取得・建築

建物の契約不適合(瑕疵)で受け取った損害賠償金・解決金の処理|代金減額は取得価額の減額、賠償金は法人は益金・個人は原則非課税、消費税と銀行の見え方

新築したばかりのアパートで雨漏りが続く、中古で買った一棟マンションの給排水管に重大な不具合が見つかった、地盤や基礎に問題があった。建物の不具合は、賃貸経営で避けたい事態の一つです。こうした場合、買主・注文者は、売主や施工会社に対して修理(追完)、代金の減額、損害賠償などを求めることになります。2020年4月施行の改正民法では、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」として整理されました。

交渉の末に修理代や解決金を受け取ったとき、そのお金をどう処理するか。実は、受け取るお金の性格によって、税務・会計・消費税の扱いがまったく変わります。この記事では、建物の契約不適合で受け取った損害賠償金・解決金の処理を、法人と個人の違い、会計上の表示、銀行からの見え方の3つの視点で整理します。

この記事の結論
  • 最初に決めるべきは、受け取るお金が「代金の減額」か「損害の賠償」か。名目ではなく、合意の実質で判断される
  • 代金の減額:建物の取得価額を減らす。消費税の課税事業者は、仕入れに係る対価の返還等として控除税額を調整する
  • 損害賠償金:法人は益金(法人税基本通達2-1-43で計上時期を判断)。個人は資産の損害に対するものは原則非課税だが、必要経費にした修理費の補てん部分と家賃の補償は収入(所得税法施行令30条・94条)
  • 損害賠償金は消費税の不課税。修理費は通常どおり課税仕入れになる
  • 決算書では修理費と受取額を対応させて表示し、銀行には一過性の損益として説明する

まず整理する:受け取るお金は何の対価か

契約不適合が見つかったとき、買主・注文者が売主・施工会社に求められるのは、主に次の4つです(民法562条〜564条)。

請求の種類内容受け取るもの
追完請求修補(修理)や代替物の引渡し売主・施工会社による修理そのもの(お金は動かないことが多い)
代金減額請求不適合の程度に応じて代金を減らす売買代金・工事代金の一部の返金、未払代金の減額
損害賠償請求不適合によって生じた損害の賠償修理費用相当額、調査費用、仮住まい・移転費用、得られなかった家賃など
契約の解除契約をなかったことにする代金の返還(物件も返す)

実務では、これらが混ざった「解決金」「和解金」という名目でまとめて支払われることがよくあります。しかし、税務上は「解決金」という名目で一括りにはできません。その中身が代金の減額なのか、修理費の賠償なのか、家賃の補償なのかで、処理が分かれるからです。

なお、新築住宅(賃貸住宅を含む)の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分については、住宅の品質確保の促進等に関する法律により、売主・請負人は引渡しから10年間、責任を負うとされています。中古物件の売買では、契約書で責任の期間や範囲が限定されていることが多いため、まず契約書の条項を確認します。

税務上の扱い:法人と個人の違い

代金の減額は「取得価額の減額」

減価償却資産の取得価額は、購入した資産であれば購入の代価に、事業の用に供するために直接要した費用を加えた額です(法人税法施行令54条1項1号、所得税法施行令126条1項1号)。代金が減額されれば、購入の代価そのものが小さくなるので、建物の取得価額を減らすのが基本の考え方です。法人・個人とも同じです。

すでに減価償却を始めている場合は、減額が確定した時点で帳簿価額を減らし、以後の償却費を調整する処理が考えられます。減額の時期、過去の償却費をどう扱うかは事案によって判断が分かれるところなので、顧問税理士と相談して決めます。土地と建物を一括で購入していて、減額が建物部分に対応するのか土地部分に対応するのかも、合意書で明らかにしておきます。

