制度と最新動向

非上場株の相続評価見直し、財務相が「有識者会議の議論は一旦停止」と国会で表明|国税庁案を前提とせず与党税調で白地から。オーナー経営者が年末までに見ておくこと

日本経済新聞(2026年11月4日)が、片山さつき財務相が同日の衆院財務金融委員会で、非上場株式の相続税評価の見直しについて「有識者会議の議論は一旦停止する」と表明したと報じました。与党の税制調査会で、国税庁の案を前提とすることなく白地で議論してもらうとも述べたとされています。

10月29日に自民党の日本成長戦略本部が「白地から議論を」と緊急決議をまとめたのに続き(自民党が「国税庁案は容認できない」と緊急決議)、政府側も国税庁の有識者会議での検討を止める姿勢を示した形です。この記事では、答弁の中身とこれまでの流れを整理し、まだ決まっていないこと、オーナー経営者が年末までに見ておくことを解説します。

この記事の結論
  • 片山財務相は11月4日の衆院財務金融委員会で、非上場株の相続税評価の見直しについて国税庁の有識者会議の議論を一旦停止し、与党税調で国税庁案を前提とせず白地で議論してもらうと表明した(日本経済新聞)
  • 同時に、会計検査院の指摘などには「一定の対応は必要」とし、有識者会議の議論をもとに見直しの方向性が決まっていることは全くないと強調した
  • 国税庁案が正式に撤回されたわけではなく、評価方法の見直しそのものが議論から消えたわけでもない。年末の2027年度税制改正大綱の扱いが焦点
  • オーナー経営者は、現行ルールでの株価の把握と、事業承継税制の特例を使うかの判断(特例承継計画は2027年9月30日まで)を進め、年末の結論に合わせて動ける準備をしておきたい

報道で示された内容

項目報道で示された内容
日付・場所2026年11月4日、衆議院財務金融委員会
発言者片山さつき財務相(自民党の金子容三氏の質問への答弁)
有識者会議「有識者会議の議論は一旦停止する」
今後の議論の場自民党など与党の税制調査会で、国税庁の案を前提とせず白地で議論してもらう
見直しの必要性会計検査院の指摘などには一定の対応が必要
方向性有識者会議の議論をもとに、現時点で見直しの方向性が決まっていることはない
国税庁の案4月から有識者会議で議論し、企業の保有資産や収益力を重視した新たな案を示していた
懸念の声収益力の高い企業では相続税の負担が増すとして、中小企業の経営者らが懸念。自民党内にも反対論
首相の答弁高市早苗首相は10月7日の衆院本会議で「ゼロベースで検討を進める」と表明していた

出典:日本経済新聞「非上場株の相続評価見直し、片山財務相『有識者会議の議論は一旦停止』」(2026年11月4日)。

これまでの流れ

時期出来事
2024年11月会計検査院が、今の評価方法では評価方式の間でかい離があるなどと指摘
2026年4月〜国税庁が有識者会議で見直しを議論
2026年8〜9月国税庁が、純資産と収益力で評価する新しい案と試算を示す。経済産業省・日本商工会議所が反対・慎重論
2026年10月7日首相が衆院本会議で「ゼロベースで検討」
2026年10月22日自民党の会合で異論が相次ぐ(自民党から異論、「凍結」論も)
2026年10月29日自民党の日本成長戦略本部が「白地から議論を」と緊急決議
2026年11月4日財務相が「有識者会議の議論は一旦停止」と表明
2026年12月2027年度税制改正大綱

国税庁案の中身(純資産と残余利益で評価する方式)と、経済産業省の意見書などの詳しい経緯は、非上場株式の評価見直しの最新動向で解説しています。

「一旦停止」で変わったこと、変わっていないこと

今回の答弁で、議論の進め方ははっきり変わりました。一方で、変わっていないこともあります。分けて整理します。

変わったこと変わっていないこと
国税庁の有識者会議での検討は止まる国税庁案が正式に撤回されたとは報じられていない
議論の場は与党の税制調査会に移る会計検査院の指摘(評価方式の間のかい離など)は残っている
国税庁案を前提とせず、白地から議論する財務相は「一定の対応は必要」と述べている
政府・与党の双方が、国税庁案をそのまま進めない姿勢を示した現時点の自社株の評価は、今の財産評価基本通達で行う

「白地から」というのは、国税庁案をたたき台にせず、ゼロから考え直すという意味です。ただし、財務相が見直しへの「一定の対応」の必要性を認めている以上、評価方法の見直しが二度と出てこない、とまでは言えません。時期を遅らせる、別の算式を考える、相続税のあり方全体の中で議論する、といった形で検討が続く可能性は残っています。

