民泊・旅館業・用途転用

城が地域観光の核に、金沢城の石川が寄与度トップ|訪日客の周遊は旅館業と路線価に何をもたらすか。評価額の上昇と相続への備え

日本経済新聞(2026年10月31日朝刊)が、城が地域観光の核になってきていると報じました。2025年度の全国主要217城の入城者数は計3,996万人と過去最多で、訪日客の盛り上がりが国内客を呼ぶ好循環も生まれているとのことです。

城そのものの話に見えますが、人が来て泊まり、周辺を歩けば、宿泊業と土地の値段に影響が出ます。実際に、令和8年分の路線価では観光地の上昇が目立ちました。この記事では、報道の内容と公表データを確認し、旅館業の経営者や不動産投資家が考えておきたいことを整理します。

この記事の結論
  • 2025年度の城の入城者数は計3,996万人で過去最多。観光来訪者に占める入城者の割合は石川県が13.8%でトップ、熊本県8.6%、沖縄県・京都府6.7%と続く(日本経済新聞)
  • 令和8年分の路線価は全国平均2.9%上昇と、平成22年分以後で最大の上昇幅。金沢駅前は9.8%上昇するなど、観光客の集まる地域で上昇が目立つ一方、輪島市の朝市通りは8.6%下落
  • 足元の外国人宿泊は前年を下回っており、三大都市圏より地方部の減少幅が小さい。「点」から「面」への周遊が地方の宿泊業のカギになる
  • 地価が上がると、売上が増えなくても相続税評価と自社株評価は上がる。旅館経営者は投資の計画と同時に、相続の試算もしておきたい

報道で示された内容

項目報道で示された内容
入城者数2025年度の全国主要217城の入城者数は計3,996万人で過去最多(攻城団合同会社の調査)
観光寄与度(来城率)石川県13.8%、熊本県8.6%、沖縄県6.7%、京都府6.7%。全国平均は2.2%(日本経済新聞が算出)
石川県来訪者1,700万人に対し入城者236万人(4城)。2020年に金沢城を中心とする周遊ルートを整備。文化施設の周遊パスは2025年度に前年度比57%増の約2万2,000枚
訪日客の効果城を訪れた訪日客のSNSでの発信が、若い国内客を呼ぶ(金沢市観光協会の担当者)
熊本県地震からの復旧の工程を観光資源に。市の観光施設「城彩苑」は1年間の来場者200万人、物販・飲食の売上高は約20億円。2026年7月の地震で再び被害を受けたが、10月は18日までの来城者数が前年同期比12%減まで回復
課題恩恵が一部に偏る。石川県の観光入り込み客の56.8%を金沢エリアが占める。広域へ誘導する取り組みが必要

出典:日本経済新聞「城が地域観光の核に 寄与度は石川トップ、インバウンドが国内客呼ぶ」(2026年10月31日朝刊)。

路線価で見ると、人が集まる場所の地価が上がっている

令和8年分の路線価(2026年7月公表)では、標準宅地の全国平均の変動率が2.9%の上昇で、計算方法の変更があった平成22年分以後で最大の上昇幅となりました。城のある街や観光地の数字を見てみます。

地点・地域令和8年分の動き
全国平均(標準宅地)2.9%上昇(前年は2.7%上昇)
東京都(標準宅地の平均)9.4%上昇
沖縄県(標準宅地の平均)6.6%上昇
金沢市 金沢駅東広場通り(最高路線価)1㎡あたり112万円、9.8%上昇
京都市 下京区 四条通1㎡あたり911万円、9.5%上昇
京都市 東山区 四条通1㎡あたり456万円、16.3%上昇
輪島市 朝市通り8.6%下落

出典:金沢国税局「令和8年分 路線価」、大阪国税局「令和8年分 路線価」、全国平均と都道府県の数字は国税庁の公表を伝える税務専門誌の記事による。路線価の上昇のすべてが観光によるものではありません。

城の周辺が上がったと言い切れるデータではありませんが、人が集まる場所の評価が上がり、災害を受けた場所は下がるという差は、はっきり出ています。

足元の宿泊は、地方のほうが底堅い

一方、宿泊の統計は強い数字ばかりではありません。

2026年7月(第2次速報)延べ宿泊者数前年同月比
外国人 全体1,331万人泊6.5%減
外国人 三大都市圏868万人泊9.2%減
外国人 地方部464万人泊0.9%減
日本人4,066万人泊4.1%減

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」をまとめたやまとごころ.jp。2026年1月分から調査の方法が一部変わっており、前年比にはその影響が含まれる可能性があります。8月の外国人延べ宿泊者数(第1次速報)も10.3%減でした。

外国人の宿泊は前年を下回っていますが、地方部の減り方は三大都市圏より小さく、地方の比率はわずかに上がっています。ここからは税理士・公認会計士としての考えですが、訪日客の数が増え続けることを前提にした投資計画は危うい一方、周遊の仕組みがある地域には、まだ伸びしろがあるという見方ができると思います。