損害賠償金:法人は益金、計上時期は通達で判断

法人が受け取る損害賠償金は、名目にかかわらず益金です。計上時期について、法人税基本通達2-1-43は、他の者から支払を受ける損害賠償金は、支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金とし、実際に支払を受けた日の属する事業年度に益金算入している場合はこれを認めるとしています。損害による損失の額は、損害が発生した事業年度の損金とすることができます(法人税基本通達 第7款 その他の収益等)。

修理にかかった費用は、元の状態に戻すものであれば修繕費、性能を高めるものであれば資本的支出です。区分の考え方は修繕費と資本的支出の判定事例で整理しています。

損害賠償金:個人は原則非課税、ただし例外がある

個人の場合、資産の損害に基因して受ける損害賠償金は、原則として非課税です(所得税法9条1項18号、所得税法施行令30条2号)。ただし、次の2つは非課税になりません。

  • 必要経費を補てんする部分:所得税法施行令30条は、必要経費に算入される金額を補てんするための金額を非課税から除いています。修理費を不動産所得の必要経費にした場合、その修理費の賠償として受け取った金額は、不動産所得の総収入金額に入ります
  • 家賃の補償:不動産所得を生ずべき業務の全部または一部の休止などにより、収益の補償として受け取るものは、不動産所得の総収入金額に入ります(所得税法施行令94条1項2号)。修理期間中に貸せなかった家賃の補償がこれに当たります
受け取るお金法人個人
代金の減額取得価額を減額取得価額を減額
修理費(修繕費として経費にしたもの)の賠償益金総収入金額(必要経費の補てん)
建物の価値の減少そのものに対する賠償益金原則非課税
調査費用・弁護士費用の賠償益金経費にした費用の補てん部分は総収入金額
得られなかった家賃の補償益金総収入金額(収益の補償)

入居者の過失による損傷で受け取る保険金・損害賠償金も、同じ条文の考え方で整理できます。詳しくは入居者の過失による損傷の修繕と保険金・損害賠償金の処理をご覧ください。

消費税:代金の減額と損害賠償金で扱いが違う

損害賠償金は不課税、修理費は課税仕入れ

国税庁は、心身または資産に加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金は、資産の譲渡等の対価に当たらないため、原則として消費税の課税の対象にならないとしています(消費税法基本通達5-2-5、タックスアンサーNo.6157)。また、事業者が自ら修理した場合の修理費用は課税仕入れになり、その修理費用について加害者から損害賠償金を受け取っても課税関係は生じないとしています(質疑応答事例「損害を被った場合の修理の費用」)。

代金の減額は「仕入れに係る対価の返還等」

一方、売買代金や工事代金の減額として返金を受けた場合は、損害賠償金ではなく値引きに当たります。課税仕入れについて値引きなどを受けたときは、仕入れに係る対価の返還等として、その金額に係る消費税額を控除する仕入税額から差し引きます(消費税法32条、タックスアンサーNo.6363)。

賃貸物件は、住宅の貸付けが非課税のため、建物の取得時に仕入税額控除を受けていないケースが多いでしょう。その場合でも、店舗・事務所の貸付けがある物件、課税売上割合で按分している事業者、高額特定資産や調整対象固定資産の規定がかかる物件では、代金の減額が控除税額や調整計算に影響することがあります。消費税の課税事業者であれば、受け取ったお金が代金の減額か賠償金かを必ず確認してください。

公表裁決事例:支払った側の和解金でも「何の対価か」で結論が分かれた

建物の契約不適合で受け取った賠償金そのものを判断した公表裁決は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。参考になるのは、資産の取得にからむ紛争で支払った和解金の扱いを判断した、国税不服審判所の次の2つの裁決です(いずれも国税不服審判所の公表裁決事例要旨で確認)。

