日本政策金融公庫(国民生活事業)が公表する事業資金の利率が、2026年11月2日現在で引き下げられました。無担保で税務申告を2期終えている事業者向けの基準利率は年3.95〜5.35%で、10月1日現在の年4.05〜5.65%から下がっています。一方、銀行の変動金利の目安になる短期プライムレートは、三菱UFJ銀行が11月2日から2.625%に引き上げました。
同じ日に、銀行の金利は上がり、公庫の金利は下がった。この記事では、公庫の公表値で変化を確認し、なぜ逆の動きになったのか、借り手がこのタイミングで何を確認すればよいかを整理します。
- 公庫(国民生活事業)の利率は11月2日現在で引き下げ。無担保・税務申告2期終了済みの基準利率は4.05〜5.65% → 3.95〜5.35%、上限側は0.30%下がった
- 有担保の基準利率(3.05〜5.25% → 2.95〜4.95%)、マル経融資(3.05% → 2.95%)も下がった
- 銀行の変動金利(短期プライムレート連動)は上がる方向。公庫の固定金利は長期の金利の動きを反映しやすく、10月下旬の長期金利の低下が背景にあるとみられる
- 借り手は「金利が下がったから借りる」ではなく、使い道・返済期間・固定と変動の配分を先に決め、適用される利率を支店で確認する
公表された利率の変化
公庫の「金利情報」ページに掲載された、10月1日現在と11月2日現在の主な利率を並べます(いずれも年利、融資制度・返済期間などで幅がある)。
| 区分・利率名称 | 10月1日現在 | 11月2日現在 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 無担保・税務申告2期終了済み 基準利率 | 4.05〜5.65% | 3.95〜5.35% | 下限▲0.10、上限▲0.30 |
| 同 特別利率A | 3.65〜5.25% | 3.55〜4.95% | 下限▲0.10、上限▲0.30 |
| 同 特別利率C | 3.15〜4.75% | 3.05〜4.45% | 下限▲0.10、上限▲0.30 |
| 無担保・税務申告2期未了 基準利率 | 3.85〜5.45% | 3.75〜5.15% | 下限▲0.10、上限▲0.30 |
| 有担保 基準利率 | 3.05〜5.25% | 2.95〜4.95% | 下限▲0.10、上限▲0.30 |
| マル経融資(特別利率F) | 3.05% | 2.95% | ▲0.10 |
出典:日本政策金融公庫「金利情報(国民生活事業)」(令和8年11月2日現在、および同10月1日現在の掲載値)。
ポイントは、利率の幅の上限が0.30%、下限が0.10%下がったことです。公庫の利率は融資制度や返済期間、担保の有無などによって幅があり、どの水準が適用されるかで下がり方も変わります。
公庫の利率は金融情勢に応じて見直されます。今回の1回の引き下げで「公庫の金利は下がり始めた」と決めつけるのではなく、毎月見直されるものとして見ておく必要があります。
銀行の金利は上がり、公庫の金利は下がった仕組み
借り手から見ると不思議な動きですが、参照している金利が違うと考えると整理できます。
| 借入の種類 | 主に影響を受ける金利 | 直近の動き |
|---|---|---|
| 銀行の変動金利・短期の運転資金 | 短期プライムレート(日銀の政策金利の影響を受ける) | 三菱UFJ銀行は2.375% → 2.625%(11月2日から) |
| 銀行の長期の固定金利 | 長期プライムレート、市場の長期の金利 | みずほ銀行の長期プライムレートは3.40% → 3.70%(10月9日実施) |
| 公庫の融資(返済期間中は固定) | 長い期間の金利の動き(公庫は「金融情勢によって変動」と注記) | 11月2日現在で引き下げ |
| 参考:長期金利(新発10年国債利回り) | 市場で決まる | 10月23日に一時2.755%と約3か月ぶりの低水準(日本経済新聞)。11月2日は2.770% |
出典:三菱UFJ銀行「短期プライムレートの改定について」(2026年9月18日)、日本銀行「長・短プライムレート」、日本経済新聞(2026年10月24日朝刊、11月2日の市場データ)。
日銀の政策金利は9月に引き上げられ、10月30日の会合では据え置かれました(日銀10月30日の決定の解説)。短期の金利はこの政策金利に引っ張られるので、変動金利はこれからも上がる方向です。
一方、長い期間の金利は、市場が将来の金利や景気をどう見るかで動きます。10月下旬には株式市場の調整などを背景に長期金利が下がりました(長期金利と短期金利は別の動き)。公庫は引き下げの理由を示していませんが、返済期間中の金利が固定される公庫の融資は、こうした長い期間の金利の動きを反映しやすく、10月の長期金利の低下が今回の引き下げの背景にあるとみられます。
