売却・相続

不動産のセール・アンド・リースバックの税務と会計|売買か金融取引か(法人税法64条の2)、消費税、決算書と銀行の見え方、裁決事例

「本社ビルを売って借入金を返したい。ただ、引っ越しはしたくない」「ホテルの建物を投資家に売り、運営は自社で続けたい」。こうした場面で検討されるのがセール・アンド・リースバックです。所有している不動産を売却し、買主からその不動産を借りて使い続ける取引で、手元資金の確保や、貸借対照表を軽くする手段として使われます。

ところが、セール・アンド・リースバックは、契約の組み方によっては税務上「売買はなかった」とされ、受け取った代金が借入金として扱われることがあります。この記事では、税務上の扱い(法人と個人の違いを含む)、消費税、会計上の扱いと表示、銀行からの見え方、そして国税不服審判所の公表裁決事例を、不動産事業者向けに整理します。

この記事の結論
  • セール・アンド・リースバックは、税務上は原則として通常の売買と賃貸借。売却時に譲渡損益を計上する
  • ただし、賃貸借が中途解約不能・フルペイアウトの「リース取引」に当たり、取引全体が実質的に金銭の貸借と認められると、売買はなかったものとされ、代金は借入金になる(法人税法64条の2第2項、所得税法67条の2第2項)
  • 土地の賃貸借は、無償譲渡の条件がある場合などを除きリース取引の範囲外。建物と土地で扱いが分かれ得る
  • 銀行から見ると、自己資本比率は上がりやすいが、償却前利益は減りやすい。長期の家賃負担も見られる
  • 国税不服審判所は、店舗の建物附属設備のセール・アンド・リースバックを金融取引と認定した事例を公表している

セール・アンド・リースバックとは|不動産事業者が使う場面

セール・アンド・リースバックは、不動産の売買契約と賃貸借契約を同時に結び、売主がそのまま借主として使い続ける取引です。不動産事業者や事業会社では、次のような場面で検討されます。

  • 自社ビル・本社・倉庫を売却して借入金を返済し、財務体質を改善したい
  • ホテル・店舗・介護施設などの建物を投資家に売却し、運営は自社で続けたい(所有と運営の分離)
  • 次の物件の取得資金や、事業の運転資金を確保したい

なお、個人が自宅を売却して住み続ける「住宅のリースバック」については、国土交通省が2026年(令和8年)10月1日施行の「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」を公表し、宅地建物取引業者の説明のあり方を示しています。この記事では、事業用の不動産を前提に解説します。

所有と運営の分離という観点は、ホテルは賃借で運営するか、所有して運営するかもあわせてご覧ください。

税務上の扱い|原則は売買、例外は「金銭の貸借」

原則:通常の売買と賃貸借

セール・アンド・リースバックであっても、税務上は原則として、売買契約のとおり資産を譲渡し、その後は賃貸借契約のとおり賃料を支払う取引として扱います。売主は売却時に譲渡損益を計上し、その後に支払う賃料は、適正な金額である限り損金(個人は必要経費)になります。

例外:リース取引に当たり、実質的に金銭の貸借と認められる場合

法人税法64条の2第2項は、資産を売却し、その資産を「リース取引」で借り受ける一連の取引が、実質的に金銭の貸借であると認められるときは、その売買はなかったものとし、買主から売主への金銭の貸付けがあったものとすると定めています。個人についても、所得税法67条の2第2項に同様の定めがあります。

ここでいう「リース取引」とは、国税庁の説明(タックスアンサーNo.5702)によると、次の2つを満たす資産の賃貸借です。

  1. 中途解約が禁止されているか、中途解約するときに未経過期間のリース料のおおむね全部(原則として90%以上)を支払うこと
  2. 借主が資産の経済的利益を実質的に受け、使用に伴う費用を実質的に負担すること(解約できない期間のリース料の合計が、資産の取得価額のおおむね90%を超える場合は、これに当たるとされる=フルペイアウト)

そのうえで、「実質的に金銭の貸借」に当たるかどうかは、法人税基本通達12の5-2-1が、取引当事者の意図、その資産の内容等から、その資産を担保とする金融取引を行うことを目的とするものかどうかで判定するとしています。