裁決事案判断
昭和47年12月25日裁決(裁決事例集No.5・23頁)代金の支払を終えた資産について、売買契約の無効を主張する売主との長年の訴訟を清算するために支払った和解金資産を完全な支配下に置くための代償であり、資産の取得価額に算入する
昭和52年3月31日裁決(裁決事例集No.13・14頁)土地の所有権の帰属をめぐる訴訟を終わらせ、所有権を確認させるために支払った和解金所有権移転登記が可能になり資産の価値が確保されるため、土地の取得価額に算入する

一方、同じ審判所の「損害賠償金」の要旨には、売買契約に瑕疵なく成立した後に第三者から所有権について異議が出され、営業上の支障を早く解消するために支払った和解金を、偶発的に生じた損害金として損金と認めた昭和50年2月27日裁決(裁決事例集No.9・27頁)が掲載されています(公表裁決事例要旨「損害賠償金」)。

これらは支払った側の事例で、受け取った側の処理を直接示すものではありません。ただ、「和解金」という同じ名目でも、資産の取得そのものに結びつく支払いか、偶発的な損害の補てんかで結論が分かれるという点は、受け取る側にもそのまま当てはまります。合意書で名目と内訳を明確にしておくことが、後の税務調査でも説明の土台になります。

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会計上の扱いと決算書の表示

税務上の処理と、決算書にどう表示するかは別の問題です。表示は、企業会計の基準、つまり一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って判断します。会社法431条は株式会社の会計を一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとし、法人税法22条4項も、収益・費用の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するとしています。

代金の減額

固定資産の取得価額は、購入代価から値引きや割戻しを控除した額とするのが一般的な考え方です。代金の減額は、建物(または土地)の帳簿価額の減少として処理し、損益計算書の収益には計上しません。

損害賠償金と修理費

損害賠償金は、本業の売上(家賃収入)ではないため、通常は営業外収益(受取補償金など)として表示します。金額が大きく臨時的なものであれば、特別利益とすることも考えられます。修理費も、通常の修繕であれば販売費及び一般管理費、臨時かつ多額のものは特別損失となる場合があります。

ここで注意したいのは、どの区分にできるかは取引の実態次第だということです。損失は特別損失に、賠償金は営業外収益に、と都合よく分けるのではなく、修理費と賠償金が同じ事故に対応しているなら、両方を同じ性格の区分に表示するのが自然です。特別損失として表示できるケースの考え方は、大規模修繕と特別損失で解説しています。判断に迷う場合は、顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

決算日時点で交渉や訴訟が続いていて、賠償額が確定していない場合は、受け取れる見込みの金額を先に収益に計上することはしません。法人税基本通達2-1-43の考え方とも整合します。

銀行からの見え方

銀行は、決算書の数字を「経常的な稼ぐ力」と「一過性の損益」に分けて見ます。契約不適合のトラブルは、次のような形で銀行の評価に影響します。

項目代金の減額損害賠償金(修理費と相殺)
総資産・純資産建物の帳簿価額が減る。返金を借入の返済に充てれば負債も減る修理費と賠償金が見合えば、ほぼ影響なし
減価償却費以後の償却費が減り、経常利益がやや増える資本的支出があれば償却費が増える
経常利益影響は小さい期をまたぐと、ある期は損失、次の期は利益に振れる
債務償還年数返済に充てれば改善一過性の損益として除いて評価されることが多い

とくに注意したいのは、修理した期と賠償金を受け取った期がずれる場合です。修理費だけが先に計上されると、その期の利益が大きく落ち込み、格付けが一時的に下がるおそれがあります。決算の説明の際には、不具合の内容、修理の状況、賠償の交渉状況と見込みを、合意書や見積書を添えて説明しておくと、一過性の損失として理解してもらいやすくなります。

代表の相亰の著書では、銀行格付けを129点満点で採点するモデルを示し、正常先の目安を32点以上としています。一過性の損益は、銀行内部で調整して評価されることもありますが、説明がなければ数字のまま判断されることもあります。不動産賃貸業の格付けで確認しておきたい項目は、不動産会社の銀行格付けチェックリストにまとめています。