つまり、今は「短期は上がる、長期は一服」という状態です。これは、変動で借りるか、固定で借りるかの判断が、ここ数か月で最も比べやすくなっている時期だともいえます。
借り手がやること
ここからは、税理士・公認会計士として、また融資を受けて事業を続けてきた立場からの考えです。
金利が下がったというニュースを見ると、「今のうちに借りておこう」と考えたくなります。ただ、借入は金利より先に、何に使い、何年で返すかを決めるものです。そのうえで、今回の変化を次のように使うのが現実的だと考えます。
| 状況 | やること | 確認すること |
|---|---|---|
| 設備資金・長期の運転資金を予定している | 公庫と銀行の両方の見積もりを、同じ返済期間でそろえて比べる | 固定か変動か、適用される利率の時点、保証料を含めた実質の負担 |
| 公庫の追加融資を考えている | 前回の融資の返済実績と、直近の試算表をそろえる | 前回の融資からの期間、資金使途、決算の着地見込み |
| 銀行の変動金利の残高が多い | 金利が0.25〜0.5%上がった場合の利息の増加額を試算する | 次の金利見直し日、固定に切り替えた場合の金利と手数料 |
| 短期の運転資金を書き換えで回している | 書き換えのたびに金利が変わることを前提に、資金繰り表を更新する | 書き換えの時期、短期プライムレートの改定日 |
| 借入の総額が増えている | 借りる前に債務償還年数を計算し直す | 借入後の債務償還年数が10年以内に収まるか(著書のモデルの目安) |
1. 見積もりは「同じ条件」で比べる
公庫の利率は、融資制度や返済期間、担保の有無で幅があります。銀行の見積もりと比べるときは、返済期間・固定か変動か・保証料の有無をそろえないと、正しく比べられません。たとえば保証協会付きの融資なら、金利に加えて保証料がかかります(保証協会付き融資とプロパー融資の違い)。
2. 適用される利率と時点を確認する
公庫は、利率は金融情勢によって変動し、実際の借入の金利は掲載されている利率と異なる場合があると注記しています。申込みから融資の実行までには時間がかかるので、どの時点の利率が適用されるか、基準利率と特別利率のどちらの対象になるかは、申込みの段階で支店に確認しておきましょう。
3. 固定と変動の「配分」を考える
全部を固定にする、全部を変動にする、という二択ではありません。変動金利の残高が多い会社は、今回のように長期の金利が一服したタイミングで、一部を固定にして金利上昇の影響を抑える考え方もあります。逆に、固定は途中で返すときに手数料がかかる場合があるので、繰上げ返済の予定があるなら条件を確認します(借換えのメリットと注意点)。
4. 借入を増やすなら、銀行が見る数字で確認する
著書のモデルでは、債務償還年数は次の式で計算し、10年以内を健全の目安としています。
借りたお金を手元に置いておく間は、分子の「借入金 − 現預金」は変わりません。しかし、設備に使えば現預金が減り、年数は延びます。金利が下がったときこそ、借りる前に年数を計算し、次の融資に影響しないかを確かめておくことが大切です。公庫の2回目の融資のタイミングについては、公庫の追加融資の記事で詳しく解説しています。
私自身、融資が止まった経験から、「借りられるときに借りる」だけでは財務が強くならないことを学びました。大切なのは、金利の水準に左右されず、返済が回る利益と手元資金を確保しておくことです。
今後も注意して見ていきたいこと
- 公庫の12月の利率:今回の引き下げが続くのか、再び上がるのか。毎月の公表を確認する
- 長期プライムレートの11月の改定:銀行の長期の固定金利の目安。例年10日前後に主要行が発表している
- 11月10日の日銀「主な意見」と12月17〜18日の金融政策決定会合:短期の金利の方向を左右する
- 銀行の住宅ローン・事業性ローンの基準金利の見直し:短期プライムレートの引き上げが、各行の変動金利にいつ反映されるか
金利の先行きは誰にも断定できません。だからこそ、上がっても下がっても返済が回る借り方を、今のうちに確認しておくことをおすすめします。
まとめ
- 公庫(国民生活事業)の利率は2026年11月2日現在で引き下げられ、無担保・税務申告2期終了済みの基準利率は年3.95〜5.35%になった
- 上限側は0.30%、下限側は0.10%下がり、有担保やマル経融資も下がった
- 銀行の変動金利は短期プライムレートの引き上げで上がる方向。公庫の固定金利は長い期間の金利の動きを反映しやすく、10月の長期金利の低下が背景にあるとみられる
- 借り手は、使い道と返済期間を先に決め、同じ条件で見積もりを比べ、適用される利率の時点を確認する
- 借入を増やす前に、債務償還年数で次の融資への影響を確かめる
公庫と銀行のどちらで、どの条件で借りるかを一度整理しておきたい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。
