日本経済新聞(2026年10月30日朝刊)が、自民党の日本成長戦略本部が10月29日の会合で、非上場株式の相続税評価に関する緊急決議をまとめたと報じました。国税庁が検討する見直し案を「容認できない」とし、「現行案を検討の前提とせず白地から議論を行うべきだ」と提起しています。
10月22日の会合で異論が相次いだ流れを受けたもので(非上場株の相続評価の見直しに自民党から異論)、11月から始まる党の税制調査会の議論を前に、見直し案の白紙撤回を狙う動きとみられています。この記事では、決議の中身と今後の見通しを整理し、オーナー経営者が年末までに準備しておくことを解説します。
- 自民党の日本成長戦略本部は、国税庁の見直し案を「容認できない」とし、白地から議論すべきとする緊急決議をまとめた。成長志向型の相続税のあり方を総合的かつ抜本的に議論すべきだとも提案(日本経済新聞)
- 事業承継税制の特例措置とは切り分けて検討すべきだとし、事業承継を加速させる観点から適切な対応を求めた
- 11月から党の税制調査会で議論が始まり、年末の2027年度税制改正大綱で扱いが決まる。国税庁案が撤回されたわけではない
- オーナー経営者は、現行ルールでの株価の把握と、事業承継税制の特例を使うかどうかの判断(特例承継計画の提出は2027年9月30日まで)を進めておきたい
報道で示された内容
| 項目 | 報道で示された内容 |
|---|---|
| 決議の主体と日付 | 自民党の日本成長戦略本部、10月29日の会合で緊急決議 |
| 国税庁案への評価 | 「容認できない」。議論の俎上に残る限り、企業は税負担が大幅に増えるのではという懸念を払拭できない。将来の課税を心配して中小企業の投資意欲が減退することを警戒 |
| 議論の進め方 | 現行案を検討の前提とせず、白地から議論を行うべき。成長志向型の相続税のあり方そのものについて、総合的かつ抜本的に議論・検討を行うべき |
| 事業承継税制 | 2027年度税制改正であわせて検討が進む特例措置とは切り分けて検討すべき。事業承継を加速させる観点から適切な対応を求める |
| 今後 | 本部長の岸田文雄元首相が、党の税制調査会長に決議の内容を伝える。11月には党の税制調査会で議論が始まる |
| 国税庁案 | 8月に、純資産と数年分の収益を基準に算定する新たなルール案を示した。会計検査院が、今の制度は税負担の公平性や実態とのかい離の点で問題があると指摘したことを踏まえたもの |
| 他党の反応 | 日本維新の会、国民民主党などの野党からも批判 |
出典:日本経済新聞「非上場株の相続評価、自民決議『白地から議論を』 国税庁案認めず」(2026年10月30日朝刊)。
これまでの流れ
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年11月 | 会計検査院が、今の評価方法では評価方式の間でかい離があるなどと指摘 |
| 2026年4月〜 | 国税庁が有識者会議を開催 |
| 2026年8〜9月 | 国税庁が、純資産と収益力で評価する新ルール案と試算を示す |
| 2026年10月22日 | 自民党の会合で異論が相次ぎ、「いったん凍結すべき」との意見も |
| 2026年10月29日 | 自民党の日本成長戦略本部が「白地から議論を」と緊急決議 |
| 2026年11月〜 | 党の税制調査会で議論が始まる予定 |
| 2026年12月 | 2027年度税制改正大綱 |
国税庁案の中身と、これまでの議論の詳しい経緯は、非上場株式の評価見直しの最新動向で解説しています。
決議が意味すること
ここからは、公認会計士・税理士として、事業承継のご相談を受けてきた立場からの考えです。
今回の決議は、与党の中で「国税庁案をそのまま進める」可能性がかなり小さくなったことを示しています。一方で、会計検査院が指摘した「評価方式の間のかい離」や「税負担の公平性」という問題そのものは残っています。決議が「成長志向型の相続税のあり方そのもの」を抜本的に議論すべきだとしていることからも、評価方法の見直しが完全になくなるとは限らず、形を変えて議論が続く可能性があると考えておくべきでしょう。
| 想定される展開 | オーナーへの影響 |
|---|---|
| 国税庁案は見送り、当面は現行ルールが続く | 現行ルールで株価を把握し、承継を計画どおり進めればよい。ただし行き過ぎた評価引き下げ策には、評価通達6項による否認のリスクが残る |
| 別の形で評価方法を見直す(時期を遅らせる、経過措置をつけるなど) | 新しい案の中身と開始時期によって、株式を移す時期の判断が変わる |
| 相続税のあり方全体を見直す | 事業用資産の課税の軽減など、オーナーに有利な見直しになる可能性もある。一方で議論には時間がかかる |
また、決議が事業承継税制を評価の見直しと「切り分けて」検討すべきだとしている点も重要です。事業承継税制については、政府税調の専門家会合で「過度な優遇」との厳しい意見も出ています(事業承継税制に政府税調で厳しい意見)。評価方法の議論とは別に、特例措置の延長・見直しがどうなるかを見ていく必要があります。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るオーナー経営者が年末までに準備しておくこと
- 現行ルールで自社株の評価額を把握する:類似業種比準価額・純資産価額などを計算し、数期分の推移を見ておく(非上場株式の相続税評価の基本)
- 事業承継税制の特例を使うかどうかを判断する:特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、特例は2027年12月31日までの贈与・相続が対象(事業承継税制の特例の期限と今やるべきこと)
- 複数の案を用意する:評価方法が変わらない場合、変わる場合、事業承継税制が延長される場合、終わる場合のそれぞれで、株式を移す時期と方法の案を用意しておく
- 株主構成を整える:議決権の分布を把握し、分散した株を集めておく。評価や税制の結論にかかわらず必要な準備です(実質株主とは?議決権の重さを把握する)
- 行き過ぎた対策をしない:評価額を下げるためだけの取引は、否認されるリスクがある(総則6項と株式評価)
今後も注意して見ていきたいこと
- 11月の党の税制調査会の議論:国税庁案の扱いと、代わりの案が出るか
- 年末の2027年度税制改正大綱:評価方法の見直し、事業承継税制の特例の扱い
- 相続税のあり方の議論:事業用資産への課税の考え方が見直されるか
まとめ
- 自民党の日本成長戦略本部は、国税庁の非上場株式の評価見直し案を「容認できない」とし、白地から議論すべきだとする緊急決議をまとめた
- 事業承継税制の特例措置とは切り分けて検討し、事業承継を加速させる対応を求めた
- 11月から党の税制調査会で議論が始まり、年末の税制改正大綱で扱いが決まる。国税庁案が撤回されたわけではない
- オーナーは、現行ルールでの株価の把握と、事業承継税制の特例を使うかどうかの判断を進め、結論に合わせて動けるよう複数の案を用意しておきたい
自社株の評価や事業承継税制の活用、株式を移す時期を一度確認したい方は、お気軽にご相談ください。