また、賃料収入が修理期間中に落ち込んだ場合は、レントロール(賃料の一覧)と入居率の推移についても、原因が建物の不具合であり、修理後に回復する見込みであることを説明します。

実務のチェックポイント

確認することポイント
合意書の名目と内訳「代金の減額」「修理費用の賠償」「調査費用」「家賃の補償」など、何に対する支払いかを分けて記載する
土地と建物の区分代金の減額が建物部分か土地部分かを明記する
確定の時期合意書の締結日、判決・和解の成立日を記録し、法人は益金の計上時期を判断する
修理の内容修繕費か資本的支出かを、見積書・工事内容から判定する
消費税代金の減額は仕入れに係る対価の返還等、損害賠償金は不課税。課税事業者は特に注意
個人の申告必要経費にした修理費の補てん部分と、家賃の補償は総収入金額に入れる
銀行への説明一過性の損益であること、交渉・修理の状況を資料で説明する
契約書の保存売買契約書・請負契約書の契約不適合責任の条項、やり取りの記録を保存する

まとめ

  • 契約不適合で受け取るお金は、「代金の減額」か「損害の賠償」かで処理が変わる。名目ではなく合意の実質で判断される
  • 代金の減額は、法人・個人とも建物の取得価額の減額。消費税の課税事業者は、仕入れに係る対価の返還等として控除税額を調整する
  • 損害賠償金は、法人は益金(計上時期は法人税基本通達2-1-43)。個人は資産の損害に対するものは原則非課税だが、必要経費にした修理費の補てん部分と家賃の補償は総収入金額に入る
  • 損害賠償金は消費税の不課税、修理費は課税仕入れ
  • 公表裁決では、支払った側の和解金でも、資産の取得に結びつくか偶発的な損害かで取得価額算入と損金に結論が分かれた。合意書で内訳を明確にしておくことが大切
  • 決算書では修理費と賠償金を対応させて表示し、銀行には一過性の損益として説明する

建物の不具合は、修理だけでなく、税務・会計・銀行対応まで一体で考える必要があります。税理士法人クレフティでは、代表の相亰と髙橋が構築した独自の財務設計の手法(クレフティメソッド)をもとに、不動産投資家・不動産事業者の決算書づくりと金融機関との折衝をサポートしています。物件の取得から決算まで、不動産投資家向けの支援もご覧ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

中古アパートの購入後に雨漏りが見つかり、売主から100万円を受け取りました。どう処理しますか?
まず、そのお金が「売買代金の減額」なのか「損害の賠償(修理代など)」なのかを合意書で確認します。代金の減額であれば、建物の取得価額を減らす処理になり、消費税の課税事業者であれば仕入れに係る対価の返還等として扱います。修理代の賠償であれば、法人は益金に計上し、修理費は修繕費または資本的支出として処理します。個人は資産の損害に対する賠償金は原則非課税ですが、必要経費にした修理費を補てんする部分は総収入金額に入ります。
損害賠償金に消費税はかかりますか?
国税庁は、損害賠償金は心身または資産に加えられた損害の発生に伴い受けるもので、資産の譲渡等の対価に当たらないため、原則として消費税の課税対象外(不課税)としています。一方、売買代金や工事代金の減額として受け取る場合は、損害賠償金ではなく値引きであり、課税仕入れについての対価の返還等として、控除する消費税額を調整する必要があります。名目ではなく実質で判断されます。
賠償金を受け取った年と、修理をした年がずれる場合はどうなりますか?
法人の場合、法人税基本通達2-1-43により、損害賠償金は支払を受けるべきことが確定した事業年度(または実際に受け取った事業年度)の益金とされ、修理費は修理をした事業年度の損金になります。年度がずれると、ある期は損失、次の期は利益という形で決算書が動きます。銀行には、一過性の損益であることと、賠償の交渉状況を説明しておくと誤解を防げます。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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