ご相談の内容
親が個人事業を年の途中で廃業し、子が事業を引き継ぐケースのご相談です。子の名義の車を親の事業で使い、事業割合に応じて親の帳簿に載せていましたが、耐用年数を過ぎて簿価は1円になっています。親の側では帳簿からどう外し、子の側では何か処理が必要なのか、買い替えのときに資産に計上するだけでよいのかを知りたい、という内容でした。
- 親の側は、廃業日付で「事業主貸/車両運搬具」として簿価を外す処理で問題ない
- 子の側は買い替えまで帳簿に載せなくても大きな問題はないが、事業に使い続けるなら1円で計上しておくと分かりやすい
- いずれも親と子が生計を一にしていたことが前提
回答
子ども名義の車が親の帳簿にある理由
所得税法第56条の取扱いによるものと考えられます。生計を一にする親族(同じ家計で暮らす家族)が持つ資産を事業に使う場合、その減価償却費を事業主の経費にできる、というものです。
親と子の処理
| 親の側 | 子の側 | |
|---|---|---|
| 仕訳 | 廃業日付で 事業主貸 1円/車両運搬具 1円 | 計上する場合は 車両運搬具 1円/元入金 1円 |
| 償却費 | 償却済みのため、廃業までの分はなし | 発生しない |
| 車の経費 | 年初から廃業までの分を、事業割合で経費にできる | 事業に使う期間の分を、事業割合で経費にできる |
廃業すれば、親の事業での使用は終わります。売却ではなく、所有者である子がそのまま使い続けるだけなので、親の側に譲渡の問題は生じません。
子の側で計上する備忘価額とは、帳簿に残しておくための1円のことです。買い替えまで計上しなくても大きな問題はありませんが、引き続き事業に使うのであれば、計上しておくと後の処理が分かりやすくなります。
車の経費の分け方
年初から廃業までのガソリン代・保険料・自動車税などは、事業割合の分を親の経費にできます。たとえば事業割合が3割で、その期間の費用が合計10万円であれば、親の経費は3万円です。
子の側では、もともと自分の車なので、事業に使う期間の燃料費や保険料などを事業割合に応じて経費にできます。これは車両を資産に計上していなくても可能です。
買い替えるとき
買い替えで下取りに出す場合の扱いは、次のとおりです。
- 事業用部分の売却は、事業所得ではなく譲渡所得として扱います(所得税法第33条)。
- 生活用部分は非課税です(所得税法第9条第1項第9号)。事業割合が3割なら、残りの7割が生活用部分です。
- 下取り価格が少額であれば、譲渡所得の特別控除50万円の範囲内に収まり、課税されないことが多いと考えられます。
- 新しい車は取得価額で資産に計上し、事業割合の分を減価償却します。
注意したいポイント
- 以上は、親と子が生計を一にしていたことを前提としています。そうでなかった場合は、そもそも親の帳簿に計上できたのかという点から整理し直す必要があります。
- 事業を引き継いだ子は、自分の開業届の提出が必要です。
- 青色申告を希望する場合は、原則として開業日から2か月以内に承認申請書を提出してください。
親の事業の引き継ぎ全体は、親の個人事業を引き継いだら?無償で使う店舗・設備、売上や経費の分け方で解説しています。年の途中で廃業する場合の青色申告は、法人成りで個人事業を年の途中で廃業、青色申告と専従者給与は今年も使える?も参考にしてください。
まとめ
- 親の側は、廃業日付で「事業主貸/車両運搬具」として簿価を外せばよい
- 子の側は計上しなくても大きな問題はないが、事業に使うなら1円で計上すると分かりやすい。経費は計上の有無によらず事業割合で計上できる
- 下取りの事業用部分は譲渡所得。事業を引き継いだら開業届と青色申告の手続きも忘れずに
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
