ご相談の内容
親が営んでいた個人事業を引き継ぐにあたり、親の廃業時に残っていた商品の在庫を無償で譲り受けた、というご相談です。在庫の時価はたとえば10万円ほど。これは贈与になるのか、それとも売買(譲渡)として扱うのか。親と自分の確定申告にそれぞれどう影響するのかを知りたいという内容でした。ご相談者は消費税の免税事業者です。
- 親から無償で受け取った在庫は「贈与」になる
- 所得税では特別な扱いがあり、親は時価を売上とみなして申告し、子は時価で仕入れたものとして扱う
- 贈与税は年110万円の基礎控除以内なら申告不要
回答
親の申告:時価を売上に入れる
所得税法第40条第1項第1号では、事業用の棚卸資産(販売目的の在庫)を個人に贈与した場合、贈与時の時価相当額を総収入金額(売上)に算入すると定めています。親は廃業した年分の事業所得で、在庫の時価を雑収入などとして計上します。
ただし、在庫の取得原価は売上原価として差し引かれるため、実際に課税されるのは時価と原価の差額分です。
| 項目 | 金額(例) |
|---|---|
| 在庫の時価(売上とみなす額) | 10万円 |
| 在庫の取得原価(売上原価) | 7万円 |
| 課税される部分 | 3万円 |
なお、時価は通常の販売価額のおおむね70%以上で計上していれば認められる取扱いがあります(所得税基本通達39-2、40-2)。
子の申告:時価で仕入れたものとして扱う
所得税法第40条第2項により、贈与で取得した棚卸資産は、取得時の時価で取得したものとみなされます。在庫は時価で仕入れたものとして計上し、販売したときに売上原価として経費になります。受け取ったこと自体は、事業所得の収入にはなりません。
贈与税:年110万円以下なら申告不要
個人からの贈与なので贈与税の対象ですが、贈与税には年110万円の基礎控除(課税されない枠)があります(相続税法第21条の5、租税特別措置法第70条の2の4)。同じ年にほかの人から受けた贈与と合わせて110万円以下であれば、贈与税の申告は不要です。
「贈与」か「譲渡」かの整理
代金を払わずに受け取っているので、民法上は贈与です。ただし、所得税では上のとおり、親の側は時価で売ったのと同じように売上を計上し、子の側は時価で買ったのと同じように仕入を計上します。無償であっても、親子の帳簿のうえでは時価で在庫が移ったものとして扱う点がポイントです。
注意したいポイント
- 親が消費税の課税事業者だった場合は、廃業に伴う在庫の扱いについて、消費税の確認も必要です。
- 受け取る側が免税事業者であれば、今回の在庫の受け取りによる消費税への影響はありません。
- 「無償だから何も申告しなくてよい」と考えがちですが、親の側で売上計上が必要になる点は見落としやすいところです。引き継いだ在庫の一覧と時価の根拠(販売価格表など)を残しておきましょう。
親の事業を引き継ぐときの全体の流れは、親の個人事業を引き継いだら?無償で使う店舗・設備、売上や経費の分け方もあわせてご覧ください。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るまとめ
- 親から無償で受け取った在庫は「贈与」。所得税では親が時価を売上計上し、子は時価で仕入れた扱いになる
- 親に課税されるのは時価と原価の差額分。時価は通常の販売価額のおおむね70%以上が目安
- 贈与税は年110万円以下なら申告不要。親が課税事業者なら消費税も確認する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