旅館業が受ける影響

変化旅館・ホテルへの影響確認しておきたいこと
周遊ルートの整備滞在が長くなれば、連泊や周辺の飲食につながる自社が周遊の動線の上にあるか
客層の変化訪日客に加え、SNSを見た若い国内客が増える価格帯、予約経路、部屋の構成が合っているか
単価の上昇改装の原資になる(客室単価の上昇は投資余力になるか)修繕費と資本的支出の区分
宿泊税の導入手続きと価格設定に影響(宿泊税と入湯税)地域ごとの導入状況
免税制度の見直し周辺の小売の手続きが変わる(免税制度の見直しと訪日客)土産物の販売があるか
オーバーツーリズム集中すれば規制や住民との摩擦が起きる民泊や簡易宿所の新設の規制
地震などの災害来訪者が一気に減る(熊本城は再開後の来城者数が前年同期比44%減)手元資金、保険、返済猶予の相談先

城の周辺は、景観の規制や高さの制限で建て替えや増築に制約がかかることもあります。物件を取得する前に、自治体の条例を確認しておきましょう。旅館業か民泊かの選び方は住宅宿泊事業法と旅館業法の違いと税務で、業界全体の動きはホテル・旅館業の動向と経営のポイントで解説しています。

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路線価の上昇は、旅館の相続の問題でもある

見落とされやすいのが相続です。旅館は敷地が広いことが多く、路線価が上がると評価額が大きく動きます。

地価の上昇が相続に届くまで
観光客の増加・周遊
↓
路線価の上昇
↓
個人で敷地を保有相続税評価額が上がる
会社で敷地を保有自社株の評価が上がる
↓
売上が増えていなくても、納税資金が必要になる
現金が増えないのに税金だけが増える、という点に注意
  • 個人の敷地:要件を満たせば、小規模宅地等の特例で、特定事業用宅地等として400㎡まで80%減額できる場合があります(国税庁タックスアンサーNo.4124)。ただし、後継者が事業を続け、申告期限まで持ち続けることなどが要件です
  • 会社の敷地:純資産価額が上がり、自社株の評価が上がる方向に働きます。土地が資産の大部分を占めると、土地保有特定会社の判定にも注意が必要です
  • 広い敷地の相続税評価:路線価の計算の基本は相続税で不動産はいくらに評価される?をご覧ください
  • 後継者への渡し方:事業承継税制の期限も確認しておきましょう

銀行は地価より返済の力を見る

路線価が上がれば担保の評価にはプラスですが、宿泊業の融資で銀行が見るのは、客室の稼働率と単価から見た返済の力です。旅館は設備投資が大きく、返済期間が建物の耐用年数と合っていないと、資金繰りが苦しくなります(ホテル・旅館用途の建物の耐用年数)。

融資の相談では、次の数字をそろえておくとよいでしょう。

  1. 月ごとの稼働率、客室単価、1室あたりの売上
  2. 客層の内訳(国内・訪日、個人・団体)と予約経路
  3. 改装の投資額と、それで単価がどれだけ上がる計画か
  4. 訪日客が減った場合、稼働率が落ちた場合の返済の試算

まとめ

  • 城の入城者数は過去最多で、石川県の観光寄与度が13.8%でトップ。周遊で「点」から「面」へ広げることが課題
  • 令和8年分の路線価は全国平均2.9%上昇。金沢駅前は9.8%上昇の一方、輪島市の朝市通りは8.6%下落
  • 足元の外国人宿泊は前年割れだが、地方部の減り方は小さい。訪日客の増加だけを前提にした投資計画は避ける
  • 地価の上昇は、売上が増えなくても相続税評価と自社株評価を押し上げる。投資の計画と相続の試算をセットで考える

旅館・ホテルの投資計画や融資の組み立て、敷地を含めた相続の試算を一度確認したい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

観光客が増えて路線価が上がると、旅館の経営者にどんな影響がありますか?
敷地を個人で持っていれば相続税評価額が上がり、会社で持っていれば自社株の評価が上がる方向に働きます。売上が増えていなくても評価だけが上がることがあるので、相続税の納税資金が足りるかを試算しておくことが大切です。固定資産税の負担が増える場合もあります。
旅館の敷地に小規模宅地等の特例は使えますか?
被相続人の事業に使っていた宅地を、親族が事業を引き継いで申告期限まで持ち続けるなどの要件を満たせば、特定事業用宅地等として400㎡まで80%減額できる場合があります。会社が運営している場合は別の区分の要件になります。要件は細かいため、事前に確認が必要です。
路線価が上がれば、銀行の融資は受けやすくなりますか?
担保の評価にはプラスに働くことがありますが、宿泊業の融資で銀行が重視するのは、稼働率と客室単価から見た返済の力です。地価が上がっていても、借入の返済がキャッシュフローでまかなえなければ融資は伸びません。予約の実績や単価の推移を数字で説明できるようにしておきましょう。

※本記事は2026年10月31日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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