土地は原則としてリース取引の範囲外

土地の賃貸借は、契約終了時に無償や名目的な対価で土地を譲り受ける条件があるものなどを除き、法人税法上のリース取引の範囲から外されています(法人税法施行令131条の2)。不動産のセール・アンド・リースバックでは、建物(建物附属設備を含む)部分と土地部分で、税務上の扱いが分かれる可能性がある点に注意が必要です。

売買とされる場合と、金融取引とされる場合の違い

項目通常の売買とされる場合実質的に金銭の貸借とされる場合
受け取った代金譲渡収入。譲渡損益を計上借入金(法人税基本通達12の5-2-2)
建物の減価償却売却後は売主の資産ではないため、償却しない売買がなかったものとされるため、引き続き売主が償却
支払う賃料支払賃料として損金・必要経費借入金の元本返済と利息に区分し、利息部分が損金・必要経費
元本と利息の区分―通常の金融取引に準じて区分。元本返済額が均等に含まれるとする処理も認められる

法人と個人の違い

項目法人個人
金融取引とみなす規定法人税法64条の2第2項所得税法67条の2第2項
売買とされた場合の譲渡益他の所得と合算して法人税土地・建物の譲渡所得として分離課税(所有期間5年超は長期で所得税・住民税等あわせて20.315%、5年以下は短期で39.63%)
売買とされた場合の譲渡損損金に算入でき、他の所得と通算できる土地・建物の譲渡損失は、原則として他の所得と損益通算できない
売却後の賃料損金(事業に使う部分)事業所得・不動産所得の必要経費(事業に使う部分)

個人の譲渡所得の基本は不動産売却の税金で解説しています。

関係者間のリースバックは「価格」と「賃料」も見られる

オーナー個人が所有する物件を同族会社に売り、会社から借りる(またはその逆)といった関係者間のリースバックでは、金融取引かどうかに加えて、売買価格と賃料が時価に照らして適正かが問われます。低い価格での売買や、相場から外れた賃料は、寄附金や受贈益、役員給与などの問題につながります。関連当事者との取引、同族会社と役員の間の家賃の適正額もあわせて確認してください。

消費税の扱い

通常の売買とされる場合、建物の譲渡は課税売上げ、土地の譲渡は非課税売上げです。土地を含む大きな売却があると、その課税期間の課税売上割合が大きく下がり、仕入税額控除が減ることがあります(土地の売却と課税売上割合)。売却後に支払う賃料は、事業用の建物であれば課税仕入れになります。

一方、取引全体が実質的に金銭の貸借とされる場合は、資産の譲渡がなかったものとして扱われます。後で紹介する平成14年の裁決事例でも、原処分庁は消費税等相当額を含めて授受された金額をもとに貸付金・返済額・利息の額を算定し、審判所はその計算を相当と認めています。法人税だけでなく、消費税の申告にも影響する点に注意が必要です。

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会計上の扱いと決算書の表示

税務の処理と会計の表示は別物

決算書は、税法ではなく、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って作ります。会社法431条は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うことを求め、法人税法22条4項も、収益や費用の額は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算するとしています。税務上どう扱われるかと、決算書でどう表示するかは、分けて考える必要があります(税務と会計の違い)。

中小企業とリース会計基準を適用する会社

中小企業の会計に関する指針や要領に沿って決算書を作る会社では、セール・アンド・リースバックは通常、売却(固定資産売却益・売却損)と、その後の賃貸借(支払賃料)として処理されるのが一般的です。

リース会計基準を適用する会社では、扱いが変わります。現行の基準では、リースバックがファイナンス・リースに当たる場合、売却損益を繰り延べて、リース資産の減価償却に合わせて計上する考え方がとられています。また、2024年9月に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用、早期適用可)では、セール・アンド・リースバックの取扱いが見直され、資産の譲渡が売却に当たらない場合などには、金融取引として処理する考え方が示されています。上場準備中の会社や、親会社がリース会計基準を適用している会社は、契約前に監査法人と処理を確認しておきましょう。