ここからは、公認会計士・税理士としての考察

ここからは、公認会計士・税理士として、事業承継と自社株の評価のご相談を受けてきた立場からの考えです。

年末の大綱で「結論が出ない」可能性も考えておく

白地から議論するとなると、年末までの1か月余りで新しい評価方法の中身まで決めるのは簡単ではありません。2027年度の大綱では、「引き続き検討する」といった書き方にとどまる可能性もあります。その場合、評価方法の不確実さは来年以降も続くことになります。

一方で、事業承継税制の特例措置は2027年12月31日までの贈与・相続が対象で、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日です。こちらは期限が決まっています。「評価の議論が落ち着くまで待つ」ことと、「特例の期限に間に合わせる」ことが両立しない場面が出てくる点に注意が必要です。

想定される年末の結論オーナーへの影響と対応
評価見直しは当面行わない現行ルールで計画どおり承継を進める。行き過ぎた評価引き下げ策には総則6項の否認リスクが残る
評価見直しは「引き続き検討」不確実さが続く。特例の期限から逆算し、現行ルールで動ける部分は進める
新しい方向性(時期・経過措置など)が示される中身と開始時期を見て、株を移す時期を見直す
事業承継税制の特例の延長・見直し延長されれば選択肢が広がる。見直しの中身によっては要件を再確認

銀行は「承継の計画があるか」を見ている

自社株の評価は税金の話に見えますが、銀行との取引にも関わります。オーナーの高齢化が進んでいる会社では、銀行は融資の審査や期中の管理の中で、後継者は誰か、株式をどう移すか、相続税の納税資金をどう用意するかを気にします。評価方法の議論が止まっている今こそ、承継の計画を言葉にして説明できるようにしておくと、銀行との対話もしやすくなります(事業承継と銀行との関係)。

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オーナー経営者が年末までに見ておくこと

  1. 現行ルールで自社株の評価額を計算しておく:類似業種比準価額・純資産価額を数期分出し、利益や純資産が増えたときにどう動くかを把握する(非上場株式の相続税評価の基本)
  2. 事業承継税制の特例を使うかを決める:特例承継計画の提出期限(2027年9月30日)から逆算して、検討の時間を確保する(事業承継税制の特例の期限と今やるべきこと)
  3. 株を移す時期の案を複数用意する:評価が変わらない場合、変わる場合、特例が延長される場合、終わる場合のそれぞれで案をつくる(事業承継のタイミング)
  4. 株主構成と議決権を整理する:分散した株の集約や種類株式の検討は、評価や税制の結論にかかわらず必要な準備
  5. 評価を下げるためだけの取引をしない:実態の伴わない対策は否認のリスクがある(総則6項と株式評価)

今後も注意して見ていきたいこと

  • 与党税制調査会の議論:非上場株式の評価がどの程度取り上げられるか、代わりの考え方が示されるか
  • 2027年度税制改正大綱の書きぶり:評価見直しの扱いと、事業承継税制の特例の延長・見直し
  • 国税庁・有識者会議の今後:議論の再開の有無と、会計検査院の指摘への「一定の対応」が何を指すか

まとめ

  • 片山財務相は11月4日、非上場株の相続税評価の見直しについて、国税庁の有識者会議の議論を一旦停止し、与党税調で国税庁案を前提とせず白地で議論してもらうと表明したと報じられた
  • 一方で、会計検査院の指摘などには一定の対応が必要とし、見直しの方向性は決まっていないと強調した。評価方法の見直しが完全になくなったわけではない
  • 年末の大綱で結論が出ず、不確実さが続く可能性もある。事業承継税制の特例には2027年の期限がある
  • オーナーは、現行ルールでの株価の把握と特例を使うかの判断を進め、年末の結論に合わせて動けるよう複数の案を用意しておきたい

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よくある質問

国税庁の非上場株式の評価見直し案は、なくなったのですか?
なくなったとは言い切れません。財務相は国税庁の有識者会議の議論を一旦停止し、与党の税制調査会で国税庁案を前提とせず白地で議論してもらうと述べたと報じられています。一方で、会計検査院の指摘などには一定の対応が必要とも述べており、評価方法の見直しそのものが議論から消えたわけではありません。
評価方法は、いつ、どこで決まるのですか?
議論の場は与党の税制調査会に移り、年末にまとまる2027年度の税制改正大綱でどう扱われるかが焦点です。ただし、白地から議論するとされたため、年末に具体的な結論が出るのか、検討の継続にとどまるのかもまだわかりません。
今、自社株の贈与や事業承継を進めてもよいですか?
評価の見直しは確定しておらず、現時点で使えるのは今のルールです。現行ルールで株価を計算し、事業承継税制の特例(特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、贈与・相続の期限は2027年12月31日)を使うかどうかを判断したうえで、年末の大綱を見て最終的に決める、という進め方が考えられます。焦って株を動かすより、複数の案を用意しておくことをおすすめします。

※本記事は2026年11月5日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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