わせた金融費用が利益に対してどのくらいの重さかを見ています。経常利益や債務償還年数に効いてくるので、保証付き融資が増えてきたら、保証料を含めた実質金利で借入れの全体像を把握しておきましょう。財務内容が良くなれば、保証料率の区分が下がったり、保証のつかないプロパー融資に切り替えられたりして、コストそのものを下げることができます。
前払費用の計上が決算書を正しくする
一括で払った保証料を全額その期の費用にすると、その期の利益が小さく見え、翌期以降は逆に費用が少なく見えます。期間に応じて按分しておけば、毎期の利益が実態に近づき、銀行に説明しやすい決算書になります。
一方で、長期前払費用は、換金できる資産ではありません。銀行が実態の純資産を計算するときには、換金性のない資産として評価をゼロにする見方もあります。金額自体は小さいことが多いので過度に気にする必要はありませんが、「資産が増えた」と見せるものではない、と理解しておいてください。
保証料の補助・減額を使う
都道府県や市区町村の制度融資では、保証料の一部を自治体が補助する制度があります。補助の受け方(保証料から直接差し引かれるのか、後から補助金として受け取るのか)によって記帳の方法が変わるので、制度の案内を確認してください。制度融資の全体像は制度融資の使い方で解説しています。
実務のチェックポイント
信用保証料の処理で、決算前に確認したい点をまとめます。
| チェック項目 | 確認すること |
|---|---|
| 借入金の計上額 | 入金額ではなく、契約額で計上しているか |
| 保証料の支払方法 | 一括前払いか、分割払いか(保証協会の通知書で確認) |
| 按分の基礎 | 保証期間の開始日・終了日、按分の方法(月数・残高)を毎期同じにしているか |
| 前払費用の区分 | 翌期分は前払費用(流動)、それ以降は長期前払費用(固定)に分けているか |
| 繰上返済・借換え | 返戻保証料の精算書があるか。前払費用の残高を取り崩したか |
| 消費税の税区分 | 支払保証料・返戻保証料を非課税(または対象外)にしているか |
| 個人の場合 | 業務用の借入れの保証料だけを必要経費にしているか |
保証付き融資が複数あると、按分の計算表がないと管理しきれなくなります。融資ごとに「保証料の総額・保証期間・当期の費用・前払費用の残高」を一覧にした表を作り、決算のたびに更新しておくと、銀行に借入明細を出すときにも役立ちます。
まとめ
- 信用保証料は、お金を借りるためのコストとして経費になる。ただし一括前払いした分は、保証期間で按分する
- 一括で損金にした保証料について、前払費用に当たるとして更正処分を適法とした裁判例がある
- 決算では、翌期分を前払費用、それ以降を長期前払費用に分けて計上する
- 繰上返済・借換えで返戻保証料を受け取ったら、前払費用を取り崩し、差額を費用にする
- 信用保証料は消費税の非課税取引。会計ソフトの税区分に注意
- 銀行は利息と保証料を合わせた実質の借入コストを見ている。財務を強くして保証料率を下げる、プロパー融資に切り替える、という順番でコストを下げていく
保証付き融資の使い方や、プロパー融資への切り替えの時期は、決算書の内容次第で変わります。税理士法人クレフティでは、代表の相亰と髙橋が構築した独自の財務設計の手法(クレフティメソッド)をもとに、融資を受け続けられる決算書づくりを支援しています。初回のご相談は無料です。保証料を含めた借入れの全体像の整理からお手伝いします。
