ご相談の内容
親が以前に取得した不動産を相続し、数年たってようやく売却できたものの、売却代金は兄弟4人で分ける予定です、というご相談です。相続してからの期間が短いので税金は利益の約40%になるのではないか、4人で分ける場合の負担はどうなるのか、特別控除などの措置は受けられないのかを知りたいという内容でした。
- 親の取得日を引き継ぐため、親の所有期間と通算して5年を超えていれば税率は約40%ではなく20.315%
- 換価分割(売却して代金を分ける遺産分割)なら、兄弟が持分に応じてそれぞれ申告する
- 特例は、相続税の取得費加算など要件に合うものを確認する。古い家屋が対象の空き家の特例は、比較的新しい建物には使えない
回答
税率は親の所有期間と通算して判定する
相続で取得した不動産は、親の取得日と取得費をそのまま引き継ぎます(所得税法第60条第1項)。親の所有期間と相続後の期間を通算し、売却した年の1月1日時点で5年を超えていれば長期譲渡所得(長く持っていた資産の売却益)です。
| 区分 | 所有期間 | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
(タックスアンサーNo.1440)
相続後の期間だけで見て約40%と考えるのは、誤解しやすい点です。
計算例
売却3,000万円、取得費500万円、売却費用100万円の例で計算すると、次のとおりです。
取得費は書類の有無で変わる
取得費は、親の実際の購入代金を売買契約書などで証明できれば使えます。ただし建物部分は減価償却相当額(使用による価値の目減り分)を差し引く必要があるため、購入代金より少なくなります。上の例は、この調整をしていない概算です。
証明できない場合は、売却代金の5%(概算取得費)となります。この例では150万円で、譲渡益は2,750万円に増えます。
兄弟で分けるときは売却前の協議内容が重要
遺産分割協議で兄弟全員が「売却して代金を分ける」と合意している場合(換価分割といいます)は、持分に応じて各人の所得となり、それぞれが申告します。
一方、1人の所有として売却し、その後に代金を兄弟へ渡す場合は、贈与税の問題が生じるおそれがあります。売却前の協議内容と登記の状況を確認してください。
適用できる可能性のある特例
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 相続税の取得費加算 | 相続税を納めた人は、その一部を取得費に加算できる(租税特別措置法第39条、タックスアンサーNo.3267)。売却期限は相続税の申告期限の翌日以後3年以内 |
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 相続人自身が住んでいた場合に使える(同法第35条) |
| 被相続人の居住用財産(空き家)の特例 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋が対象 |
注意したいポイント
- 取得費加算は期限を確認:売却の時期が、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に間に合うかを確かめましょう。
- 契約書を探す:親の売買契約書が見つからないと概算取得費となり、譲渡益が大きくなります。
- 順番を間違えない:代金の分け方は売却前の遺産分割協議で決めておくことが大切です。
税率の仕組みは不動産売却の税金、取得費加算の計算は相続税の取得費加算の特例、共有のまま持つ場合のリスクは相続で共有になった賃貸物件のリスクと解消方法で解説しています。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見るまとめ
- 相続した不動産は親の取得日を引き継ぎ、通算5年超なら税率は20.315%
- 譲渡益2,400万円なら税額は約488万円、4人で分ければ1人約122万円(換価分割の場合)
- 分け方は売却前に遺産分割協議で決め、取得費の書類と使える特例を確認する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
