ご相談の内容
使わなくなった農業用の建物(畜舎など)が長年放置され、傷んでしまったため解体するというご相談です。現在も小規模ながら農業は続けています。この解体費用を税務上の経費として計上し、確定申告できるのかを知りたいという内容です。
- 建物が現在も農業の事業用資産と認められる状態なら、解体費用は農業所得の必要経費にできる
- すでに事業用から外れていると判断される場合は家事費(個人的な支出)となり、必要経費にならない
- 解体後に敷地を売却する予定なら、譲渡費用として差し引ける場合がある
回答
事業用資産なら必要経費になる
所得税法第51条第1項では、事業用の固定資産を取り壊したり除却したりしたことによる損失を、必要経費に算入すると定めています。取り壊しにかかる費用も、この損失に含めて扱われます。
畜産などの一部門をやめていても、農業を続けていて、建物が農業の事業用資産として残っていれば、解体費用は農業所得の計算で差し引くことができます。帳簿上の未償却残高(まだ費用にしていない建物の価額)が残っていれば、それも同時に必要経費となります。
分かれ目は「維持補修」と「今後の使用予定」
ただし、長年使われず、維持補修もされずに傷んでいたことは、事業用資産かどうかの判断に影響します。
所得税基本通達2-16では、稼働を休止している資産でも、必要な維持補修を行い、いつでも稼働できる状態にあるものは減価償却資産に当たるとしています。
| 建物の状態 | 判断の方向 | 解体費用 |
|---|---|---|
| 必要な維持補修を行い、いつでも稼働できる | 事業用資産に当たる | 必要経費にできる |
| 維持管理がされておらず、今後の農業に使う予定もない | すでに事業から外れていたとみなされる | 必要経費として認められない可能性が高い(家事費) |
解体後に土地を売却する場合
解体後に敷地を売却する予定であれば、売却のための取り壊し費用は、土地の譲渡所得の計算上「譲渡費用」として差し引ける場合があります(所得税基本通達33-7、国税庁タックスアンサーNo.1440)。
農業所得が赤字になった場合
必要経費に計上できた結果として農業所得が赤字になった場合、給与所得など他の所得と損益通算(赤字と黒字の相殺)ができます。ただし白色申告では、相殺しきれなかった赤字を翌年以降に繰り越すことは原則できません(所得税法第70条)。
注意したいポイント
- 「農業を続けている」だけでは足りない:農業を続けていても、その建物が事業用資産として残っているかどうかは別に判断します。長年使っていない場合は、維持補修の状況や今後の使用予定が問われます。
- 書類を保存する:まずは解体業者の見積書・領収書を保存してください。
- 解体後の使い道を整理する:農業に使う、売却する、そのままにするなど、土地の使い道を整理しておくと判断しやすくなります。
農業に関わる費用の考え方はぬかるんだ田んぼに砂を入れた費用は経費になる?仕訳と勘定科目は?で、売却前の取り壊しについては売却前に建物を取り壊す費用の扱いでも解説しています。
まとめ
- 建物が今も農業の事業用資産と認められる状態なら、解体費用は必要経費にでき、未償却残高も同時に必要経費となる
- 維持管理がされず今後も使う予定がない場合は、家事費として必要経費にならない可能性が高い
- 解体後に売却するなら譲渡費用を検討する。見積書・領収書を保存し、土地の使い道を整理しておく
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