売却益はどの区分に表示されるか

事業に使っていた固定資産の売却益は、通常は特別利益(固定資産売却益)に表示され、経常利益には含まれません。著書では「収益は上に、費用は下に」というPL(損益計算書)の考え方を紹介していますが、これは表示区分を実態に沿って正しく判断しようという意味です。販売用不動産として保有していた物件の売却なら売上高、事業用の固定資産の売却なら特別利益というように、どの区分にできるかは取引の実態次第で、企業会計の基準に沿って判断する必要があります。迷うときは顧問税理士・会計の専門家と検討してください(売却損の表示区分)。

銀行からの見え方

セール・アンド・リースバックは、決算書の数字を大きく動かします。銀行がどこを見るかを、売却前後で比べてみます。

指標売却後の変化(通常の売買として処理した場合)銀行の見方
総資産・借入金売却代金で借入金を返済すれば、両方が減る自己資本比率は上がりやすい
純資産売却益の分だけ増える(売却損なら減る)含み益の実現として評価される一方、一過性の利益と見られる
経常利益売却益は特別利益なので入らない。支払利息が減り、支払賃料が増える賃料が利息を上回れば、経常利益は減る
償却前利益(EBITDA)減価償却費と支払利息がなくなり、賃料に置き換わる返済原資となるキャッシュフローは減りやすい
債務償還年数分子の借入金は減るが、分母の償却前利益も減る改善するかどうかは、返済額と賃料の水準次第
担保売却した物件は担保に使えなくなる次の融資で差し入れる担保が減る

著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」で計算し、10年以内を健全の目安としています。セール・アンド・リースバックで借入金が減っても、分母の償却前利益が賃料の分だけ減るため、必ずしも債務償還年数が短くなるとは限りません。減価償却費と銀行の見方の関係は減価償却費と償却前利益で解説しています。

また、銀行は、長期で解約できない賃料の支払いを実質的な借入金に近い負担として見ることがあります。税務上も会計上も金融取引とされた場合は、そもそも借入金として貸借対照表に残ります。「借入金を減らすための売却」のつもりが、銀行の評価ではあまり変わらなかった、ということにならないよう、売却後の資金繰りと返済計画を事前に試算して説明することが大切です。

公表裁決事例:セール・アンド・リースバックを金融取引と認定

建物附属設備のセール&リースバック(平成14年7月9日裁決)

  • 出典:国税不服審判所 平成14年7月9日裁決(裁決事例集No.64 324頁)
  • 事案:金融業・リース業を営む法人が、小売業の会社から、営業中の69店舗の建物附属設備を購入し、同時に同社に賃貸した。賃貸借期間は20年で、原則として中途解約は禁止、期間満了時には借主が鑑定価格で買い取る条件などが付いていた
  • 争点:この取引が税務上のリース取引に当たり、かつ実質的に金銭の貸借(金融取引)と認められるか
  • 判断:20年間の賃料の合計が、資産の購入価額に資金調達の利息や費用を加えた額とほぼ一致し、取得価額等のおおむね全部を支払うものであることなどからフルペイアウトに当たり、中途解約禁止条項もあることから、リース取引に当たるとした。そのうえで、保有資産のオフバランス化と資金調達を目的とした中古資産のセール&リースバックであることなどから、経済的実質は、売買代金の形での金銭の貸付けと、賃料の形での元利金の返済であり、金融取引と認められるとした
  • 実務への示唆:賃料の総額が売買代金と金利で組み立てられている、期間満了時に買い戻す条件がある、といった契約は、金融取引と判断される要素になる
  • 一次情報:国税不服審判所 公表裁決事例(平14.7.9裁決、裁決事例集No.64 324頁)

リース物件のリースバック(平成18年10月19日裁決)

  • 出典:国税不服審判所 平成18年10月19日裁決(裁決事例集No.72 346頁)
  • 判断の要旨:リース会社などから、顧客にリースしている物件をいったん買い取り、直ちにその会社にリースする取引について、買主がリースを行っているといえる実態は認められず、購入代金として支払った金銭がリース料として回収されている実態があるとして、実質的に金銭の貸借と認めた(当時の法人税法施行令136条の3第2項の適用事例)
  • 一次情報:国税不服審判所 公表裁決事例要旨(法人税法関係・リース取引)

