副業・損益通算

競馬・競輪の払戻金の税金:一時所得か雑所得か、外れ馬券は経費になる?

競馬で大きな配当を当てた。WIN5が的中した。競輪で万車券が出た。うれしい一方で、「税金はどうなるの?」「外れ馬券の分は引けないの?」と気になる方は多いでしょう。

結論から言うと、競馬・競輪の払戻金は原則として一時所得で、差し引けるのは当たり馬券の購入代金だけです。外れ馬券も経費になる「雑所得」の扱いは、最高裁の判決と国税庁の通達で示された、かなり限られたケースです。

この記事の結論
  • 競馬・競輪の払戻金は、原則として一時所得(所得税基本通達34-1(2))
  • 一時所得の計算で差し引けるのは当たり馬券の購入代金だけ。外れ馬券は差し引けない。特別控除は最高50万円で、残りの2分の1が課税の対象
  • 最高裁平成27年3月10日判決(刑事事件)と平成29年12月15日判決は、長期間・多数回の継続的な購入で多額の利益を上げていた事案で、払戻金を雑所得とし、外れ馬券も必要経費と認めた
  • 国税庁は判決を受けて通達34-1に注書きを設け(平成27年)、平成29年判決の後に改正した(平成30年)。雑所得になる場合を明記し、それ以外は一時所得のまま

原則は一時所得:計算の仕方

一時所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の、一時の所得で、労務や資産の譲渡の対価としての性質を持たないものです。所得税基本通達34-1は、一時所得の例として「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)」を挙げています。

一時所得の金額は、次のように計算します(国税庁タックスアンサーNo.1490)。

一時所得の金額 = 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)
課税の対象(総所得金額に加える額)= 一時所得の金額 × 1/2

「収入を得るために支出した金額」は、その収入を得るための行為や原因に直接要した金額に限られます。馬券でいえば、払戻金が出た当たり馬券の購入代金です。その年に買った外れ馬券は、この計算では差し引けません。

計算例:ある年に、100円の馬券で払戻金200万円を受け取った(その年の一時所得はこれだけ)。

  • 一時所得の金額:200万円 − 100円 − 50万円 = 149万9,900円
  • 総所得金額に加える額:149万9,900円 × 1/2 = 74万9,950円

その年に外れ馬券を合計100万円買っていても、この計算は変わりません。

雑所得になるのは、どんな場合か

払戻金が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に当たると、一時所得ではなく雑所得になります。雑所得なら、外れ馬券を含めた購入代金を必要経費として差し引ける可能性があります。この点が争われたのが、次の2つの最高裁判決です。

判決事件事実関係判断
最高裁第三小法廷 平成27年3月10日判決(平成26年(あ)第948号、刑集69巻2号434頁)所得税法違反被告事件(大阪の事案。原審は大阪高裁)馬券を自動的に購入するソフトを使い、独自の条件設定などに基づいて、インターネットで長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、多額の利益を恒常的に上げていた払戻金は雑所得。外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金が当たり馬券の払戻金という収入に対応するとして、外れ馬券の購入代金も必要経費
最高裁第二小法廷 平成29年12月15日判決(平成28年(行ヒ)第303号)所得税更正処分等取消請求事件自動購入ソフトは使わず、情報を収集・分析して予想し、予想の確度と配当率の組合せで定めた購入パターンに従い、年間を通じてほぼ全レースで購入。6年間、1年あたり3億円〜21億円程度を購入し、毎年の回収率が100%超、利益は約1,800万円〜約2億円払戻金は雑所得。年間の収支で利益を得るには外れ馬券の購入は不可避で、外れ馬券の購入代金も必要経費

平成29年の判決は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得かどうかは、「行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断する」としています(平成27年判決を参照)。

国税庁の通達改正(平成27年・平成30年)

これらの判決を受けて、国税庁は所得税基本通達34-1に注書きを設け(平成27年の改正)、平成29年の判決の後にその内容を改めました(平成30年の改正)。現在の注書きは次のように整理しています。

