ご相談の内容
10年以上前に銀行で購入した投資信託が値上がりし、評価額が1,000万円を超えたので、全部売却して同じ銀行の普通預金に入れたい、というご相談です。一度に大きな金額を移すと税務署から何か言われないか、それとも300万円ずつなど何回かに分けて移したほうがよいのか、を気にされていました。
- 売却代金を本人名義の普通預金にまとめて入金しても、それ自体で税金がかかったり問題にされたりはしない
- 税金の対象は「入金」ではなく売却益(購入額との差額)。分けて移しても扱いは変わらない
- 申告が必要かどうかは口座の種類で決まる。家族名義の口座へ移す場合は贈与税に注意
回答
課税されるのは「入金」ではなく売却益
お金を自分の口座から自分の口座へ移すこと自体には、税金はかかりません。税金の対象になるのは、投資信託を売却したことで生じた利益です。
株式投資信託の売却益は譲渡所得(資産を売って得た利益)として、給与など他の所得とは分けて課税されます。これを申告分離課税といいます(租税特別措置法第37条の11、国税庁タックスアンサーNo.1463)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税の対象 | 売却額から購入額を差し引いた利益の部分 |
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税 | 0.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
たとえば1,000万円で売却した場合でも、購入額が600万円なら、税金の計算の対象になるのは差額の400万円です。
口座の種類で手続きが変わる
- 特定口座(源泉徴収あり):銀行が売却時に税金を差し引いて納めるため、原則として確定申告は不要です(租税特別措置法第37条の11の5、タックスアンサーNo.1476)。
- 特定口座(源泉徴収なし)・一般口座:売却益についてご自身で確定申告が必要です。
口座の種類は、銀行から届く取引報告書や、口座開設時の書類で確認できます。長く保有している投資信託は、口座開設の時期によっては一般口座で管理されていることもあるため、売却前に確認しておくと安心です。
分けて入金しても意味はない
どちらの口座でも、銀行は売却の内容を「特定口座年間取引報告書」や「支払調書」(取引内容を税務署へ知らせる書類)として税務署に提出します(所得税法第225条ほか)。売却の事実は入金方法に関係なく税務署が把握していますので、300万円ずつなどに分けて移すことに意味はありません。
注意したいポイント
- 家族など他の人の名義の口座へ移す場合は、贈与(お金をあげること)とみなされ、年間110万円の基礎控除を超える部分に贈与税がかかる可能性があります(相続税法第21条の5、租税特別措置法第70条の2の4)。本人名義の口座への入金であれば、この心配はありません。
- 名義だけ家族にしてお金を管理する「名義預金」についての考え方は、親のお金を子ども名義の口座で預かると、贈与税?相続税?でも解説しています。
- 特定口座(源泉徴収あり)で申告不要にした場合でも、他の口座で出た損失と通算するためなどに、あえて申告を選ぶこともできます。売却益がふるさと納税の上限にどう影響するかは、株の売却益を源泉徴収ありの特定口座で受けた年、ふるさと納税の上限はどうなる?をご覧ください。
まとめ
- 売却代金を本人名義の口座にまとめて入金しても、税金や税務署の問題は生じない
- 課税されるのは売却益だけ。税率は合計20.315%で、売却の事実は銀行から税務署に報告されている
- 口座の種類(源泉徴収の有無)を確認し、家族名義の口座へ移す場合は贈与税に注意する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
