所得税・確定申告

施設に入所した妻の配偶者控除・医療費控除、夫はいくら負担すれば受けられる?

ご相談の内容

妻が介護施設に入所し、食費や医療費を含む施設の費用は、妻自身の年金口座から引き落とされている、というご相談です。夫には不動産収入と年金があり、妻を配偶者控除や医療費控除の対象にしたいと考えています。夫が妻の口座にいくらか入金すれば認められるのか、費用のどのくらいを負担すればよいのか、食費分だけの負担でもよいのかを知りたいという内容でした。

結論
  • 夫から継続的に生活費や療養費を送金していれば、施設入所中でも「生計を一にする」と認められる可能性は十分にある
  • 負担割合に法令上の決まりはなく、食費分だけの負担でも配偶者控除の判断では差し支えないと考えられる
  • ただし医療費控除は、夫が実際に負担した医療費だけが対象。妻の年金から払った分は含められない

回答

別居していても「生計を一にする」と認められる

配偶者控除や医療費控除では、「生計を一にする」(同じ財布で生活している)ことが要件になります。所得税基本通達2-47では、療養などの都合で別居していても、常に生活費や療養費などの送金が行われていれば該当すると示されています。

何割負担すればよいという基準はありません。夫婦が施設入所前から家計を一体にしていたのであれば、送金が費用の一部であっても、生計を一にしていると判断されやすいといえます。毎月定額を振り込むなど、定期的な送金を通帳で確認できる形にしておくとよいでしょう。

配偶者控除のほかの要件

生計を一にすることに加えて、次の要件も満たす必要があります。

  • 妻の合計所得金額が58万円以下であること(令和6年分までは48万円以下)
  • 夫の合計所得金額が1,000万円以下であること。不動産所得と年金の雑所得などを合計して判定します

妻が65歳以上であれば、年金収入から公的年金等控除110万円(最低保証額)を差し引いて所得を計算します(国税庁タックスアンサーNo.1191)。

医療費控除は「誰が払ったか」で決まる

医療費控除(所得税法第73条、タックスアンサーNo.1120)の対象は、自分または生計を一にする配偶者等のために、自分が支払った医療費です。妻の年金から支払われた分は、夫の医療費控除には含められません。

夫の控除にしたい場合は、医療費相当額を夫が送金する、または夫が直接支払うといった形で、負担者を明確にしておく必要があります。食費分だけを負担している場合、医療費の部分は妻の負担と見られる可能性があります。

負担のしかた配偶者控除(生計一の判断)夫の医療費控除
夫が生活費・療養費を定期的に送金認められやすい夫が負担した医療費分は対象
夫は食費分だけを送金差し支えないと考えられる医療費は妻の負担と見られる可能性
すべて妻の年金から支払い送金がなく認められにくい対象外

注意したいポイント

  • 施設の種類によって、食費・居住費が医療費控除の対象になるかが変わります(タックスアンサーNo.1127)。
  • 介護老人保健施設・介護医療院:対象
  • 特別養護老人ホーム:介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1が対象
  • 有料老人ホーム:原則として対象外
  • 施設が発行する領収書の記載内容(医療費控除の対象額の記載があるか)もあわせて確認しましょう。
  • 送金は、金額や時期が後から確認できるよう口座振込で記録を残すのが安心です。

親の医療費や保険料を家族が負担する場合の考え方は、子どもの国民健康保険料を親が払ったら年末調整で控除できる?でも解説しています。

まとめ

  • 施設入所で別居していても、定期的な送金があれば「生計を一にする」と認められ得る。負担割合の決まりはない
  • 配偶者控除は、妻の所得58万円以下・夫の所得1,000万円以下などの要件もあわせて確認する
  • 医療費控除は夫が実際に払った医療費だけが対象。施設の種類で対象範囲も変わる

この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。

よくある質問

施設に入所して別居している妻でも、配偶者控除の対象になりますか?
療養などの都合で別居していても、夫から常に生活費や療養費の送金が行われていれば「生計を一にする」とされます(所得税基本通達2-47)。何割負担すればよいという基準はなく、定期的な送金を通帳で確認できる形にしておくとよいでしょう。妻の所得要件など、ほかの要件も満たす必要があります。
妻の年金口座から引き落とされた施設の医療費を、夫の医療費控除に含められますか?
含められません。医療費控除は「自分または生計を一にする配偶者等のために自分が支払った医療費」が対象です(所得税法第73条)。夫の控除にしたい場合は、医療費相当額を夫が送金する、または夫が直接支払うなどして、負担者を明確にしておく必要があります。

※本記事は2026年10月27日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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