融資の申込書や金融機関との面談で、「据置期間はどうしますか?」と聞かれて迷った経験はないでしょうか。据置期間とは、融資を受けてから元金の返済を始めるまでの、利息だけを支払う期間のことです。
据置期間をつけると、当面の返済負担は軽くなります。一方で、総利息が増えたり、据置明けに返済額が一気に増えて資金繰りが苦しくなったりと、つけ方を誤ると後で困ることもあります。この記事では、融資の据置期間の基本、メリット・デメリット、何か月つけるべきかの考え方、そして銀行が据置期間をどう見ているかを整理します。
- 据置期間は元金の返済を先送りする期間。利息(保証付きなら保証料も)は払い続ける
- 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では、設備資金・運転資金とも据置期間5年以内の範囲で設定できる
- 据置をつけると手元資金は厚くなるが、総利息が増え、据置明けの返済額も大きくなる
- 長さの目安は「売上や家賃収入が安定するまでの期間」。事業計画と資金繰り表で説明できる長さにする
- 借りた後に据置を延ばすのは返済条件の変更(リスケ)。最初の契約で適切な据置期間を決めておくことが、次の融資を守る
据置期間とは:返済の「お休み」ではなく、元金の先送り
融資の返済は、借りたお金そのもの(元金)と、借りていることへの対価(利息)の2つでできています。据置期間とは、このうち元金の返済だけを一定期間止め、利息だけを支払う期間です。
たとえば「返済期間10年、うち据置期間1年」の融資なら、最初の1年は利息のみを支払い、2年目から残りの9年で元金を返していきます。据置期間は返済期間の「内数」なので、据置をつけても返済期間全体が延びるわけではありません。
よく誤解されるのが「据置期間中は何も払わなくてよい」という理解です。実際には利息は毎月発生しますし、信用保証協会の保証付き融資であれば保証料もかかります。返済予定表を受け取ったら、据置期間中の毎月の支払額と、据置明けの支払額の両方を必ず確認してください。
なお、元金の返済は経費になりません。据置期間中は利息だけを払うので損益計算書の上では差が見えにくいのですが、据置明けから資金繰りが急に苦しくなる会社が多いのはこのためです。詳しくは借入金の返済は経費にならないで解説しています。
日本政策金融公庫や銀行の据置期間の目安
据置期間の上限は、融資制度や金融機関によって異なります。公表されている代表例が、日本政策金融公庫の創業向けの融資です。
| 融資制度 | 資金使途 | 返済期間 | うち据置期間 |
|---|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 | 設備資金 | 20年以内 | 5年以内 |
| 同上 | 運転資金 | 10年以内 | 5年以内 |
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(2026年11月時点。廃業歴などがあり創業に再チャレンジする方は、運転資金の返済期間が15年以内となる取扱いもあります)
これはあくまで「上限」です。上限いっぱいの据置期間がつくとは限らず、実際の長さは事業計画や資金使途を見て、個別に決まります。公庫の創業融資の全体像は日本政策金融公庫の創業融資をご覧ください。
銀行や信用金庫のプロパー融資、信用保証協会の保証付き融資でも据置期間は設定できますが、上限や運用は金融機関・制度ごとに異なり、一律の基準は公表されていません。目安として、運転資金なら数か月〜1年程度、設備資金なら設備が稼働して売上が立つまで、という考え方が一般的です。不動産の新築のように、建築期間中は家賃収入がない場合には、竣工・入居までの期間を据置にする相談がよくあります。
据置期間をつけるメリット・デメリット
据置期間には、はっきりしたメリットとデメリットがあります。
メリット
- 創業直後や設備の立ち上げ期など、収入がまだ少ない時期の資金繰りが楽になる
- 手元資金を厚く保てるので、想定外の出費や売上の遅れに備えられる
- 売上や家賃収入が立ち上がってから返済が始まるので、返済原資と返済のタイミングが合う
デメリット
- 元金が減らない期間が続くため、支払う利息の総額が増える
- 返済期間全体が同じなら、据置明けの毎月の元金返済額が大きくなる
- 据置期間中に資金を使い切ってしまうと、据置明けに返済できなくなる
総利息がどのくらい変わるのか、単純な試算で確認してみましょう。2,000万円を返済期間10年、金利2.0%、元金均等返済で借りた場合です(保証料や金利の変動は考慮していません)。
| 項目 | 据置なし | 据置1年 |
|---|---|---|
| 元金の返済回数 | 120回 | 108回 |
| 毎月の元金返済額 | 約16.7万円 | 約18.5万円 |
| 据置期間中の毎月の支払 | なし | 利息のみ約3.3万円 |
| 支払利息の総額(概算) | 約202万円 | 約222万円 |
据置を1年つけると、総利息はおよそ20万円増え、据置明けの毎月の元金返済額も約1.8万円多くなります。この20万円を「1年間、手元資金を厚くしておくための費用」と考えて、それに見合う効果があるかで判断するのが合理的です。
