外部への売却(M&A)

あおぞら銀行とJAICが事業承継3号ファンド、最大120億円|後継者不在の中小企業が「ファンドに売る」とき、オーナーが知っておきたいことと地銀の役割

あおぞら銀行と日本アジア投資(JAIC)が共同設立したファンド運営会社AJキャピタルが、2026年11月2日、事業承継ファンド「サクセッション3号投資事業有限責任組合」を設立しました。設立時のファンド総額は31億円で、大手銀行や地域金融機関から出資を募り、最大120億円規模を目指すと報じられています(日本経済新聞、11月3日朝刊)。

後継者がいない中小企業にとって、ファンドへの売却は「廃業か、親族への承継か」以外の選択肢の一つです。この記事では、発表の内容を整理し、ファンドに売る場合にオーナーが知っておきたいことをまとめます。

この記事の結論
  • AJキャピタルが事業承継ファンド「サクセッション3号」を設立。設立時の総額は31.01億円(あおぞら銀行と日本アジア投資が出資)で、最大120億円規模を目指す
  • 1号・2号で累計18社に投資し、うち11社の売却(Exit)を終えた。企業価値10億円未満を中心に、30億円程度までを対象にする
  • 地域金融機関と連携し、案件の発掘や買収資金の融資で協力する。中小企業の後継者不在率は51.2%(帝国データバンク、2025年)
  • ファンドへの売却は、独立性を保ちやすい一方、数年後にもう一度株主が変わる。価格だけでなく、経営の関わり方、個人保証、従業員、次の売却先の考え方を確認したい

発表と報道の内容

項目内容
ファンドサクセッション3号投資事業有限責任組合。2026年11月2日設立
運営AJキャピタル(あおぞら銀行と日本アジア投資が50%ずつ出資)
総額3,101百万円(設立時点)。出資者はあおぞら銀行、日本アジア投資。地域金融機関などに出資を募り拡大を目指す。最大120億円規模(日本経済新聞)
投資対象国内の事業承継の問題を抱える中小企業。企業価値10億円未満を中心に、30億円程度までの企業も対象
これまでの実績2017年6月設立の1号、2022年8月設立の2号を通じて累計18社に投資し、うち11社がExit
地域金融機関との連携案件の発掘や買収資金の融資などで連携。地銀は事業承継に早い段階から関わることで、承継後も取引先との関係を維持しやすくなる
背景中小企業の後継者不在率は51.2%(帝国データバンク、2025年の調査)

出典:日本アジア投資「事業承継ファンド『サクセッション3号投資事業有限責任組合』の設立について」(2026年11月2日)、日本経済新聞「あおぞら銀・JAIC、事業承継3号ファンド設立 最大120億円」(2026年11月3日朝刊)。

ファンドに売るとどうなるか

事業承継ファンドへの売却の流れ(一般的なイメージ)
オーナー株式を譲渡
↓ 株式の買取り
事業承継ファンド出資者:銀行・地域金融機関など
↓ 数年かけて経営体制を整備
社内管理の体制づくり後継の経営者の確保
↓ 売却(Exit)
事業会社
別のファンド
経営陣など
発表資料によると、AJキャピタルのファンドでは、地域の有力企業などの引受け先に株式を譲渡して事業を承継させるとしている

事業会社への売却との違いは、事業会社に売るか、ファンドに売るかで詳しく比べています。ファンドに売る場合、最終的な引受け先が決まるのは数年後という点が一番の違いです。

オーナーが確認しておきたいこと

ここからは、税理士・公認会計士としての考えです。特定のファンドの条件を評価するものではありません。

確認すること具体的に見る点
自分の役割売却後も経営に残るのか、何年残るのか。報酬と権限(売却後のオーナーの役割)
一部を残すか株式の一部を持ち続けて、次の売却のときに一緒に売る形もある
個人保証借入の連帯保証をいつ、どう外すのか(後継の経営者と個人保証)
買収資金の借入ファンドが借入で買収する場合、会社がその返済を負う形になることがある(LBOの規模と銀行)
従業員雇用と待遇の維持、社内の管理体制の変化をどう伝えるか
次の売却先どんな相手に売る想定か。地域の会社か、同業の大手か

税金:株式譲渡と退職金

個人のオーナーが株式を譲渡すると、一般に所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%の課税です(国税庁タックスアンサーNo.1463)。売却の前に役員退職金を支給すると、会社の価値が下がる分だけ株価は下がりますが、退職金は退職所得として有利に課税されるため、手取りの合計が増える場合があります。どちらが有利かは金額によって変わるので、必ず試算してください(株式の譲渡と金融所得の課税)。

売却で得たお金が多額になる場合は、相続の対策も一緒に考えておく必要があります(売却後の人生と資産の考え方)。

株主構成の整理から、承継・売却まで一緒に考えます

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地域金融機関の役割が大きくなる

今回のファンドは、地域金融機関から出資を募り、案件の発掘や買収資金の融資で連携するとされています。地元の銀行にとっては、取引先が後継者不在で廃業すれば取引そのものがなくなります。ファンドを通じて承継に関われば、承継後も取引を続けられます。

オーナーの立場から見ると、普段付き合っている銀行が、承継の相談の入口になりうるということです。後継者がいないことを銀行に話すのは不安かもしれませんが、早めに相談することで選択肢が増えます。その前に、決算書を整え、社長がいなくても回る体制に近づけておくと、売却の条件も良くなりやすくなります(事業承継税制の期限と準備)。

まとめ

  • AJキャピタルが事業承継ファンド「サクセッション3号」を設立。設立時31億円、最大120億円規模を目指す
  • 企業価値10億円未満を中心に30億円程度まで。地域金融機関と案件の発掘や融資で連携する
  • ファンドへの売却は独立性を保ちやすい一方、数年後に再び株主が変わる
  • 自分の役割、個人保証、買収資金の借入、従業員、次の売却先を確認し、株式譲渡と退職金の手取りを試算しておく

後継者がいない会社の将来や、売却の進め方を考え始めた方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

事業承継ファンドに売ると、会社はどうなりますか?
ファンドが株式を買い取り、経営の支援をしながら企業価値を高めます。そして一定の期間のあと、事業会社や別のファンドなどに株式を売却して投資を回収します。今回のファンドでは、1号・2号で投資した18社のうち11社が、すでにこの売却(Exit)を終えています。売却後にもう一度、株主が変わる前提で考える必要があります。
事業会社に売るのとファンドに売るのでは、何が違いますか?
事業会社は自社の事業と組み合わせることを目的に買うため、長く持ち続けるのが一般的です。ファンドは一定期間で売却することを前提に、経営体制の整備や業績の安定化に取り組みます。会社の独立性を保ちやすい一方、数年後に新たな株主を迎えることになります。どちらが合うかは、会社の状況とオーナーの希望によります。
ファンドに売るとき、地元の銀行との取引はどうなりますか?
ファンドが買収資金の一部を銀行からの借入でまかなう場合、承継後の会社の借入の構成が変わることがあります。今回のファンドは地域金融機関と連携し、案件の発掘や買収資金の融資で協力するとされています。地元の銀行が関わることで、承継後も取引が続きやすくなるという面があります。

※本記事は2026年11月3日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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