  1. 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使って定めた独自の条件設定と計算式に基づき、または予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従って、偶然性の影響を減殺するために年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入するなど、年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら多数の馬券を購入し続けることにより、年間を通じての収支で多額の利益を上げ、回収率が購入行為の期間総体として100%を超えるように馬券を購入し続けてきたことが客観的に明らかな場合は、雑所得に該当する
  2. 上記以外の場合の馬券の払戻金は、一時所得に該当する
  3. 競輪の車券の払戻金なども、競馬の馬券の払戻金に準じて扱う

つまり、雑所得になるのは、長期間・多数・網羅的な購入と、毎年の多額の利益が客観的に明らかな場合です。ときどき大きく当てる、好きなレースだけ買う、という楽しみ方の払戻金は一時所得です。

項目一時所得(原則)雑所得(例外)
当てはまる場面通常の楽しみ方での的中通達34-1の注1のような継続的・網羅的な購入で、年間の収支が多額の黒字
差し引ける金額当たり馬券の購入代金のみ外れ馬券を含む購入代金(必要経費)
特別控除最高50万円なし
課税の対象一時所得の金額の2分の1雑所得の金額の全額
年間の収支が赤字のとき外れ馬券の損失は他の所得と通算できない雑所得の赤字も他の所得と損益通算できない

申告で注意したいこと

1. 払戻金から税金は天引きされない払戻金を受け取るときに所得税は源泉徴収されません。申告が必要な場合は自分で確定申告をします。

2. 会社員の20万円の判定1か所から給与を受けて年末調整を受けている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら、原則として所得税の確定申告は不要です(タックスアンサーNo.1900)。一時所得は、特別控除後の金額の2分の1で判定します(同No.1903)。ただし、医療費控除などのために確定申告をする場合は、一時所得も含めて申告します。住民税は別に申告が必要になることがあります。20万円以下の所得と申告の関係は「自分で確定申告するなら年末調整は不要?副業20万円以下でもe-Taxで申告できる?」も参考になります。

3. 記録を残すインターネット投票の購入履歴や払戻しの記録は、一定期間を過ぎると見られなくなることがあります。大きな払戻金があった年は、購入履歴と払戻しの記録を保存しておきましょう。

4. 雑所得として申告するかは慎重に「外れ馬券も引きたい」という理由だけで雑所得として申告しても、通達34-1の注1のような実態がなければ一時所得として更正されます。雑所得として申告できるかは、購入の方法・期間・回数・収支の記録をそろえたうえで、税理士に相談してください。

配信や動画で競馬を扱う方は、「競馬などをコンテンツにする配信者:馬券代は経費になる?」で論点を整理しています。

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まとめ

  • 競馬・競輪の払戻金は、原則として一時所得。差し引けるのは当たり馬券の購入代金だけで、特別控除後の2分の1が課税対象
  • 最高裁平成27年3月10日判決・平成29年12月15日判決は、長期間・多数の継続的な購入で多額の利益を上げていた事案で、雑所得とし、外れ馬券も必要経費と認めた
  • 国税庁は通達34-1(平成27年・平成30年改正)で雑所得になる場合を明記。それ以外は一時所得
  • 払戻金から税金は天引きされない。大きな払戻金があった年は、記録を残して申告の要否を確認する

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よくある質問

競馬で当たった払戻金は、いくらから確定申告が必要ですか?
払戻金は原則として一時所得です。一時所得の金額は、その年の払戻金の合計から当たり馬券の購入代金を引き、特別控除(最高50万円)を引いた金額です。会社員で年末調整を受けている人は、一時所得の金額の2分の1などの給与以外の所得の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要な場合があります。住民税の申告は別に必要になることがあるため、お住まいの市区町村で確認してください。
外れ馬券の購入代金は、経費として差し引けますか?
一時所得の場合は差し引けません。一時所得の計算で差し引けるのは、その収入を得るために直接要した金額、つまり当たり馬券の購入代金に限られます。外れ馬券も含めて必要経費になるのは、最高裁平成27年3月10日判決や平成29年12月15日判決の事案のように、長期間にわたり多数の馬券を継続的に購入し、年間を通じた収支で多額の利益を上げてきたことが客観的に明らかで、雑所得と認められる場合です。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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