いずれも、買主(貸主)側の課税が争われた事例で、不動産そのものではなく設備などの事例です。また、平成20年の改正前の規定のもとでの判断です。ただし、「取引全体の経済的実質が、資産を担保にした資金調達かどうか」という判断の枠組みは、現行の法人税法64条の2第2項と法人税基本通達12の5-2-1にも引き継がれています。これらの裁決で、すべてのリースバックが金融取引とされるわけではなく、契約条件と取引の目的によって結論が分かれる点に注意してください。

実務のチェックポイント

確認すること見るポイント
賃貸借の条件中途解約できるか。解約時の違約金が残りの賃料のおおむね全部に当たらないか
賃料の総額解約できない期間の賃料合計が、建物部分の売買代金のおおむね90%を超えないか
買戻しの条件期間満了時の買戻し・再売買予約・優先買取権の有無と価格の決め方
建物と土地の区分売買代金を建物と土地に合理的に区分しているか(消費税・償却に影響)
売買価格と賃料の水準時価・相場賃料と比べて適正か。関係者間なら鑑定や査定の根拠を残す
消費税土地の譲渡で課税売上割合がどう変わるか。金融取引とされた場合の影響
会計処理中小企業の会計か、リース会計基準の適用会社か。監査法人との事前確認
銀行への説明売却後の償却前利益、債務償還年数、担保の変化、賃料負担を含む資金繰り表

まとめ

  • セール・アンド・リースバックは、税務上は原則として売買と賃貸借。売却時に譲渡損益を計上する
  • 中途解約不能・フルペイアウトのリース取引で、実質的に金銭の貸借と認められると、売買はなかったものとされ、代金は借入金になる(法人税法64条の2第2項、所得税法67条の2第2項)
  • 土地は原則としてリース取引の範囲外。建物と土地で扱いが分かれ得る
  • 消費税では、売買なら土地の譲渡で課税売上割合が下がる。金融取引とされれば譲渡がなかったものになる
  • 会計は、中小企業の会計か、リース会計基準の適用会社かで処理が変わる。売却益の表示区分は取引の実態に沿って判断する
  • 銀行は、自己資本比率の改善だけでなく、償却前利益の減少や長期の賃料負担も見る

セール・アンド・リースバックは、契約書の条件ひとつで税務・会計・銀行の評価が変わる取引です。契約を結ぶ前の段階で、売却後の資金繰りと決算書の見え方を試算しておくことをおすすめします。クレフティでは、金融機関出身のコンサルタントと税理士が、不動産の売却・保有の判断と融資の両面からご支援しています。初回のご相談は無料です。不動産投資家・不動産事業者向けの支援からお問い合わせください。

よくある質問

自社ビルをセール・アンド・リースバックすると、売却益にはすぐに税金がかかりますか?
通常の売買として扱われる場合は、引渡しの日を含む事業年度(個人は原則として引渡しの年)に譲渡損益を計上し、法人は他の所得と合算して課税されます。一方、賃貸借が中途解約不能でフルペイアウトの条件を満たし、取引全体が実質的に金銭の貸借と認められる場合は、売買はなかったものとされ、受け取った代金は借入金として扱われます。この場合は譲渡益も計上しません。
土地も一緒にリースバックしたら、土地も借入金扱いになりますか?
土地の賃貸借は、契約終了時に無償や名目的な対価で土地を譲り受ける条件があるような場合などを除き、法人税法上のリース取引の範囲から外されています。そのため、建物部分と土地部分で税務上の扱いが分かれることがあります。契約条件によって結論が変わるため、契約書の案の段階で税理士に確認するのが安全です。
リースバックで借入金を返済すると、銀行の評価は上がりますか?
借入金と総資産が減るため、自己資本比率は上がりやすくなります。一方で、売却益は通常は特別利益で経常利益には入らず、売却後は家賃の支払いが減価償却費と支払利息に置き換わるため、償却前利益は減ることが多くなります。長期の家賃負担を実質的な借入金に近いものとして見る銀行もあるため、売却後の収支計画とあわせて説明することが大切です。

※本記事は2026年10月27日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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