ご相談の内容
家族で経営する会社の役員の方から、代表者への退職金についてのご相談です。退職金を生前に支給するか、亡くなった後に死亡退職金として遺族へ支払うかで悩んでいます。生前の支給は所得税等が低いと聞く一方で、死亡退職金には500万円×法定相続人の数の非課税枠があると聞きました。税金面では一般的にどちらが有利かを知りたいという内容でした。
- 税金面だけで比べれば、亡くなった後に死亡退職金として支給するほうが一般的に有利
- たとえば法定相続人2人なら非課税枠は1,000万円で、1,000万円の死亡退職金は全額が枠に収まる
- 会社の損金算入には限度があり、相続税の負担は財産全体で変わるため、全体を試算して判断する
回答
死亡退職金の場合
死亡後3年以内に支給が確定した退職金はみなし相続財産(相続財産とみなされるもの)として相続税の対象となり(相続税法第3条第1項第2号)、相続人が受け取る分は500万円×法定相続人の数まで非課税です(同法第12条第1項第6号)。相続税の対象となるため、所得税はかかりません(所得税基本通達9-17)。
法定相続人が2人なら、非課税枠は500万円×2人=1,000万円です。1,000万円の死亡退職金であれば、全額が非課税枠に収まります。
なお、支給の確定が死亡後3年を過ぎると、受け取った遺族の一時所得となります。
生前に支給する場合
生前に支給すると、退職所得として所得税・住民税がかかります(所得税法第30条)。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 年数 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年) |
役員としての勤続年数が5年以下の場合は、1/2の適用がありません。
さらに、手取り額は本人の財産として残るため、相続時に改めて相続税の対象となります。
比較すると
| 項目 | 死亡退職金 | 生前の退職金 |
|---|---|---|
| かかる税金 | 相続税(所得税はかからない) | 所得税・住民税 |
| 差し引けるもの | 500万円×法定相続人の数 | 退職所得控除額(さらに原則1/2) |
| 受け取った後 | ― | 手取りが相続財産として残る |
注意したいポイント
- 非課税枠が使えない人がいる:非課税枠は相続人が受け取った分にのみ適用され、相続を放棄した人や相続人以外の人が受け取った分には適用されません。
- 損金にできる金額には限度がある:会社側で損金(経費)にできるのは、不相当に高額でない部分に限られます(法人税法第34条第2項、同法施行令第70条第2号)。金額は最終報酬月額・在任年数・功績倍率などを踏まえて決めます。
- 定款または株主総会決議が必要:金額は、定款または株主総会決議で定める必要があります(会社法第361条)。
- 生前の支給は実質的な退職が前提:役員を退任するなど、実質的に退職したといえることが前提です。
- 弔慰金の取扱い:別途、弔慰金として一定額(業務外の死亡なら死亡時の普通給与の6か月分)までは相続税がかからない取扱いがあります(相続税法基本通達3-20)。
死亡退職金の詳しい税務は死亡退職金・弔慰金の税務、生前の退職の判断は「実質的に退職した」と認められる実務、金額の決め方は退職金の「最終月額報酬」のQ&Aで解説しています。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るまとめ
- 税金面だけなら死亡退職金が一般的に有利。死亡後3年以内に支給を確定させ、相続人が受け取ることが前提
- 法定相続人2人なら非課税枠は1,000万円。生前の支給は所得税等がかかり、手取りも相続財産に残る
- 損金の限度額と決議の手続きを確認し、他の財産も含めて試算したうえで判断する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
