相続・贈与

相続後に貸金庫で現金が見つかった。その現金で実家を修繕しても問題ない?

ご相談の内容

父の相続(1次相続)で母がすべての財産を相続し、遺産が基礎控除の範囲内だったため相続税の申告はしていなかった、というご家族からのご相談です。その後、遺産分割協議の際に貸金庫の現金を失念していたことが分かり、数百万円規模の現金が見つかりました。この現金を使って母名義の実家を修繕したいが、「現金なら税務署には分からない」という家族の意見と、「口座から振り込むべき」という意見で割れている、という内容でした。

結論
  • 母が相続した現金で母名義の実家を修繕すること自体は、基本的に問題ない
  • 注意すべきは「現金で払うこと」より、使い道の記録が残るかと1次相続の申告が必要になるか
  • いったん母の口座に入金してから振り込むほうが記録が残り、2次相続で説明しやすい

回答

遺産分割協議書の文言を確認する

遺産分割協議書に「後で発覚した財産は被相続人が引き継ぐ」と書かれている場合、文脈からは「相続人である母が取得する」という趣旨と思われます。ただ、文言のままでは意味が通りにくいため、念のため内容を確認しておきましょう。

1次相続の申告が必要になるか

見つかった現金を加えても、1次相続の遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数、相続税法第15条)以内であれば、申告は不要のままです。

超える場合は、期限後申告(期限を過ぎてから行う申告)を検討してください。配偶者の税額軽減(配偶者が取得した財産について相続税を軽くする特例、相続税法第19条の2)で納税額がゼロになるとしても、この特例を受けるには申告が必要です。

2次相続の税務調査で見られること

2次相続(母の相続)の税務調査では、母の財産の過去の動きが確認されることが一般的です。貸金庫の開閉記録も金融機関に残ります。現金が減っていれば、その使い道を説明できるかが問われます。

支払い方法記録の残り方
現金で直接支払う母宛ての工事請負契約書・見積書・領収書を保管すれば説明は可能
母の口座に入金してから振り込む入出金の記録が自然に残り、説明しやすい

「口座から振り込むべき」というご意見には、十分な合理性があります。

修繕ではなく増改築にあたる場合

工事が修繕ではなく増改築にあたり、その分がまだ固定資産税評価額に反映されていない場合は、家屋の評価額に工事分を加える取扱いがあります(財産評価基本通達89、国税庁質疑応答事例「増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産評価額が付されていない家屋の評価」)。

注意したいポイント

  • 工事の対象が母名義以外の財産(子の名義の建物など)であれば、母から子への贈与税の問題が生じます。
  • 契約書や領収書の宛名は、費用を負担する母にしておきましょう。
  • 「分からないから」という前提で処理するのではなく、母の財産を正当に使ったと示せる形にしておくことが、結果として2次相続での負担や家族間の揉め事を減らすことにつながります。

相続への備えの全体像は相続税対策は30代・40代から、現金で支払う場合の記録の残し方は現金払い・手渡しのリスクでも解説しています。

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まとめ

  • 相続で取得した現金を、取得した人名義の自宅の修繕に使うことは基本的に問題ない
  • 見つかった現金を加えて基礎控除を超えるなら期限後申告を検討する。配偶者の税額軽減も申告が必要
  • 2次相続に備えて、口座経由で支払い、契約書・領収書を保管しておく

この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。

よくある質問

相続した貸金庫の現金を現金のまま使うと、税務上問題になりますか?
相続人自身の財産を使うだけなので、使うこと自体は基本的に問題ありません。ただし、将来の相続の税務調査では過去の財産の動きが確認されることが一般的で、貸金庫の開閉記録も金融機関に残ります。工事の契約書・見積書・領収書を保管し、いったん口座に入金してから振り込むほうが説明しやすくなります。
相続税の申告をしなかった相続で、後から現金が見つかったらどうなりますか?
その現金を加えても遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以内なら、申告は不要のままです。超える場合は期限後申告を検討します。配偶者の税額軽減で納税額がゼロになる場合でも、この特例を受けるには申告が必要です。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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