据置期間は何か月つけるべきか:決め方の3つの基準
据置期間の長さは、気分や「長いほうが安心」という理由ではなく、次の3つの基準で決めます。
1. 返済原資が生まれるまでの期間設備を入れてから売上が立つまで、店舗を開いてから客数が安定するまで、建物が竣工して入居が埋まるまで。返済原資となるキャッシュフローが安定するまでの期間が、据置期間の基本的な目安です。
2. 資金繰り表で説明できること据置期間中の利息の支払と、据置明けの元金返済を含めた月次の資金繰り表を作り、据置明けにも資金が回ることを示せるかを確認します。資金繰り表の作り方は資金繰り表の作り方で解説しています。
3. 金融機関に説明できる理由があること金融機関は「なぜその据置期間が必要か」を必ず確認します。事業計画書の売上計画や工程表と、据置期間の長さがつながっていれば、説明は通りやすくなります。事業計画書の作り方は融資に通る事業計画書の書き方をご覧ください。
逆に、理由の説明できない長い据置期間を希望すると、「最初から返済に不安があるのでは」と受け取られることがあります。必要な長さだけを、根拠とともに申し出るのが基本です。
銀行は据置期間をどう見ているか
融資のご相談では、据置期間について銀行がどこを見ているかを意識しておくと、次の融資につながりやすくなります。
最初の契約で据置をつけるのは、通常の取引条件です。 事業計画に沿った据置期間は、それだけで評価が下がるものではありません。
一方、借りた後で元金の返済を止めたり、据置期間を延ばしたりするのは、返済条件の変更にあたります。条件変更を行うと、金融機関の内部で債務者区分の見直しにつながる可能性があり、その後の新規融資が難しくなる場合があります。資金繰りが本当に厳しいときに条件変更をためらう必要はありませんが、「念のため据置を延ばしてほしい」という軽い気持ちで頼むものではありません。条件変更の影響と進め方はリスケジュール(返済条件の変更)で解説しています。
決算書の見え方にも違いが出ます。貸借対照表では、借入金のうち1年以内に返済する予定の金額が流動負債(1年以内返済予定の長期借入金)に、残りが固定負債に分かれます。据置期間中は1年以内の返済額が小さいため流動比率は良く見えますが、据置明けが近づくと流動負債が一気に増え、流動比率が急に悪化したように見えることがあります。決算期と据置明けの時期の関係を把握しておき、決算説明の場で先に説明できるようにしておくと安心です。
また、著書のモデルでは、返済能力を債務償還年数=(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)で見ています。据置期間中に借入金で得た現預金をそのまま残しておけば分子は増えませんが、据置期間中に資金を使い切ってしまうと、借入金だけが残って債務償還年数が悪化します。据置期間は「使える期間」ではなく、返済原資を育てる期間と考えてください。
据置明けに資金繰りが詰まらないための準備
据置期間でいちばん多い失敗は、据置明けの返済額の増加を見落とすことです。次の点を、据置期間が終わる半年前までに確認しておきましょう。
- 返済予定表で、据置明けの毎月の返済額(元金+利息)を確認する
- 他の借入の返済と合わせて、月々の返済総額がいくらになるかを一覧にする
- 据置明けの返済額を、毎月の営業キャッシュフローでまかなえるかを資金繰り表で確認する
- まかなえない見込みなら、据置明けを待たずに早めに金融機関に相談する(追加融資、借換え、返済期間の見直しなど)
- 据置期間中に計画どおり売上・利益が出ているかを、試算表で金融機関に共有しておく
据置明けの直前に「返せません」と相談するのと、半年前に「計画より立ち上がりが遅れているので、こういう手を考えています」と相談するのとでは、金融機関の受け止め方がまったく違います。日頃から試算表を共有している会社ほど、相談の選択肢は広くなります。
クレフティでは、元地方銀行員の資金調達部長をはじめとする金融機関出身のスタッフが、融資の条件設計から返済予定表の確認、金融機関への説明資料づくりまでをお手伝いしています。据置期間をどうつけるかも、借りる前の段階でご相談いただくのが最も効果的です。
まとめ
- 据置期間は利息だけを払い、元金の返済を先送りする期間。返済期間の内数で、返済が止まるわけではない
- 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では、設備資金・運転資金とも据置期間5年以内の範囲で設定できる
- 据置をつけると資金繰りは楽になるが、総利息は増え、据置明けの返済額は大きくなる
- 長さは「返済原資が生まれるまでの期間」を基準に、資金繰り表と事業計画で説明できる長さにする
- 契約後に据置を延ばすのは条件変更(リスケ)。次の融資を守るためにも、最初の契約で適切に設定することが大切
据置期間を含めた融資の条件設計や、据置明けの資金繰りに不安がある方は、融資・資金調達のサポートをご覧ください。初回のご相談は無料です。
