ご相談の内容
長年、所有するマンションの一室を賃貸しています。昨年はじめて青色申告をし、青色申告特別控除を65万円で申告しました。ところが、一室だけの貸付けでは「事業的規模」とはいえないと知りました。控除は10万円が正しかったのでしょうか。部屋数ではなく、収益や継続性があれば事業と認められるという話も聞きますが、どちらが正しいのでしょうか。
- マンション一室の貸付けは原則として事業的規模に当たらず、控除は10万円
- 5棟10室は「おおむね」の目安だが、一室で事業と認められることは実務上ほぼない
- 税務署から連絡が来る前に自分で修正申告をすれば、過少申告加算税は原則かからない
回答
65万円控除には「事業として」の貸付けが必要
不動産所得で青色申告特別控除の55万円・65万円を受けるには、不動産の貸付けが事業として行われていることが必要です(租税特別措置法第25条の2第3項)。
事業として行っているかどうかは、社会通念上「事業」と呼べる程度かどうかで判断します(所得税基本通達26-9)。その目安として、次のいずれかに当たれば事業として扱うとされています(いわゆる5棟10室基準、国税庁タックスアンサーNo.1373)。
- 貸間・アパートなどの独立した室数が、おおむね10室以上
- 独立家屋の貸付けが、おおむね5棟以上
「部屋数だけでは決まらない」は本当か
ご指摘のとおり、5棟10室はあくまで「おおむね」の目安で、部屋数だけで機械的に決まるものではありません。ただし、実質で判断する場合も、貸付けの規模や管理の手間などが考慮されます。マンション一室の貸付けが事業と認められることは、実務上ほぼないとお考えください。
なお、事業的規模でなくても青色申告そのものは有効で、10万円の控除は受けられます(同条第1項、タックスアンサーNo.2072)。
数字で見るとどれだけ違うか
例として、月額家賃10万円で年間満室、減価償却費を含む経費が年50万円の場合で比べます。
| 項目 | 65万円控除 | 10万円控除 |
|---|---|---|
| 家賃収入(10万円×12か月) | 120万円 | 120万円 |
| 経費 | 50万円 | 50万円 |
| 控除前の所得 | 70万円 | 70万円 |
| 控除後の所得 | 5万円 | 60万円 |
差額の55万円分、所得が少なく申告されていたことになります。
注意したいポイント
- 修正申告は早めに自分から:申告内容を正しく直す修正申告(国税通則法第19条)を、税務調査の通知を受ける前に自主的に提出した場合、過少申告加算税(申告不足へのペナルティ)は原則としてかかりません(国税通則法第65条第5項)
- 延滞税はかかる場合がある:不足していた所得税とあわせて、延滞税(納付の遅れに対する利息のようなもの)がかかることがあります
- 住民税・国民健康保険料も見直される:修正申告をすると、後日これらも再計算されます
- 手続きは自分でもできる:税務署で相談することもできますが、修正申告書は確定申告書等作成コーナーから作成・提出できます。今年分以降は10万円控除で申告すれば問題ありません
事業的規模の判断の詳細は不動産所得の事業的規模とは|5棟10室基準、青色申告全体のメリットは不動産所得の青色申告のメリットもご覧ください。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見るまとめ
- マンション一室の賃貸では、青色申告特別控除は原則10万円
- 5棟10室は目安だが、一室で事業的規模と認められることは実務上ほぼない
- 65万円で申告していたら、調査の通知前に自分で修正申告をすれば過少申告加算税は原則かからない
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
